表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
98/330

スローライフをするのは難しい

 朝ご飯の片付けを二人で終わらせて俺たちは迷宮に行く準備を着々と進めている。俺は〔伸縮棍〕を置いていく事にして収納魔法陣が刻まれた魔石を持つ。この魔石の中にはこの前使った刀が入っている。その名も〔風雷刀〕。


 この〔風雷刀〕はアーサーから貰ったものなのだが、それを師匠に話すと元々はペンテシレイア家の物だったと言われた。どうやら数十年前にペンテシレイア家がジークフリート家に〔風雷刀〕を渡したそうだが、何故かそんな物をアーサーから貰った。勿論そんな事を知っていたら貰わなかったのだが、受け取ってしまった物を返すわけにはいかないので俺が持っている。


 一応師匠に譲渡しようとしたのだが、「それはソウヤのだ。その刀は持ち主が見つかって嬉しそうだから受けとるわけにはいかない」と謎の理由によって断られた。


 俺が師匠に渡したかったのはこれが元々ペンテシレイア家のものだったからだけではなく、この〔風雷刀〕がSランク武器だからだ。たぶんこの刀一つで数百万だか、数千万。下手したら数億の価値がつく代物なのがSランク武器だから持っているのに少し恐怖を感じる。


 少なくとも数百万の価値が付く物を持っていたら強盗に襲われそうだし、折ったりでもしたら大変な事だ。だからこそしっかりとした管理が出来るペンテシレイア家に譲りたかった。


 断られてしまったが、そのお陰で今回の任務に光明が射した。これがなかったらナメクジの肌に傷を付ける事が出来なかった。棍を突き刺すという方法を使えば傷を付けられなくは無いが、それで任務を達成出来るわけがない。ナメクジを討伐出来るレベルに傷を付けるにはこの刀を使うしか方法はなかった。


 それをこの前試してしっかりと相手を斬れる事が確認できた。切れ味抜群で触手を簡単に斬れるし、二回斬れば首も落とせる。物凄い武器を貰ったものだ。


 これをお土産くらいの感じで渡してきたアーサーはかなり凄いと思う。折角ここまで来たんだし貰ってってよみたいな飴を渡すような感じでSランク武器を渡された。アーサーはどんな武器を持っているんだっていう話になるのだが、まだアーサーの本気の武装を見た事がない。


 俺と模擬戦をする時はいつも安い剣と盾で戦っていたから本気の装備はちゃんとあるのだろう。勇者家なら全身Sランク武器にしたりとか出来るのだろうか。そうなったら俺では歯が立たない。元から歯向かう気もないが、見た瞬間に戦意は折れるだろう。


「アーサーは強いよ」


「また俺の心を読んだのか?」


「読みやすいんだもん。ジークフリート家にあった刀の入っている魔石を見て考え事しているからどうせアーサーの装備の事を考えているんだろうなって思ったんだけど当たっていたみたいだね」


 そんなに読みやすいか?魔石を見ていただけなのに。


「ソウヤは新聞を読んでいないから知らないだろうから言うけど、アーサーはこの前村を襲ったAランクの魔物を単独撃破したみたいだよ。村人に一人も犠牲者を出さずにね」


 誰かを守りながらというのは中々難しい。それも村人という大人数になると尚更だ。守るべき人に意識を裂きながら守るように立ち回りつつ、倒さなければいけないからな。俺にはBランクですら単独で犠牲者を出さずに撃破するのは難しいだろう。


「いつのまにかかなりの差ができてしまったな」


「アーサーは努力家だからね。日々の鍛練は欠かさないし、鍛練をしていない時は実戦でしょ。得られる物の量が違い過ぎるよ」


 確かにアーサーなら不眠不休で鍛練していそうだな。そして高頻度の実戦。それに比べて俺は毎日少しの鍛練をして、時々ペットを探す。残りの時間はアリナと遊んでいる。差が開くのは当然か。むしろ差が開かなくてはアーサーは報われない。


