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骨抜の舞

作者: 深川牛頭

日本の伝統文化の紹介です。

本日紹介するのは、埼玉県の一部地域に伝わる「骨抜の舞」という奉納舞です。

※画像はAIイラストです。

 挿絵(By みてみん)


 埼玉県K市に伝わる神への奉納舞。毎年、漁の解禁日に大漁を祈願しA神社で行われる。例年市内の学生が1人巫女役に選出され、約半年間練習を重ね、舞に臨む。特徴的なのはその舞い方。通常の伝統的な神楽舞には見られない、首や手首をだらんとぶら下げるような、まさに骨がなくなってしまったかのような崩れるような舞い方だという。これは、骨がなくなり身だけになった「食しやすい」状態を神に捧げて配慮を示す、ということを意味している。要は神様へのご機嫌取りだ。そしてもう一点、この奉納舞は暗闇の中1人で執り行われる。1人なので、当然唄や笛、太鼓等を演奏する人間もいない。静寂。実は、これも神への配慮といわれている。神が食事の姿を人間に見せることは、自身がより人間に近い存在と解されてしまう、つまり神性を落とすことにつながるから。神は常に人間離れした存在でなければならない。   


 そして、満足できる環境での楽しい舞(食事)への褒美として、神は1年の大漁を約束してくれるのだ。K市では、上記の「踊り方」「巫女1人」「暗闇」という特徴をもったこの「骨抜きの奉納舞」が脈々と引き継がれ、今や立派な日本の伝統文化となっている。


 ところで、疑問が一つ。「漁の解禁日」「大漁をもたらす」等と謳っているが、ご存じの通り埼玉県に海はない。伝統的に古来日本では「漁」といえば「海漁」を指してきたので、「古くからの神事」という観点からみると「川での漁」も考えにくい。漁とは一体何を指しているのか。


 この地域の風俗を書き記した古文書『骨壺記』を紐解く。この地域は田も作れないような切り立った山中の村々の集まりだったが、金銭的に裕福な者が非常に多かったという。なぜか。こたえは落ち武者狩りだ。この地域には、なぜか多くの落ち武者が迷い込んだ。彼らの首を狩り敵国武将より褒美をもらう、もしくは亡骸から金品を掠め取る。村々の財政は敗者の命と引き換えに、兎にも角にも潤っていた。「大漁♪大漁♪」村民たちは落ち武者狩りを「漁」と呼び、生業にしていたのだ。


 K市は今でも、財政的に非常に潤っている。観光業がずっとうまく続いており、なんでも他県からの旅行者がたくさんお金を使ってくれているそうだ。あと関係ないだろうが、身元不明の不審死が非常に多い。

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