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美少女発掘! 異世界ED治療の旅!  作者: 越智 翔
第一章「純潔の守護者」
3/8

第三話

「やめ、と言いますのは、どのような」

「まぁ、あれだ、うん」


 俺はタブレットサイズの石版を放り出すと、改めて目の前に寝転ぶ美少女を見下ろした。

 さっき、ホムなんとかって言っていたな。じゃあ、もしかして、人間じゃないとか? そんなニュアンスだよな。だいたい、あの茶色い球体から、いきなり出てきたんだし。なんか、さっきから俺の常識が壊れっぱなしだ。

 ま、いいか。


 俺は彼女の上に馬乗りになった。


「どうなさいましたか? 何かご不明な点でも」


 モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ。


「あの、それは起動に必要な入力操作ではありませんが?」

「俺が起動するかもしれねぇんだ、もうちょいかわいい声で啼いてくれよ」

「なく、とは?」


 モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ。


「だぁっ、ちっきしょう! さっきはイケそうだと思ったんだけどなー」


 どうなってんだ、クソ。

 何がいけないんだ?

 あ、そうか。こいつが起きたからだ。さっき、何も言わないで寝ていた時には、夜這いプレイみたいな密やかな興奮があった。今はそれがない。何をしても嫌がりもせず、喜びもしない。淡々と起動しろ、起動しろと言うだけ。これじゃ萎えるのも当たり前だ。


「てめぇのせいだ、どうしてくれる」

「何か不都合がありましたでしょうか」

「おお、大有りだ」


 このままでは、俺は童貞のまま、死んでしまう。仮にも目の前に女がいるというのにだ。


「申し訳ございませんが、初期化開始後の返品は……」

「そーゆーこっちゃねぇ。このままだと、干からびて死んじまうっつってんだ」

「ホムンクルスは、基本的に不死です」

「俺が! 俺が死ぬの! ここ、砂漠!」


 俺の絶叫に、しばらく彼女は、考え込むように沈黙した。だが、ややあって言葉を発した。


「それは私の発生させた問題ではないと推測されます」

「だーかーらー。わっかんねぇ奴だな。ここ砂漠だろ? 俺、もうすぐ死ぬだろ? そしたら死ぬ前に童貞卒業したいだろ? なのにお前の態度が悪いから、萎えちまったんだ」

「論理が飛躍しています。解釈できません」


 目の前の女は、目を閉じたまま、淡々と続ける。


「現時点では人格中枢システムが起動していません。そのため、申し訳ございませんが、最低限の対応しかできません。用途や目的、問題点がおありの場合には、速やかに起動処理を完了なさることをお勧め致します」

「チッ」


 しょうがねぇ。

 俺は放り出したタブレットを引き寄せた。


「えーと、なになに? 《氷槌・氷壁》……ほー、氷出せんのか」

「それは狭い範囲で発動する、攻防一体の魔法で」

「あー、細けぇこたぁいい」


 タップすると、その部分が明るく光る。と同時に、未使用ポイントの残りが37ptに減り、《水属性魔法》のランク1の部分が点滅し始めた。


「お、おい」

「ランク2魔法を選択したことで、自動的に《水属性魔法》レベル2を選択したと判断されました。ランク1魔法から、お好みのものを二つ、お選びください」


 はー、うざってぇ仕様。最初から全部使えるようにしとけよ。

 そう言われて、おとなしく選ぶわけねぇだろ。お、《透視》? これ、いいんじゃね? 服を透視して、女の裸見放題じゃねぇか。よし、タップ。

 すると、《透視》とランク1魔法がすべて明るく光り、今度はランク3魔法が点灯し始めた。


「ランク2魔法を複数選択したことで、自動的に《水属性魔法》レベル3を選択したと判断されました。ランク3魔法から、お好みのものを一つ、お選びください」


 かー、うぜぇ。

 じゃ、《千里眼》でも取っとくか。遠くにいる美少女とか、発見できるかもしれんしな。

 で、ここまでとっても、ポイントが34ptも残っている。


「おい」

「はい」

「これ、選んだ能力って、マジで使えるのか?」

「はい。正確には、レベルに応じて出力量が……」

「あー、わかったわかった」


 なるほど。有能な美少女、か。

 魔法じみたものを使えるなら、そりゃ有能、か。


「この《瞬間移動》って……マジか、そんなことまでできるのか」

「はい。ですが正確には」

「いい、黙れ。《収納》ってのは?」

「亜空間に荷物を収納します。その容量は……」

「はい、次。この《断食》ってのは?」

「発動させることで、対象は飲食しなくても栄養失調になりません。但し」

「そりゃ便利だけどイヤだな。食いもん出す魔法とかねぇのか」

「それでしたら《物体作成》が必要になります。こちらの魔法は」

「話長ぇよ」


 いろいろ便利すぎて、どれ取ったらいいかわからんな……おっ?


