謎の男
リリとルルか。
リリはあの年で迷宮を生き残れるほどの強さを持っていてルルは人の心を読む事ができ非常に頭がいい。あの二人が合わされば最強だな。
俺は家に戻りながらそんな事を考えていると知らない道に来た。どこに行けば家があるんだ?迷宮からの帰り道がああでここまでこう来たから…分からねえ。
ここから迷宮が見えれば一旦迷宮に戻ればいいんだがどこだろう?俺はピョンピョン跳ねながら迷宮の入り口を探してみるがここからでは見えないようだ。
困ったな。
ここから移動して迷宮が見える場所まで行くか見覚えのある道に出るしかないが移動して更に迷子になることもありえる。こんなすぐに迷子になるとは。
アリナ、助けてくれ。
「迷子なのか?」
かけられた声はアリナのものではなく男の声だった。
男の方を見るとフードを深く被って顔を見せないようにしている旅装束の男が家の塀に座っている。
「迷子に見えますか?」
「見えるな」
さっき跳ねていた所も見られているのなら恥ずかしい。
「家まで案内してやろうか?アリナの元まで」
俺はその言葉を聞いた瞬間に〔伸縮棍〕を密かに手の中に入れていつでも戦えるようにする。
「戦うつもりはない。俺はサードに会いに来ただけだ。だからサードの専属サポーターがアリナなのも今サードが住んでいる家も知っている」
しっかりと調べてきている。
「そのサードにさっさと会いに行けばいいのでは?」
「ここまで調べているのだからお前、ソウヤがサードなのは当然分かっているぞ」
アリナの事まで調べていて俺を知らないわけがないか。気を許さずに相手の情報を引き出すのが定石。
「一方的に知られているのはどうかと思う。あなたは誰だ」
「俺は今は名前を明かす事は出来ない。時々こっそりと自国に戻りながら旅をしている者だ。今は暇だから序列に会いに回っているわけだ」
こいつの素性がよく分からないという事だけを理解できたから結果的には得られたものなし。どうしたものか。
「話をするためならお前が求めている魔物の魔石を取りに行ってやってもいい」
「それで魔石を持ち逃げされれば任務失敗になる。行くなら俺も行く」
俺は自分の発言を後悔した。背筋に寒気が走る。
俺がそう言ってすぐに俺の首に何か濃い魔力が込められた何かが発生して男がいつでも俺を殺せる状態になったのだ。
これだけの濃い魔力を気づかせに近づける隠蔽能力があるのかそれとも一瞬で発動させる事が出来る能力があるのかは分からないが俺では敵わない事がよく分かる。
「一緒に来てどうする?一緒にさえいれば奪い取れるとでも?迷宮内でならお前など殺しても罪に問われる事すら起こらない。自分の実力を弁えたらどうだ。セカンドとの差が開きすぎてはいないか?」
師匠とはすでに会っているのか。
「ファーストとは交戦にならなかったがセカンドとは試合をしてな。互角の試合をするのは久しぶりだったから十分楽しめたぞ。それに比べてさっきの攻撃すら防げないとは弱すぎる。所詮世界政府の活動の広告塔でしかない序列と言えど弱すぎる」
師匠と互角に試合を出来るなら俺に勝ち目はない。
「少し傲慢だったようだ。俺ではあなたに勝てそうにない」
「ああ、本当にそうだ。迷宮探索の様子を見ていたが、無駄に魔力を消費した探索をしていたし無駄に魔力を使った戦いかたもしていた。その魔力量にものを言わせた程度の力しか持ち合わせていないのによく序列になれたものだ」
さっきの言い方だと序列は弱いみたいな感じだったが、やはり序列になるのは少しは実力がいるようだ。
「俺がお前ほどの魔力を持っていたら世界政府を打ち倒す事させ可能であろうに宝の持ち腐れが過ぎる」
さっきからすごい罵倒してくるじゃん。
「これだから異世界人は…」
「異世界人を見分ける事が可能なんですか?」
「ああ。魔力の感じが生まれた世界によって変わってくるからな。お前の場合は体もこっちの世界のものではないから転移者のようだ。お前が凄いのは転移者でその年齢のくせにこちらの言葉が上手い事だ」
急に褒められたが褒められた内容が嬉しくない。
「言葉は最初から分かったので」
「なるほど。魂に言語を植え付けておいたのか?だがいつ?なかなか奇妙な魂を持っているのだな」
奇妙なのか?俺はあまり自分の魂を奇妙だと思った事はないのだが。俺の家族が魔族だから生まれてくる前に植え付ける技術みたいのがあったのかもしれない。
「奇妙な魂を持っているからといってあのアリナと懇意になれるとは考えにくいのだが何があったのだ?」
あのアリナ?アリナは有名人なのか?アイドルやっていたとかかな?