 だからといって差が付きすぎるのは許容できない。俺はサードとして仕事をしていかなくてはいけないのに弱いままではいけないし、アーサーとはちゃんと試合が出来るぐらいの力の差でいたい。


 次にアーサーと会った時に模擬戦をして遊びたいけど、アーサーに手加減されたくはないのだ。負ける事は別に構わない。だが、手加減をされるのは嫌だ。やっぱりやるなら相手に気を使う事なく戦いたいからな。


 そのために俺は強くならねば。遊ぶのに努力がいるという謎な状況ではあるけど、それでも俺はアーサーと遊びたい。アーサーと遊ぶのは楽しいからな。


「そろそろ俺も本格的に鍛えた方がいいか」


「そうだね。無理のない範囲で頑張って」


「無理のない範囲と言われたら俺はたぶんやらないかな」


「たぶん大丈夫だよ。普段のソウヤならやらないけどアーサーと遊ぶために頑張るから。だから頑張りすぎないように言っておいたの」


 俺の事を理解し過ぎている。そのお陰で色々と助かっているから文句は言えないけど、少し恥ずかしい。今回は俺の体調を気にかけて言ってくれているからかなり嬉しい。


「いつも心配してくれてありがとな」


「ソウヤも心配してくれてありがとね。ソウヤが優しくしてくれるから私も優しさで返しているだけだよ」


「アリナは大切な友だちだからな。ずっと一緒にいて欲しくて優しくしている」


「ずっと一緒にいられるかな?いられるといいね」


 一緒にいたいな。アリナと一緒に暮らして時々アーサーや師匠と遊ぶのが俺の夢だな。そのためには序列を辞めて命を脅かせる事なく田舎かどこかで農作業でもして暮らしたい。


 アリナは了承してくれるかもしれないが、アーサーと師匠は了承してくれないだろうな。アーサーは勇者として人を救うために世界各国を旅するだろうから、遊ぶ機会は少ないだろう。師匠は血の気が多いからどっかに戦いに行ってしまうだろうからな。


 俺のスローライフは叶わないか。


「序列を辞めたらゆっくりと暮らしたいんだけどな」


「アーサーとブレイダお姉ちゃんはゆっくりする事は出来ないからね」


 アリナも二人の性格をよく理解している。ゆっくり出来ない奴らとのスローライフは不可能という見解が一致した。あの二人の辞書にスローライフの文字は存在していないのだろうな。


「アリナはどうだ?アーサーや師匠みたいに動き回っていたいか?」


「私はそうでもないけど、時々動きたいかも」


 そのくらいだったら付き合うのだが、常にだと厳しい。俺は時々人助けをしたり魔物と戦ったりするぐらいは全然構わないのだ。魔物が強すぎなければの話だが。ただ、アーサーや師匠のようにずっととなると疲れる。


「そういえば伝え忘れていたが、ファフナーの調整が少し前に終わったから今のファフナーは前より少し強い。それに召喚できる時間が延びている」


「急だね。ずっとファフナーの研究をして、それが実を結んだなら良かったよ」


 ファフナーは前まで[並列思考]しか持っていなかったが、今はスキル[魔法]も備えている。スキルは魂と同じようなものだから、魔力を生み出せる。それによって召喚し続けるのに使う魔力をファフナーの魔力である程度補填できるようになったから長時間召喚できるのだ。


 他のスキルにも繋げるという事が出来るようになるまで結構な年月を要した。実は魂と魂を繋げる技術はすでに確立されているが、そのための道具の値段が高すぎて買えなかった。なので、何とか自力で繋げる事にして少し前にようやく出来たのだ。


「この任務が終わったらファフナーのスキルをまた増やして近いうちに俺の魔力無しで動くようにするから、楽しみにしていてくれ」


「そうなったらずっとファフナーがいるって事?どうやってコミュニケーション取ろうかな。手話がいいかな?」


「ファフナーが覚えるのに時間がかかりそうだ。魔力で文字を書ける板を手に入れておくよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