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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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迷宮の魔物の姿

 少し怒りを吐き出した事で冷静になれた。


 俺は逃げながら現状を確認する。追ってきているのは三本の細長い何か、本体に繋がっていて本体が動かない事から触手的なものだろう。


 何となくではあるが最初に比べて触手が細くなっている事から触手が伸びるのには限度があると思える。


 そしてアリナに抱きつかれている。


 どうせならこんな時じゃなくてゆっくり出来る時にしてもらって感触を味わいたかったのだが、今そっちに意識を向ければ速度を操れなくて死ぬ。壁に激突とかの事故で死ぬし、触手に捕まっても死ぬ。


 だから俺は脳のリソースを分析に一割、逃走に九割の配分にしているのだけれど一向に差は開かない。触手との距離が開かず縮まらずの現状を考えればこの魔物は俺の疲労を待っている可能性がある。


 魔力と体力が無くなった所で安全に喰うつもりなのだと考えるのが妥当な状況だ。


 俺が助かる可能性があるのは触手の伸びの限度を迎えるまで逃げ切るか、迷宮の入り口まで戻って応援を呼ぶかの二つのみ。ちなみに今の逃げのせいで帰り道はもう分からないから後者は不可能に近い。


 故に限度がある事に賭けるのみだ。


 なのだが俺の逃げられるルートは十字路続きでは無い事と人がいない事の両方を満たした道でなければいけない。俺は全方位に魔力感知を使って人を避けるルートを通っているのだが、良いものを見つけた。


 俺は十字路のかなり手前で左の壁に跳んで壁を蹴って何とか右の道に入った所で目的のものが見えた。


 狼のような見た目をした魔物。


 狼も気づいて俺に向かって走ってきたので俺はタイミングを図る。


 狼が飛びかかってくる直前に狼を飛び越えようとジャンプして狼を越えたタイミングで狼を後ろに蹴り飛ばした。すると狙い通りに狼は触手に一直線に飛んでいき、触手が狼の体を貫いて血が飛び散った。


 俺は急いで触手からは見えない位置にアリナを抱えて隠れて魔力感知を消して息を殺して隠れる。


 匂いや超音波以外の方法で俺を見つけて追ってきていたのならこれで問題ないはず。このまま隠れていれば触手は狼を連れて本体の所まで戻るはずだから逃げ延びる事は可能だが本体を見失う訳にはいかない。


 あの時に感じた魔力は確実に今回の任務の討伐対象となっている魔物だ。偶然会えた今日のうちに発信器の魔法具を体内に埋め込む必要がある。


 俺は音が何もしなくなった所でアリナに離れるように合図をして俺は隠れていた場所から顔を出す。触手と狼は既に消えていたのでアリナと一緒に触手が会った場所まで戻ると狼の血が大量にある。


