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美少女発掘! 異世界ED治療の旅!  作者: 越智 翔
第一章「純潔の守護者」
2/8

第二話

「……で、こいつに触ればいいんだな?」

「そうとも」


 俺はおずおずと天秤に近付く。そしてそっと手を伸ばした。指先が触れた瞬間、何かえもいわれぬ感覚が、体の中を突き抜けた。

 そして、天秤は影も形もなく消え去っていた。


「おめでとう! この世界の新たな神となった色摩君」

「……どうも」


 ヤールは祝福の言葉を口にした。

 これ、やっちまってよかったのかな。あとですげぇ責任とか、背負わされたりしないのかな。難しく考えるの、苦手だからな。

 ま、なんとかなるだろ。


「では、この世界のことは任せたよ。私も、うまく君になりすまさないとな」

「おい、言っておくけど」

「ああ、安心したまえ。最悪でも、君が普通の生活を送れるくらいには、社会的地位を確保しておくから」


 そして、男は身を翻す。


「っと、ちょっと待て!」

「何か?」

「オマケ! オマケの美少女!」

「おっと、そうだったな、済まない」


 するとヤールは、どこからともなく、拳大の茶色い球体を差し出した。


「これを両手で握り締め、強く念じるんだ。下僕よ、目覚めよと。それだけで使えるようになる。ただ、できれば地上に出てからのがいいな。ここは場所が悪い」

「はっ?」

「それと、この袋には、若干の金が入っている。必要ないかもしれないが、当座の生活に役立てたまえ」


 球体と薄汚れた袋を差し出され、俺はそれらを受け取ってしまう。


「ああ、あとはこれだな」


 ヤールはいそいそと携帯電話を差し出した。


「もし、どうしても困ったら、私に電話するといい。そちらには戻れないが、アドバイスくらいはできるかもしれないからな」

「えっ? お、おう。これ、繋がるのか?」

「多分、機能するはずだ」


 異世界と地球を結ぶ携帯電話。これも魔法でできてるのか? もう、ワケわからん。


「では、そろそろ本当に時間がない。あとはその下僕に任せるといい。私は行く」

「あっ、おい」


 だが、次の瞬間、男の影は消え去っていた。


「……うぁー……」


 気付けば周囲は静寂に包まれていた。

 手元には、茶色い球体と、薄汚れた袋と、携帯電話。

 あとは着衣。半袖のシャツとジーパン。内側にはトランクス。靴下にスニーカー。財布の中には二百五十円。


 どうしよう。

 ええと、とりあえず美少女……。


 あっ。

 地上に出ろとか言われたな。


 それで俺は、階段に足をかける。すぐに真っ暗になった。荷物を全部袋につめて、一歩ずつ慎重に昇っていく。


「……だぁっ、どんだけあるんだよ、これ」


 この暗闇の中、まっすぐ上へと続く階段は、思いの外、長かった。もし足を踏み外して転げ落ちたら。全身、骨折してもおかしくない。

 手をついて、少しずつ進むしかない。


 どれくらい時間が経ったのか。うっすらと上のほうに、灰色の光が見えた。出口だろう。

 あと少し。なんとか力を振り絞って、そこまで這い上がった。


「はぁっ、はぁっ、マジ、へたばった。マジ、キツかった。くそっ……」


 階段の最上階に辿り着いてから、まず俺は肘をかけて、息をついた。

 それから、ようやく目を開けて周囲を見回す。


 そこは洞窟の中だった。といっても、奥行きがそんなにあるわけではない。ここから二十メートルも行かないところに、出口が見える。

 問題はそこからだった。


「なんだ、ここ……砂漠?」


 ヨタヨタと這い出てみれば、横穴から漏れる光は目を焼かんばかり。それでちょっと外を眺めてみると、そこはもう、青い空と赤い砂しかない、荒涼たる世界。


「ウソだろ……?」


 やっぱりバカじゃないのか、あの自称神。最強? どんな勝負でも負けない? だけど、ここには戦う相手がいないじゃないか。水も食料もなかったら、死ぬだけだぞ。

 あの野郎、ハメやがったのか。


「こんな暑苦しいところで、一人、飢え死にするなんて……」


 童貞のまま。勃起不全のまま。俺は死んでいくしかないのか。

 いや。


「そうだっ! 下僕っ! 美少女っ!」


 さっきの茶色の球体を、袋から引っ張り出す。それを両手で握り締め、念じる。出て来い、俺の美少女。

 とはいえ、こんなところに美少女が出てきても、生き延びるためには、何の役にも立ちそうにない。しかし。しかしだ。

 俺には最後のチャンスが残される。もしかしたら、童貞を卒業して死ねるかも。

 さぁ……出て来い、俺の下僕!


