ナメクジとの戦い
俺たちは美味しく食事を済ませて、探索の準備に入った。準備と言っても二人とも小さなバッグを持つだけで済むためものの数分で終わり、家を出る。
「鍵を掛けたから問題なし。それじゃあ、迷宮に向けて出発しよう」
アリナが鍵をしまったのを確認して二人で歩き出す。すでに数回歩いた迷宮に続く道を俺が先導する。
「もう道を覚えたの?偉いね」
「さすがにもう覚えてる。今日ナメクジの討伐が出来なかった場合はもう討伐出来ないかもしれないから今日で絶対に討伐する。という事でこの道を通るのは今日で最後だ」
今日試す方法以外に俺がナメクジを討伐する方法はたぶん無いので今日無理ならもう無理。大事な大型任務を失敗するわけにはいかないので何としても今日討伐する。
「そうなるといいね。そうだとしたら、もうすぐうな重」
約束したんだったな。俺がアリナを投げすぎてしまったお詫びに。今日討伐するとアリナが喜んでくれるとなれば、直の事今日に討伐せねば。
俺は決意を新たに歩みを進め迷宮の前についたがまた混んでいる。何で時々混むんだろうか?迷宮の入り口は広いから混みにくいとは思うんだけどな。
「アリナは時々混む理由を知っているか?」
「合っているかは分からないけど迷宮探索を大人数でする所もあるらしいから、その人たちが入り口を塞いじゃっているんじゃないかな」
迷宮の入り口に固まっているのは全員同じパーティーに所属しているという事か。なるほど。理解は出来るが迷惑ではある。もう少し迷宮から離れたところで集まるかさっさと入ってほしいものだ。
「それなら横を通って入っても問題ないか」
「そうだね」
俺たちは人混みを掻き分けて迷宮の中に何とか入る。
「魔法具を俺に渡してくれ」
「ソウヤの魔力は温存した方がいいんじゃない?」
「アリナの魔力がなくてはなし得ない作戦だからアリナの魔力を温存する」
俺が理由を説明するとすぐにアリナは俺に魔法具を渡してくれたので魔力を込めて発信器の位置を探る。この魔法具にX軸Z軸はあるのだがY軸がないからナメクジの高さが分からない。結局少し苦労して探さなければいけないがしらみ潰しに比べればましだろう。
「Y軸が分からないのが不便だな。少し時間がかかるかもしれない。アリナは下に続く道へのナビゲートを頼む」
「了解。今度方向音痴の直し方でも調べようかな」
「ああ。調べてくれると助かる」
俺は歩いて魔法具が指し示す場所に向かい、少し手前から音に気を付けながら進み角から指し示す場所をゆっくり覗いたが何もない。
「ここじゃない。下に続く道を教えてくれ」
「こっちだよ」
俺と違って方向感覚バッチリのアリナがいてくれて本当に助かる。アリナの活躍具合的にうな重はかなり高いのを食べさせてあげようかな。
俺はアリナに連れられて下に移動してきてまた魔法具を頼りに移動して行った。そして何もないのを確認してアリナに連れられて下に下りるというのを繰り返すとナメクジが急激に動き出した。
「誰かが襲われるのかもしれない。殺される前にみつけたい」
囮にしよう。食べるのに夢中になっている間にナメクジを仕留めてしまえば、もしかしたら助けられるかもしれないし。
「こっち!」
アリナは焦って道を教えてくれるので着いていく。アリナの優しさを利用するようで申し訳ないが囮がいるのは絶好のチャンス。確実に囮にしたい。
微かだが悲鳴のようなものが聞こえたような気がする。音量的に下だ。
「下りるぞ」
「こっち!」
さらにアリナは焦って走り出したのに頑張って着いていき、だいたい下りた所で俺は魔法具の位置に向かって走り始める。道中で魔力を消費するわけにはいかないので、魔力は使わずない自分の筋力のみに頼った全力疾走をして、何とか近くの曲がり角に着いた。