 まだ死んでいないというならばこの血は本体まで続いているはずだ。


「これを追えば目的の魔物に辿り着ける」


「また追われたらどうするの?」


「また逃げる」


「でも隠れている時に凄い心臓の音が聞こえたよ」


 俺もアリナの心臓の音と自分の心臓の音の両方が聞こえてきた。


「あれが目的の魔物なんだ。追うしかない」


「あれが!?あれはソウヤに倒せるレベルの魔物じゃないと思うよ」


「死なない程度に頑張らなくてはいけない」


 アリナとの約束がある以上はアリナが死ぬまでは俺は死ねない。


 俺たちは狼の血痕を追っていると途中から血痕が一切無くなってしまった。


「ここであいつは魔石になったようだ。俺たちが通ってきた道と逃げ始めた位置を覚えているか?」


「覚えているよ」


「ここから触手が戻るよりも早く本体に辿り着きたい。行けるか?」


「方角は分かるけどその方向に進んでも最短かは分からないよ」


 迷宮はかなり入り組んでいるそういう事もあるだろうが、そうなったら仕方ない。


「それでも頼む」


 狼の血の飛び散り方から考えてそんなに速い速度では戻っていないはずだから最短なら間に合う。


「走る?」


「小走りで」


 アリナは小走りで俺を先導してくれる。


 どうやったらこんな風に通った道以外の道からでも元いた場所に戻れるんだろう?地図もないのに。感心しながらも俺は必死にアリナに着いていく。


 アリナの小走りは結構速く、魔力を使いたくないため通常状態の俺には少し厳しい速度だ。


 無暗矢鱈に筋肉を吸収せずに少しは残しておくんだったな。これでは明日には筋肉痛確定。


 アリナに着いていくと十字路の先を触手が通っていくのが見えた。


 本当に追い付いた。


 俺はファフナーを召喚しながらどうやって発信器を埋めるべきか考える。


 俺の棍では魔物にちょうど良い穴を開けることは出来ないからファフナーに開けてもらうしかない。


 俺はファフナーに作戦(適当)を伝えて行動を始める。


 アリナには発信器の魔法具に魔力を溜めてもらうように頼んでおいて俺とファフナーで魔物を確認する。


 後ろから見ると青白い固まり。


 恐らく見た目はナメクジのような見た目でナメクジの背中と言えばいいのだろうか?背中には大量に太く短い触手がうようよと動いている。前方には二本の触覚が付いている。


 俺はナメクジの死角になる場所を通ってナメクジに先回りできるように静かに小走りをしてナメクジよりも数十メートル先まで移動した。


 ナメクジの顔には円形状に生えている大量のでかい歯が蠢いている。


 目は見当たらないため視覚を使う事は無さそうだ。


 ナメクジが近づいてきた所で口の辺りをよく見ると口の中に無数の鮫の歯のようなものがある。ナメクジに唇がないように思えるから顔についているでかい歯が唇の代わりをして中の歯で磨り潰すのだろうか。


 喰われたら地獄。


 顔に特徴があるのは口ぐらいで目や鼻は見つからないのでその辺の能力は特になさそうだ。


 特に視覚は今ナメクジを壁から覗いているのに気づかれていない事からも存在していないか使えないレベルなのかの二択だろう。嗅覚については瞬発的に追わなくてはいけない狩りで嗅覚を使うというのは考えにくい。


 嗅覚は獲物を探す時用で追いかける時には向かないんじゃないかなって俺は思う。だから匂いについては気を付けようがないから音を出さないように気にかけてナメクジの前に出る。


 ガンッ


 俺は棍に魔力を込めて棍の長さを元に戻すとうっかり地面にぶつけてしまった。するとナメクジの背中から触手が五本くらい俺に向かって来たので急いで俺はすぐに逃げ始める。


 こんなに早く逃げ出すつもりは無かったんだけどな。


 俺は魔力感知を展開して脚に魔力を込め一気に壁に向かって行く。俺は壁を蹴って触手を左右に振って逃げる時間を稼ごうとしていた。


 ドッゴーーン


 俺が壁を蹴ってすぐに後ろから轟音が響いた。俺は魔力感知で様子を確認すると触手五本が壁に突き刺さっていて壁に無数の皹が入っている。


 刺さっている触手が引き抜かれると壁はボロボロと崩れていった。


 当たったら死ぬ。


 俺が全力を尽くしても壁に少しの皹が入るだけだろうに、あのナメクジは軽々と壁をぶち壊してしまった。こんなのを避け続けていられる自信がないし、こんなのを避ける冷や冷やで寿命が何年縮むか分からないからすぐに終わらせてくれよ、ファフナー。


 俺は触手の動きを注視して第二波に備える。


 俺の予定では触手は刺さる事なく俺を追ってきて避け続けるつもりでいたのにかなり乱された。


 俺は魔力の調整をしながら触手の動きに注目していると触手の先端が俺に向いた。


 来る!


 俺は横に跳び跳ねると腕に痛みが走った。俺の腕の皮は捲れていて所々血が滲んでいる。


 痛っ


 まじでファフナー早く終わらせてくれ。


 ドッゴーン


 今度は触手の行き先では無くナメクジの向こうから聞こえてきたからファフナーは行動を起こしてくれたようだがファフナーから送られてきたメッセージは喜ばしいものではなかった。

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