 そう強く願った瞬間、茶色の球体が、急に眩く輝きだした。


「おわっ!?」


 思わず取り落とす。床に転がっても、球体は発光をやめなかった。そしていきなり、その場に透明なオイルのようなものが流れ出す。それは見る見るうちに溢れ出し、岩肌の上に広がっていく。だいたい縦幅二メートル、横幅一メートルくらいに広がると、今度は高さを増してきた。いつの間にかオイルというより、ゼリー状になっている。

 そこに突然、また白い光の線がいくつも帯状に重なり合って、大きなゼリーの塊を包み込んでいく。その発光も、すぐ終わった。その場に残ったのは、まるでモンブランケーキみたいな繭に包まれた何かだ。


「……んー?」


 俺は、そっとその繭を、指でつついてみた。

 カシャン、と軽い音がして、繭状のものが崩れ落ちる。薄い氷を割ったかのように。

 そしてそこには……。

 確かに、美少女がいた。


 豊かな銀色の髪がツインテールにまとめられている。彫刻作品のような端正な顔立ち。だが、どことなく優しげな雰囲気が漂う。肌は白磁のように白く、唇は可憐な蕾のようだった。

 見た目の年齢は十七歳前後とみた。やや細身だが、均整の取れた体つき。手足は長く、腰はくびれ、適度な大きさの胸は、仰向けなのに型崩れもしていない……シリコン入りか?

 一応、服らしいものは着ている。といっても、ごく簡素なものだ。粗末な出来栄えのヘソの見えるシャツに、同じくスカート。


「おおお」


 俺は、そっと手を伸ばす。シャツの内側、シャツの内側、そこにはぁ……

 ブラがなかった!


「おおお!」


 ならば。

 確認せねばなるまい。これはもう義務だ。責任だ。

 スカートの内側、スカートの内側、そこにはっ……

 やはり白いショーツが眠っていた!


「うおおお!」


 これはこれでいい。

 何もかもがないと、風情もない。


 神様、ありがとうございます。

 今となっては、サークルの先輩なんかと、酔っ払った勢いでヤッちまわなくてよかったです。


 俺は天に向かって両手を合わせて、しばし感謝の祈りを捧げた。


 さて、ではこれからは、人生を締めくくる大事な儀式の始まりだ。

 まずは何をしよう? 胸だ。胸。今まで一度も触れることができなかった神秘の領域に、今、俺の手が。


 むにゅっ。


「おほおぉっ!」


 や、やーらかい。

 この感覚は人生初だ。いいや、人類初だ。新素材だ。

 シリコンだなんて言ってごめんよ。これは熱可塑性エラストマーでも、ましてやソフトビニールなんかでもない。本物だ。ありがとう。


 ……なのに。

 俺の感動を他所に、その下半身に宿るカルマは、なおも解脱が遠いことを示すばかりだ。

 構わん。こうなればもっと頑張るだけだ。


 よし。

 取るぞ。

 ただ一枚きりの下着……いや、違う。そんな味気ない名前で呼んではならない。

 聖なる布……違う。それだとアレだ、キリストの聖骸布とか連想しちゃって、余計に萎える。


 言うなれば、言うなれば……そう、『純潔の守護者』、そう名付けよう。

 さぁ、開かれよ、楽園への扉……!


「……何をしているのですか?」


 どこかから、女の声が聞こえた。気がした。線の細そうな、おっとりした感じの口調だ。

 幻聴だろう。

 さぁ、『純潔の守護者』よ、我に道を譲れ……!