「おい!」

「はい」

「この《治癒》とか《解毒》っていうのはなんだ!」

「それらは、対象の傷や病気を治療します。その範囲は」

「ひゃっほー! すげぇ! 一発解決じゃん!」


 更にすごいものが。


「じゃあ《不老長寿》ってのはなんだ?」

「老化が停止します。更に」

「よっしゃ、取るか。ん? でも、この復活ってのは?」

「自然死以外の原因で死亡した場合、一度だけ対象を復活させます。その際」

「一回だけか、じゃあ、いらねぇな……ん?」


 そういえば、上のほうに《身体能力》《知的能力》という項目がある。


「じゃあ、これはなんだ、身体能力とかって」

「それらは最低でも1以上にしてください。1で子供や老人並み、2で健康な大人、3で訓練を受けた高い能力をもった人間、4で人間でも最高ランクの能力、5で人間を超えた能力を発揮できます」

「ほー」

「但し《知的能力》については、4までで知識や技術、思考力の水準は上がらなくなります。5では並列思考や完全記憶といった特殊能力が付与され」

「あー、いい、いい。俺より頭よけりゃいい」


 数分間、タブレットをポチポチ押した結果、ポイントをきれいに使いきった。


「よーし! 決めてやったぞ! さあ、起きろ!」

「《呼称》が未設定です」

「あぁー?」


 また面倒な。名前?


「それくらい、てめぇで考えろ」

「所有者が命名することで、正式に設定が完了します」

「あー……」


 どうする?

 名前をつけるっつったって。


「お前、俺に絶対服従なんだよな?」

「起動すれば、そうなります」

「じゃ、どうせお前の使い道なんて決まってんだし……『オナホ』でどうだ?」

「それでは、正式に《呼称》を『オナホ』に設定し」

「わー! 待て待て!」


 くそっ。

 冗談通じねぇ。


「……『サセコ』で」

「それでは、正式に《呼称》を『サセコ』に設」

「待て」


 本当に冗談通じねぇ。

 じゃ、これならどうだ。


「なら、名前は『寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の』」

「長すぎます。前から『ジュゲムジュゲムゴコウノスリキ』で設定」

「キャンセル」


 いい加減、疲れてきた。

 ちょっと真面目に考えよう。


 あのヤールとかって奴が言ってたのが本当なら、こいつは名前をつけると、俺に仕える優秀な下僕になるらしい。でも、そのまんま『下僕』って名付けるのも、なんだか芸がない。犬に向かって『犬』って名前をつけるようなもんだしな。

 で、俺はこいつをどうしたいんだろう? もちろん、性奴隷だ。毎晩毎晩、えっちなことをさせるのだ。奴隷、奴隷、ああ、なんて魅力的な響き……そうだ!


「じゃ、これで決定。『レイ』で」

「それでは、正式に《呼称》を『レイ』に設定します」

「ほいほーい」


 奴隷のレイ。隷属のレイ。素敵な名前だ。


「初期化完了……起動します」


 そう呟くと、彼女の体が一瞬、光ったように見えた。

 しばらく、動く気配がない。


 手元のタブレットを見るが、変化はなかった。

 俺がレイに設定した能力は、こんな感じだ。


------------------------------------------------------

《身体能力》

(レベル:3 - 6pt)


《知的能力》

(レベル:4 - 10pt)


《水属性魔法》

(レベル:3 - 6pt)

 ランク1:[浄化][探知][鑑定]

 ランク2:[氷槌・氷壁][透視]

 ランク3:[千里眼]


《風属性魔法》

(レベル:3 - 6pt)

 ランク1:[念力][精神感応][鋭敏感覚]

 ランク2:[収納][飛行]

 ランク3:[瞬間移動]


《土属性魔法》

(レベル:3 - 6pt)

 ランク1:[疲労回復][動物支配][植物繁茂]

