戦国時代を生き抜いた女傑の勘がスゴすぎる
やっと知り合ったらあっという間です。
これはフィクションによる歴史改変恋愛譚です。
目が覚めると、そこはつい数十分前に英勝院様や伊藤さん、お静さんと写真を撮った部屋だった。
違うのは、そこに居たはずの英勝院様が見えず、代わりに若い尼僧が英勝院様の席に座っていること位だ。
「気がつきましたか?」
横から声がする。
お静さんが私の顔を心配そうに覗き込んでそう聞いてきた。
「あ、お静さん、私またこの場に来ちゃった。未来に帰れなかったみたいなの・・・」
そう言葉に出したら、急に心細くなって、最後は言葉が震えて小さく尻窄みになってしまった。
「落ち着いて下さい、知加子さん。貴女は以前よりは未来へと進んでいますよ。今は承応元年、貴女が竹林から旅立って12年が過ぎています。」
若い尼僧が私の側に寄り、恐ろしいことを告げる。
「え、?」
私が動揺して言葉につまっていると、
「ご挨拶が遅れました、神の使い様。私は、この英勝寺の庵主清因尼と申します。先代の英勝院お義祖母様からこの寺を引き継いでおります。その中で、貴女様のことも事細かく伺っております。もし、お体が落ち着かれているようですたら、少しお話をされて貰えないでしょうか。」
そう挨拶をされた。
この状況が理解できず、聞きたいことがたくさんある。
「はい、教えてください。」
そう答えると、飛び起きた。
お静さんがお茶を淹れてきてくれたので、それを飲む。
ああ、緑茶が美味しい。
ずいぶん喉が乾いていたようだ。
そうして、少し落ち着いた所で、先程の男性も同席を乞われた。
断ることなど、出来ない。
あの、めっちゃイケメンが、あの日本一有名なお爺ちゃん水戸黄門だなんて!
席を改め、英勝院様が座っておられた席に清因尼様が座り、その左右に黄門様とお静さんが座る。
「あぁ、ぁの、先程は助けて頂いてありがとうございました。」
私は自分の脳内の水戸黄門と結び付かない顔面偏差値の異常に高いイケメン黄門様にお礼を言った。
「ああ良いってことよ、やっと会えたなお知加。おばあ様からよくよく聞かされていたそのままだ!いや、スゴいな。」
黄門様、テンション高い!しかもお殿様っぽくない。
「あの、聞いていたとは?あと英勝院様は如何なさいました?」
私がおずおずと尋ねる。
「英勝院様は知加子さんが旅立って2年後に亡くなりました。」
そう清因尼様が答えた。
「え?え?亡くなった?2年後?あ、あの!」
私はパニックになりながら質問をする。
「私は、私の中ではついさっきまで一緒に竹林を英勝院様とお静さんと宗治さんと歩いて居たのです。写真を撮った瞬間、またグランと目眩がして目の前が急に暗くなって、そうして目を開けたら黄門様の腕の中にいたのです。どういう事なんでしょうか?」
アタフタしながらも、自身の現状を説明する。
英勝院様の前に居た時より、焦燥感に苛まれている。
え?私、令和の未来に帰れないの?
「それについて、俺から話していいか?」
黄門様が清因尼様に聞いている。
「ええ、兄上お願いします。私には上手に説明できる自信が無いんです。」
清因尼様が眉を下げてそう告げた。
「え?お兄さん?清因尼様は黄門様の妹なんですか?じゃあ徳川のお姫様?」
私がそう驚いて聞くと、
「そうだ、ご住職は妹姫だ。だが俺は黄門様ではない、今は親父殿が中納言だから黄門様っていうなら親父殿を指すんだ。俺の事は光國と呼んでくれ、神の使い殿。」
黄門様改め光圀様はそう言うと話始めた。
私が竹林で消えた後、英勝院様が方々の高名な僧侶や山伏、陰陽師などに未来から人が渡ってくることがあるか尋ねて歩いたそう、正確には尋ねて来たのは相手なんだけれども。
すると、稀にそう言う時渡りの落ち人の話を皆聞いたことが有ると答えたそう。
そうして、落ち人が未来からやって来る話は有れど、未来に戻った話は聞いた者の中には無かったらしい。
そうして、落ちてきやすい場所、時間帯に法則があるらしいという話をした者が居た。
で、あれば、その落ち人を英勝寺で、いや水戸藩で保護しなければならないとおっしゃったそうだ。
私を見た者は、英勝院様だけでなくお静さんと伊藤さん宗治さんも居たので、詳細な覚え書きを作って落ちてくる時に備えていたそうだ。
「お知加の事は水戸藩でも極秘として、知る者は俺を含めて5人だけだ。ここの3人と友玄と宗治だな。
