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終わりへ向かうこの世界で  作者: 菜々
第一章 少女と少年
2/7

02.遭遇

よろしくお願いします_(._.)_

 どこまでも広がっている草原。その一角で長い耳を持つ兎によく似た魔物が、悠々と草をはんでいた。そこに、


ストッ――


 小気味いい音をたてて突きたったのは、どこからか飛来した一本の矢。真横(` `)に刺さったそれに驚き、魔物はその長いしっぽを巻いて逃げていく。

 静まりかえり、ただ風が草の葉を撫でていくばかりになった草原に、


「ちっ……」


 悔しげな舌打ちとともに、人影が現れる。今まで丈の長い草に隠れるようにしていたその人物は、先程まで魔物――ヴァイスラビットのいた場所を睨みつけた。


「はぁ……」


 重いため息。黒髪を掻きむしった少年は、地面に刺さったままの矢を抜くと背負っていた矢筒にしまい込む。所々薄汚れが目立つ布のシャツと革靴という、身軽な格好をしている。

 彼は、この世界ではいたってポピュラーな職業である、狩人(ハンター)の一員である。しかし、そこには“一応”という注釈をつけたほうが良いかもしれない。なぜなら、彼の持つ革袋の中は数日前から変わらず、空っぽのままなのだから。

 どこからか低い鐘の音が響いてくる。それを聞いた少年は、ハッとしたように空を見上げた。頭上に輝く太陽を認めたその漆黒の瞳を微かに細めると、少年は歩き出した。



 しばらくして、少年は足を止める。その視線の先には、先ほど逃したものよりも一回り小さなヴァイスラビットがいた。

 無言で、弓を構える少年。その目には僅かに歓喜の色が滲んでいる。

 と、何やらガサガサと活動していたヴァイスラビットが、耳をピンと立てると、森へと走り去っていく。しかし、その速度は一般的なヴァイスラビットのものよりも、かなり遅い。

(気づかれたか……?)

 いや、それにしてはあまりにも走るのが遅すぎた。不思議に思った少年が、ヴァイスラビットのいた場所を見に行くとそこには何かを掘り出したような跡が点々と残っていた。さらには、森へと続いていくようにたくさんの木の実が落ちている。

(これは――)

 何かを掘り出した跡は、埋めておいた木の実を掘り出した跡だろう。それを森の中へと運んでいくということは……。

 少年は数秒考え込んだあと、落ちている木の実をたどっていく。彼は考えた。この先の森の中には、お腹を空かせた子供がいるのかもしれない。恋人へのプレゼントの可能性だってある。

 とにかく、獲物をより多く得るチャンスが、ようやく巡ってきたのだと。



 森の中は、昼間だというのに薄暗い。

 少年の背丈の何倍もの高さの木が密集しているここは、彼にとっては狩りをする時ですら入ったことがない場所だった。

 理由は単純で、森の中は草原に出るモンスターの何倍もの強さを誇る大型の魔物がどこに潜んでいるか分からない、危険な場所だからだ。

 少年も、普段は安全に狩りをすることを優先して、森には近づかないようにしていた。

 だが、少年は焦っていた。相変わらず革袋が軽いままなのと、未だ達成していない依頼が山ほど残っていたからだ。だから、少年は躊躇せずに進んでいく。時折聞こえてくる遠吠えは、聞こえないふりをしていた。

 たどっていた木の実は途中から無くなっていたが、その代わりに見つけた小さな背中を少年は見失わないように慎重に追っていく。

 やがて、ヴァイスラビットが森の中にいくつかある、開けた場所に出て行くのが見えた。

 少年は、意を決して弓を構えながらゆっくりと進んでいく。獲物が子供であっても、恋人であっても、躊躇わずに射抜くという覚悟が、その目には宿っていた。だから、


「ありがとう!」


(……え?)

そんな、予想すらしていなかった人の声が聴こえ、少年の目が大きく見開かれる。止まってしまった思考から出るはずだった命令は、彼の両足には伝わらず、結果――、


「誰っ?!」


 獲物の前に無防備に姿を見せることになってしまう。呆然と突っ立っている少年の目の前には、


「答えなさい!」

「ぁ……え……?」


 燃えるような紅い髪を持つ美しい少女が立っていた。


ありがとうございました(´∀`)

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