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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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世界平和

 アリナと一緒に帰ってからアリナは冷蔵庫の中身を確認して、何を作るのか決めている。


「アリナが冷蔵庫の中身を覚えていないなんて珍しいな」


 献立を決めていない事自体が珍しい。


「今日倒すぐらいの勢いだったから豪華なものでも食べようと思っていたから…ごめんね」


「それは俺が申し訳ないな。あそこで仕留めきれず逃がしたのは俺の失態だ。誰にだって限界はある。限界が来ていない俺がもっと上手く動くべきだった」


 俺には追い討ちをかけるだけの余裕があった。その余裕を上手く活かせていたら間違いなくあそこで仕留めきれていた。落ち度があるのは俺のみ。


「限界さえ来ていなければ…」


 今回のアリナのマイナス状態は意外と長引くな。


「限界なんてそう越えられるものじゃない。だから限界なんだ。なのにアリナはスキルの限界を短期間で越えてきた。アリナは凄いよ。それに…」


「それに、何?話したくないなら話さなくていいんだけど」


「話したくないわけじゃない。言うのに少し勇気がいるだけだ」


 俺は小さく深呼吸する。


「俺にとってアリナと過ごす日常の価値が何よりも高いんだ。逆を言えば俺にとってアリナが戦う価値は高くない。だから戦いがダメで落ち込まないでくれ。アリナの気分が落ち込む方が俺は嫌なんだ」


 アリナは一瞬目を丸くしてから目を瞑って両頬を同時に手で叩いた。


「大丈夫か?」


 俺は驚きすぎてどう動いたらいいのか分からない。


「心配かけてごめん。私はもう大丈夫だよ!」


 そう言って俺の方を向いて満面の笑みを浮かべるアリナにはさっきまでの落ち込みは一切感じられない。可愛い。


 俺のハートはアリナに射抜かれ過ぎて、もう穴だらけだ。


 そんな事はさておき本当にアリナから落ち込みが消えて晴れ晴れしたようでよかった。アリナは落ち込んでいる時よりも、嬉しそうにしている方がいい。アリナにはマイナスの感情よりもプラスの感情を持っていてほしい。


「何か気持ちが晴れて考えが纏まりやすくなったから、今日の料理はもう決めたよ。これから作るからちょっと待ってて」


「ああ。待っているよ。いくらでも待てる気がする」


 アリナのあの笑顔を思い出すだけで最低三日は待てる。今まで見た笑顔の中でも上位、トップにすら立てるレベルの笑顔だったからな。


 アリナ教を作ろうかな。アリナの笑顔は世界平和だって実現できる。そしたらアリナはもっといい笑顔を見せてくれる事だろうな。


 でも、アリナの笑顔を共有するのは勿体ない気もする。独り占めしたい。何よりもアリナが見せ物のように扱われるのが嫌だ。止めよう。


 世界平和の実現は止めておこう。そもそも世界平和何て夢の世界にしか存在しない。世界平和を実現するには全員が欲を抑え込む必要があるからそんなの不可能だ。


 欲を抑え込めたとしても、相手を恐れて自衛の準備をし始めれば相手も同じ事をする。そんな動きを見てしまえば相手は何かを隠しているんじゃないかと疑心暗鬼にかられて先制されないように自分から仕掛けるという事が起こるだろう。


 全員が素直に相手を信じられる馬鹿の場合でしか世界平和は実現しない。だが、どこであろうと馬鹿がいれば天才がいる。常に人には差が存在している。


「世界平和は難しいな」


「そうだね。人類が最後の一人になるまで無理なんじゃない?」


「俺はそんな事ないぞ。俺は俺が信用の置ける奴だけの世界でなら世界平和を作れると思う。例えばアリナと二人でとかならな」


 アリナと俺の二人だけの世界なら絶対に争いは起こる事なく幸せに死ねる。


「そうだね。それがあったね。私もそう思うかな」


 納得してもらえた。でも実現のためには俺が出来る奴以外は全て殺さなければいけない。そんな力は持ち合わせていないし、俺より弱い奴を殺して数を減らすにしても時間がかかりすぎる。