落ち人の来やすい星回りが有ると言った者、古くからの陰陽師という占い師なのだが、そいつがやって来るなら今日だと言った。だから、まあ、興味本意で俺も読経会に参加してみたら、ドンピシャ、お知加が俺の腕の中にやって来た。これはおばあ様が言った《縁があるなら知加子はまたここに戻ってくる》という言葉が身に染みた恐ろしいほどの勘の良さだ、さすが戦国の世を生き抜いた女傑の凄さ、鳥肌が立ったぞ!」
気分が高まって居たのか、そういうと顔を高揚させ早口で言った。
「な、なんで。帰れないなんてあの時は英勝院様言ってなかったのに。」
私がポツンと言葉を漏らす。
「あの時は私たちも落ち人という者の噂も知らなかったのです。あの後、長い年月をかけて、少しずつ調べ、英勝院様が儚くなられた後は清因尼様と若様が調べ続けてくれて、漸く私もほんの一欠片ほど理解したところだったのです。」
お静さんがそう答えてくれた。
「私も、御免なさいね。正直、今日知加子さんが現れる瞬間を見るまでは全く信じていなかったの。ただ、英勝院様の遺言だからと日々のお勤めと毎月の読経会、そしてその、高名な僧侶の方や陰陽師の方との会談を淡々とこなしていただけだったの。俄には信じがたいわ、未来からの人がやって来るなんて。」
ほうとため息をつきながら、清因尼様がそう語った。
私こそそんな都市伝説みたいな話は信じられない。
え?私帰れないの?
え?私どうしたらいいの?
目の前が真っ暗になったような気がする。
すると、横からギュッと腕を掴まれた。
「大丈夫だ、心配ない。俺は信じていた、お知加、お前に会えると信じていた。おばあ様が儚くなる枕元に侍って居た時に言ったんだ。
『光國、お前の運命の菩薩様がきっと時を越えてやって来ますよ。その時に菩薩様に呆れられないようにキチンと備えなさい。貴方の幸せをみすみす見逃すようでは、戦国の世では生き抜けませぬよ。その奇跡のような勝機を掴みに行くのですよ。これが婆からのお前に残せる全てです。』
ってな。だから俺はお前を大切にするし、幸せにする。何からも護るから、安心していい。」
そう言ってイケメンスマイルを喰らわしてきた。
ナニソレ、イケメンからの護る発言にフラフラクラクラきたけど、ちょっと待って欲しい。
私たち、初対面ですよね?
ちょっとそんな直ぐには返事出来ませんよ。
「あ、あの気持ちは有り難いけれど、少し考える時間貰いたいのだけれど。」
抱き締めようとするその体を手で押し返し必死でそう告げる。
「いや、考える時間など無い。お前は俺のお御簾中として正式に貰い受ける。そうでなければ、どこに拐われるやも知れん。お前が安全に暮らすためにも早急にことを進めるぞ。」
そういうと、ヒョイっと体を返されて、胡座で座っているその体の中にスッポリと抱き囲われてしまったのであった。
私は、今、頭の中で
『あ~れ~、お代官様お戯れを~ぉ』
と言いながら帯をクルクルとほどかれる奥女中を想像して顔が青ざめた。
「わ、わたし、私まだ16で、け、結婚する年じゃない。」
声を振り絞ってそう告げるが、
「おお、お知加は16か。おばあ様は大殿に嫁いだ年は13だ。問題ない。俺との年も10才差だから大したことも無いしな。」
黄門様、改め光國様はそう笑いながら即断で否を告げる。
「お知加、お前はこの時代のことがわからないだろうから慣れるまでこの寺で暮らせ。婚礼の準備は俺が進めるから気にするな!頼むな、清因尼。お静も俺の嫁ごだ、宜しく頼む。」
光國様が二人に頭を下げると、
「ええ、勿論ですとも。英勝院様にも言いつけられておりましたから、しっかりと知加子様にお仕えしますとも。」
そう言ってお静さんが涙を溢した。
「私も、これで水戸の憂いが晴れました。滞りなく婚礼の支度を進めてくださいな、兄上。」
清因尼様もそう言って微笑んでおられる。
(ああ、英勝院様。戦国の世を生き抜いた女傑の勘、下準備、その手際。その凄さに私、震えが止まりません。令和のヌクヌクJKなど、10年も前に亡くなっている方であっても簡単に絡め取られるのですね。)
私は、今、江戸時代で数少ない頼れる人の腕の中、途方に暮れ白目を剥くのだった。
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