辺りを見渡せばいたる所に赤い斑点が壁に存在している。近くの壁では血が壁を流れ落ちている事から新しい血であるのは間違いない。人の体をあの触手が貫けばこの景色を作る事を再認識させられる。
戦闘の音はしない事からもうすでに人は全て死んでいる事は明白であろう。間に合わなかったか。元々囮にする予定はなかったし諦めるとしよう。
俺は気を取り直して曲がり角からゆっくりと覗きこめば青白い巨体の背中に大量の触手生やしている奴がいる。今背を向けているしチャンスか?俺は曲がり角から出てゆっくりとナメクジに近づいていく。
アリナがこちらの様子を見ているのを確認してからバッグから魔石を取り出す。これで準備万端。アリナに指で合図を出す。
《式神降霊術:ファフナー》
そして魔石に魔力を込めると魔石から刀身が剥き出しの一本の刀が出てきた。魔石をしまう頃には俺の体は宙に浮き出す。
四本の触手が俺に向かって来たので、俺は魔力を使って浮いた体を動かして横に避けてから刀を振り下ろす。触手の肌は柔らかく刀の軌道にそって動くだけで切れない。俺はすぐに刀に魔力を流しながら勢いよく体を一回転させる。すると威力は爆発的に上昇して四本の触手は纏めて二つに別れた。
触手から血が勢いよく吹き出されたと思ったのも束の間。すぐに血は止まって触手はどんどん短くなっていく。
再生速度は速いがそれでも俺の攻撃は通じている。アリナと立てた作戦が効いている。俺とアリナが立てた作戦はアリナにスキルを使ってもらって俺を浮かしてもらうのみ。シンプルではあるが宙に浮いた俺は魔力を使えば全方向に自由自在に動く事が可能であり、式神降霊術によって速度もかなり出る。
俺は一気にナメクジに近づいていき、触手の根本を目掛けて刀を振るう。ナメクジの触手が数本宙に舞っているのを横目で確認しながらナメクジの前に行き、一気に引き返す。まずはナメクジの触手一本を切り落としてその勢いのまま触手を斬ろうと進むが、触手が大量に迫ってきている。
俺は天井を蹴って一気にしたに降りて触手をかわし、ナメクジの皮膚に刀を突き立てて一気に切り裂く。血が噴き出してきて俺に少しかかったが気にしていられる時間はない。急いでナメクジの後方に移動して目の回りの血だけ拭ってすぐにナメクジの体目掛けて飛んでいく。
残っている触手が俺目掛けて突っ込んできたので、俺は魔力を全力で込めて一瞬で静止すると、目の前を触手が通過した。俺は触手を避けて進み、ナメクジの顔の真横の壁に足を着ける。
そこから一気に壁を蹴ってナメクジの首の手前に来たところで刀を振り始めてナメクジの首を斬る。このナメクジの首はかなり太く俺の刀の刃渡りより長かったため一撃では切り離せなかった。
俺は反対側の壁に半回転して、足をついて再び壁を蹴ってナメクジの首を斬る。するとナメクジの首は勢いよく飛んでいき、ナメクジの体から勢いよく血が吹き出し始める。
後は再生する魔力が尽きるまで細切りにすれば討伐できるはずだ。俺は空中移動を繰り返してまずは触手を斬って無力化してから体を切り刻む。最初は体の再生が異常に速かったのだが、斬っているうちにだんだん遅くなってきた。
これはいける!
俺は再生速度が遅いので一旦落ち着こうと距離を少し取ったところでナメクジの首の所にナメクジの体の色とは異なる固まりが存在している。
何だあれは?まさか…脳!?
一瞬では判断できなかったが少し考える余裕があった事で剥き出しになっている脳のような気がしてきた。俺は急いで脳を斬りに行こうと移動を始めた頃には時すでに遅し。
ナメクジは脳を剥き出しにしたまま、驚きの速度で移動を始めて一気に距離を取られた。こうなってしまったら追い付けない。俺はアリナの元に行く。