「アリナは有名人なんですか?」
「有名人というほどじゃない。各国の上層部と世界政府の奴等なら生まれた時から知っているだろうな」
確かジークフリート家は確か世界で唯一の勇者家だから確かにアリナが生まれた時から一部の人たちは知っているのかもしれないな。
「お前ではアリナと不釣り合いだろうな。こんな運で序列になれたような雑魚と一緒にいるレベルの人間じゃないだろうに。こいつに情でも湧いたのか?」
かなり失礼な事を言われているが実際そうだから言い返す言葉がない。
「それでもアリナは俺を選んでくれた」
「そのアリナの選択が間違いだったかどうかを左右するのはお前だぞ」
急にプレッシャーが。
「アリナの選択が正しかったかどうか何てアリナ以外に決められる人は誰もいない。だからアリナと楽しい時間を過ごしていければいいと思う」
「そうか。それがいいと思うぞ。そのためにはアリナを守るための最低限の力が必要だがそれすら持ち合わせていないから無理だな」
肯定してくれたと思ったらすぐに棘のある言葉を言いますね。この男の言い方だとアリナに脅威が迫っているみたいな感じだけど何があるのだろうか。
国の偉い人と会う機会があったら聞いてみようかな。
「強くならなければアリナは守れないぞ。序列という立場上危険な場所に赴く事何て数えきれない程訪れるだろうからな」
「分かっていますよ。命に代えてもアリナは守ります」
「お前は本当にアリナの事が好きなんだな」
そんなに長く会話していないのにバレた。
「そんな事を言うあなたには好きな人はいないんですか?」
「いるよ。もう結婚した。今はこの国にはいないが時々会っている」
実はこの人の移動スピードめっちゃ速い?かなりの速度で移動しなければ時々会うのは難しい気がする。
時々の価値観によるけど。
「そういえば迷子だったんだったな。家まで案内してやるよ」
「ありがとうございます」
男は塀から下りて道を歩き始めた。
「こっちだ」
かなり助かる。
「そうだ。俺の経験則から話しておこう。生き残りたいなら柔軟になれ、自分の意思を貫きたいなら強くなれよ」
なるほど。
「誰の言葉ですか?」
「俺の経験則からと言ったのだから俺に決まっているだろ。お前はアリナを守り抜きたいなら強くなれ」
俺にも当てはまる言葉を作ってくれたのか。正直俺の場合はアリナを守る以外は柔軟になればいい。
「もう少しで着くぞ」
めっちゃ近い!俺は近所で迷子になっていたのかよ。
「最後に名前を聞けませんか?」
「俺の魔力を覚えていろ。俺たちならそれで十分なはずだ。次に会った時に教えてやってもいい」
俺は忘れないように魔力の感じをしっかりと記憶に刻み込む。
「魔力を覚えたな。アリナと仲良くするんだぞ。それじゃあな」
「ええ。また会いましょう。質問に全部答えてくれて優しいんですね。あなたも恋人とは仲良くしてください」
「余計なお世話だ」
男は笑いながらものすごい速度でどっかに行ってしまった。
不思議な人だったな。




