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イカスミ回線

作者: 唯野葦也


 日本は魚介に昔から馴染みがある。

 だからだろうか、あるパラレルの日本の天才科学者はネット回線を大気にイカスミのごとく蔓延させることで瞬発的に拡散しやすくする天才的ひらめきを思いつき実現させた。


 世の人は彼の偉業をたたえ2ゲソ・8ゲソ、通称2G・8Gと呼称しそれは世界に広まった。

 2と8はイカの触腕と触手の数である事は既知のモノだと思うが、これに何の違いがあるか、そちらの日本にも分かりやすく説明すると。

 2Gは触腕を冠するからして長い距離届く電波だ。射出時にルーターから鋭くイカスミが射出されるため回線速度は速い、しかしまっすぐ飛ぶため壁などに当たると付着してしまい吸収されるためイカスミが届きにくい性質にある。

 一方8Gはイカの触手から命名されてる事から察しの通り、ルーターから拡散的に広範囲にイカスミを飛ばす。しかしその分イカスミの濃度が低く霧状に蔓延するため回線速度は遅い、がその分壁などに一部が付着しても大丈夫な広域用のイカスミだ。



 この機能は革新だった。今まで有線でしか電波を受信できなかったのが無線で繋がるようになったのである。

 これまで机に縛り付けられていたパソコンや電子端末は一気にソファやこたつでも使えるようになったのだ。


まさに革新だった。


 社会現象も凄かった。

 まずイカスミを飛ばすから部屋の壁紙は黒が流行った。白物家電と呼ばれていた電子機器は今や黒物家電と呼ばれるようになって久しい。

 服も大体黒に統一されていく。(中二病か?)これでイカスミで汚れても目立たない。でも匂いがきつい?大丈夫そちらの世界より少し古い時代をこのパラレルワールドは送っているが、そちらの現代並みに女子も男子も香水やコロンを愛用している。(平安時代か?)

 美白も無理だとガングロが流行り、視界確保のためにゴーグルの研究が進み、白髪染め塗料業者は死んだ。


 そしてその後freeイカスミも出回り始め、日本は霧の国ならぬ黒霧の国になっていくのだった。


 そこまで行くと弊害も出てくる。交通事故は起きるし、ゴーグルを常時装着による鼻の瞼への痛み、眉毛の喪失。髪を染めたい人、黒が似合わない過敏な老若男女はやがてアンチイカスミスローガンを掲げ、頭にシャワーキャップと黒染めされないレインウェアや作業着などを着て国会議事堂周辺で抗議運動が絶えなくなった。


 2G・8G開発した開発者は憂いた。あぁ、なんてことをしてしまったのだと。故に考えに考えた。どうすれば皆が満足するような電波が出来るのか。そして閃いたのだ。



「そうだ。トビウオ回線を作ろう! 名前はそうだな…wing-fish回線…wi-fiとでも名付けるか!」



後にwi-fiによる衝突事故と生臭さに耐え切れなくなり反対運動が起こる未来はまた別の話。

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