「あの?」


 ハッとして顔をあげる。

 声の主は、やはりというか、『純潔の守護者』の向こう側にいた。白磁の大地を踏破し、山と谷を乗り越えた先。


「あっ……」


 やっべぇ。


「い、意識、おありだったんですね、アッハハハ」


 なぜか敬語になる。いや、なぜか、じゃねぇよな。


「何をしているのですか」

「いや、ナニってそりゃ……思い出作り?」

「起動設定中です。最後まで手続きをお願いします」

「お、おう? 俺はちゃんと最後までヤるつもりだったんだ。だけど、どうしても起動しなくって、俺が」

「はい?」


 くそっ。

 あとちょっとで俺は、思い残すところなく願いを遂げられたに違いないのに。


「……横に石版があるかと思うのですが、そちらで設定を」

「へっ? 石版?」

「私の頭の横に」


 言われてみて、気がついた。白い色の、ちょうどタブレット端末くらいの大きさの石版があった。何やら意味不明な記号が並んでいるが、どういうわけか、自然とその意味がわかる。


「今は起動前のガイダンスモードで動作しています。手続きを進める上で不明点がありましたら、私まで質問を」


 彼女は目を閉じたまま、そう言ってきた。

 質問、ね……。


「じゃあ、さ。早速」

「はい」

「スリーサイズ、教えて」

「……登録されている情報にありません」


 あれ? おかしいな。非常に重要な質問だった気がするのだが。


「わかった。胸はCカップかな?」

「……確認できない情報です」


 これもわからないのか。

 じゃあ、何を訊けばいいんだ?


「じゃあ、どうしろっていうんだよ!?」

「能力を設定してください。それから、名前を決定してください。それで起動し、正式に所有者が特定されます」


 はて?


「変なこと言うな? まるでロボットじゃねぇか」

「私は高魔力自律型ホムンクルスです」


 ホ、ホム……なんだって?


「よくわからんけど、どうすればいいんだ?」

「そちらの石版を見て、能力を設定してください」


 面倒なのは嫌いなんだが……

 仕方なく、石版に視線を落とす。


------------------------------------------------------

《呼称》

(未設定)


《未使用ポイント》

(40pt)


《身体能力》

(レベル:0 - 0pt)


《知的能力》

(レベル:0 - 0pt)


《火属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[照明][占術][防熱]

 ランク2:[火弾][身体強化][武器創造]

 ランク3:[爆裂火球][動力][魔竜召喚]


《水属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[浄化][探知][鑑定]

 ランク2:[氷槌・氷壁][透視][水泳]

 ランク3:[天候支配][千里眼][水獣召喚]


《風属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[念力][精神感応][鋭敏感覚]

 ランク2:[収納][風刃・風盾][飛行]

 ランク3:[雷撃][瞬間移動][飛獣召喚]


《土属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[疲労回復][動物支配][植物繁茂]

 ランク2:[ゴーレム][断食][魔石鎧]

 ランク3:[物体作成][シェルター][毒獣召喚]


《光属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[魔法防御][治癒][危険感知]

 ランク2:[解呪][解毒][飛空艇]

 ランク3:[不老長寿][復活][アンチマジック]


《闇属性魔法》

(レベル:0 - 0pt)

 ランク1:[幻術][誘眠][読心]

 ランク2:[変身][魅了][透明]

 ランク3:[魔力操作][憑依][妖蟲召喚]


------------------------------------------------------

(必要なポイント消費数)


レベル1= 1pt

レベル2= 3pt

レベル3= 6pt

レベル4=10pt

レベル5=15pt


(ランクごとの習得魔法)


レベル1=ランク1×1

レベル2=ランク1×2、ランク2×1

レベル3=ランク1×3、ランク2×2、ランク3×1

レベル4=ランク1×3、ランク2×3、ランク3×2

レベル5=同一系統すべて


※指定ランクの任意の魔法を選択可能

※ランクアップに伴い、威力は向上する

------------------------------------------------------


「それらの能力から、使用したいものを選んで……」

「あー、もう面倒。考えるのやめ」

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[良い点] 瞬間移動、鋭敏感覚、治癒、解毒 神通力がそろってますね
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