 ランク2:[ゴーレム][断食]

 ランク3:[物体作成]


《光属性魔法》

(レベル:3 - 6pt)

 ランク1:[魔法防御][治癒][危険感知]

 ランク2:[解呪][解毒]

 ランク3:[不老長寿]

------------------------------------------------------


 いろいろ選んだが、一番期待しているのは、もちろんアレだ。俺はそっとジーパンを脱ぎ、トランクスをおろした。

 しばらくして、レイがピクッと動いた。


「う……?」


 さっき散々喋ってたくせに、今、目覚めましたよ、といった雰囲気だ。わざとらしいんだよ。

 のろのろと上半身を起こし、そっと目蓋を開ける。そこには、銀色の瞳が輝いていた。

 いいね。

 目を閉じていてもきれいだと思ったが、こうして目を開けると、その優しげな表情のおかげで、かわいらしさのほうが前面に出ているように感じる。


「ご主人様、はじめまして……名前をつけてくださりありが……ホゲェッ!?」


 だが、目を見開いた彼女は、美少女にあるまじき悲鳴をあげて、硬直した。


「な! ななな! 何をいきなりっ! どうして下だけ脱いでるんですか!」

「待てねぇんだよ」

「そっ、そんな! 順序! 順序ってものがあります! いくらホムンクルスだからって、人格はあるんですよ!」

「いいから早く治してくれ」

「いいえ、いけません、ご主人様、考え直して……えっ?」


 最初の混乱が収まると、途端にレイはピタッと押し黙った。そして、しゃがんだまま、目の前で仁王立ちする俺の顔を見上げる。


「治す、とは?」

「わかんねぇのか? せっかく頭よくしてやったのに?」

「申し訳ございませんが、できればご説明を」

「しょーがねぇな」


 俺はレイの眼前で、悩みの原因をプラプラさせながら宣言した。


「俺様、シキマヨシオはな、二十歳の若さで、アレの悩みに苦しんでるんだよ」

「アレ? といいますと? 性病にでも感染されましたか?」

「違ぇっ! 勃たねぇんだよ!」

「ああ!」


 やっと理解が追いついたのか、このポンコツめ。


「そういうことですね。わかりました。では早速《鑑定》して、原因を調査します」

「おう? そんなこともできるのか。じゃ、さっさとしてくれ」


 そうすると彼女は、やや目を伏せるようにして、何事かを短く唱えた。すぐに結果が出たらしい。


「これは……」

「なんだ? なんだ? 早く教えろ」

「恐らく心因性のものかと思われます。身体機能に異常は見られません」


 そんなのわかってた。


「そうか。いいから早く治せ」

「できません」

「そうか……ってぇええ!?」


 できない? できないって言った? 今?

 なんだよ! 治癒とか解毒とか、できるんじゃねぇのかよ?


「ふざけんな! とにかく治せ! 今すぐ治せ!」

「説明を聞きませんでしたか? 《治癒》や《解毒》で対応できるのは、物理的に原因があるものだけで、精神的なものまでは……」

「だぁぁ! このっ! じゃ、もうどうしようもねぇってことか!」


 俺はヤケになって叫んだ。

 だがそこで、レイは真剣な眼差しを俺の股間に向ける。


「いえ。治すのは難しいですが、私にもできることならあります」

「お? なら、それ頼む」

「はい!」


 元気よく返事をしたレイは、また何か呪文らしきものをそっと唱えた。直後、俺の股間に一瞬、何か、清水のようなものが流れるような感触があった。


「……今のは? なんだ?」

「はい。《浄化》です。これで少しは臭いや汚れも落ちたかと」


 キッパリと言い切るレイ。

 俺は黙って彼女を見下ろした。彼女もぐっと目に力をこめ、さも誇らしげに鼻息荒くフンスと俺の顔を見上げる。


 数秒間が過ぎた。

 俺はおもむろに彼女の頭に手を伸ばし、ツインテールの片方をむんずと掴む。


「……っだぁあっ! ナメた真似しやがってこのポンコツ! てめぇがここにいるのは何のためだ? あぁ!? 俺の息子に奉仕するためだろが! それをてめぇ、臭ぇだとぉ?」

「キャ……キャーッ!」

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[良い点] >「じゃ、どうせお前の使い道なんて決まってんだし……『オナホ』でどうだ?」 おなほだから、ナホって名前もありなのです。
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