 やはり世界平和は諦めよう。


「世界平和を実現させる力は俺にはない。せめて内輪だけでも平和を作りたいな」


「きっと出来るよ。ソウヤだもん」


 ソウヤだもんは理由になっていないと思うがアリナが信じてくれているなら出来る気がする。アリナと一緒に平和に暮らす事が出来る場所を作る。


 俺は立ち上がってダイニングに移動して席につく。もうすぐ晩ご飯ができる頃だと思って移動してきた。


「もうすぐでできるからもう少し待ってて」


「ああ。全然待つよ。後二時間ぐらいかけてくれてもいい」


 俺は餓死するまで待てるがアリナはそうはいかないだろう。アリナのお腹の空き具合から考えて二時間といったところだ。


「二時間はどう頑張ってもかからないよ。後は余熱だけだもん」


 二時間も余熱にかけていたらもう余熱はないな。途中で完全に冷めてただただ意味のない時間が大半になるだろう。


「余熱って実際どのくらい置いておけばいいのかまだ分かってない。ソウヤは分かる?」


「俺も何となくだな。いい具合になった気がするところまで」


 俺はそんなきっちり料理するタイプじゃなくて、結構大雑把にしちゃうから気にしていない。


「ならもういいかな?」


「火が通っているなら問題ないだろ」


「そうだよね。それじゃあ、完成!」


 俺は席を立って料理を受け取りに行く。料理を終えた後も洗い物関係で少しする事があるからな。


 俺は二人分の両方をテーブルに運ぶ。それが終わったらスプーン、フォークを取って丁度いい場所に置く。


「ありがとう」


「料理してくれたからこれくらい当然だ」


 俺はアリナの席を引いておいてから椅子に座る。テーブルに並べられた料理はどれも美味しそうで涎が出てくる。アリナ早く来ないかな。


 それからすぐにアリナはテーブルに座った。俺の心を読んだのか?そうだとしたら申し訳ない。


「それじゃあ、いただきます」


「いただきます」


 俺は料理を食べ始める。いつも通り美味しい。最近は晩ご飯はアリナが作ってばっかりだったから、そろそろ俺が作らなくては。


「今度俺が晩ご飯を作る」


「任務が終わったらね」


 即答された。だが、いつ終わるか分からないのにそれは出来ない。


「任務が終わる前でも作りたいんだが」


「任務が終わったらね」


 ダメなんだな。アリナは結構頑固だから、もう梃子でも動かない。ありがたくはあるのだが、料理させてほしい。アリナにばかり苦労をかけたくない。


「私料理嫌いじゃないから、毎日三食作っても苦じゃないよ」


 そんな事を言われたら代わりに作るという事はしない方がいい気もしてきた。


 でも時にはゆっくりする時間も必要なはず。任務が終わったら代わりに作ろうかな。


「任務が終わったら俺が作るからよろしく」


「うん。楽しみにしてるね」


 う~ん。楽しみにされているのか。それなら代わりに作る事の意味は大きい。結局アリナはどうなんだろう?俺が代わりに料理した方がいいのか、しない方がいいのか。


 俺はアリナほど人の心が読めないから分からない。でもこの問答を何度も繰り返していけばアリナの考えが分かるようになるはず。


 ゆっくり気長に頑張るか。


「そういえばナメクジは何で頭がないのに触手動かしたりとか出来たんだ?」


「それは頭以外の所に小規模の脳みたいのがあるからだと思うよ。強い魔物にはそういうのがあるみたいだし。その脳は主に体の再生を担当するみたい」


 そんなのがあるのか?なら頭を斬ってそれを斬れば再生しなくなるかもしれない。勝機が見えてきた。


「いい事を知った。ありがとう」


「私はソウヤの知識の無さにびっくりだよ」


 アリナが調べてくれてるしいいかなと思って全然調べていなかったからな。

次回10月23日の投稿は19時に予約投稿されます。

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