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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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ルルという少女

「お姉ちゃんのご飯はとっても美味しいんだよ」


 ルルはお手玉を元あった場所に戻して座った。


「それは楽しみだ」


「あまり期待しないでください。安い食材しか買えないので。ルルは期待させるさせるような事言わないの」


 安かろうと美味く作れる人は美味く作れるとアリナの料理を食べると思う。


「だってお姉ちゃんの料理美味しいんだもん」


「姉妹で仲いいな」


「ソウヤさんは兄弟いないんですか」


 もし俺に兄弟がいたら異世界に来た事をめちゃくちゃ後悔するだろうな。


「いないよ。その代わりにものすごい親しい人が三人いる」


「その中にアリナさんも?」


「ああ。アリナがいなければ今ごろ俺は骨になっているだろう」


 言ってから気づいたがアリナの家以外に転移していれば俺は牢屋に入っていた可能性もあるかもしれない。それなら死ぬことはないか。


「それじゃあ食べましょう」


リリがご飯をみんなの前に並べ終わったところでそう声をかけた。


「それじゃあいただきます」


 俺はフォークを取ってご飯を食べ始める。どれもこれも見たことがない気がする料理ばかりだったが口に入れてみれば非常に美味しい。


「美味しいよ」


「ありがとうございます」


「ね、言った通り美味しいでしょ」


 ルルが自慢げに言ってくる。


「ああ、ルルの言った通りだったよ。リリは料理上手だな」


「そんな事ないですよ」


 今日もいつもより賑やかな食事だった。アリナと食事をする時は読み合い(勝手に相手の心を読もうとしているだけの事)が発生しているから言葉にしなくても伝わる事が多く互いに口数が少なめになっている。


 食事が終わった後はリリが皿を洗ってくれている。俺は皿洗いを手伝おうとしたら断られたからルルと一緒にお手玉で遊んでいた。


「お兄ちゃん、ちょっと外にいかない?」


「いいぞ」


「お姉ちゃん、ちょっとお兄ちゃんとお散歩してくる」


「いってらっしゃい」


 こういう報告は割りと大事だよな。急にいなくなった!という事がなくなるしルルはまだ子供だからいなくなるのは余計心配になってしまう。


「それじゃあ行こうよ」


「ああ」


 俺とルルは外に出てきた。


「今日はお星さまがよく見えるよ」


 空には雲一つ無く満天の星空が広がっていた。


「本当だな。綺麗だ」


「それじゃあお星さまを見ながらお散歩に行こうよ。目的地は近くにある公園ね」


 目的地が設定されているのか。ここに来る途中にちらっと見た公園なら距離はないからルルが歩き疲れる事はないだろう。


「お兄ちゃんってここの探索者じゃないよね。今まで見かけた事ないから」


「ああそうだよ。後数週間もすればここを離れてまたどっか行く」


「旅人さん?大変そうだけど楽しそうだね」


 旅人とは違うけど色々な所に行っているから似たようなものなのかな。


「ああ結構面白いよ。色々な場所で困っている人を助ける仕事をしているんだ。そのたびに自分の実力不足が分かって自分が情けなく思うがな」


「その仕事向いてる?」


「向いてはいないな。給料がいいぐらいしか俺にとってのメリットは無い。キリがいい所で辞めるさ」


 もう辞めたい所ではあるけど辞められないから大変だよな。


「公園着いたよ」


「近いな、もう帰るか?」


「ここのベンチに座って少しお話しようよ」


 それが目的だったようだな。俺たちは公園の中に入って二人でベンチに腰かける。


「私たちには両親がいないからお姉ちゃんが頑張って迷宮で稼いできてくれるけど、貯金ができないほど切羽詰まっている状態になっているの。私たちの年齢だと生活を出来る程お金を稼ぐには迷宮しかないんだけど私の皮膚が弱くて迷宮の魔力に耐えられないから私は働けなくてお姉ちゃんに負担をかけてるの」


 そんな重い話を何故俺に?


「その代わりなのかは分からないけど私は少しだけ人の心が読めるんだよ。だからお兄ちゃんの疑問に答えるとお兄ちゃんが優しそうだから同情してもらおうと思って。お兄ちゃんも人の心が読めそうだから利用しようとしているのを悟られるよりも素直に同情して欲しいから」


 この子頭いいな。これがこの子が身に付けた生き方的なもののようだ。


「俺は人に同情しない。俺はあまり性格がいい人間じゃないからな」


「お兄ちゃんはそういう人になろうとしているだけで根幹は優しい人だから絶対に同情してくれるよ」


 この子の頭が良すぎて本当にやりにくい。駆け引きみたいなものが一切通じないで常に本音での会話を要求してくる。


「お兄ちゃんなら私たちに安全な職を提供出来るじゃない?出来るならお願いしたいです」


 それがルルの目的だったというわけか。


 同情させる事で俺の力を利用して安全な職を提供させる。それでリリの安全を確保しつつ自分も働く事でお姉ちゃんの負担を減らそうという魂胆。ルルはお姉ちゃん思いのいい子だからそうしてあげたいのは山々なんだが俺にそんな力はない。


「確かに俺なら職を提供するぐらいは出来るかもしれない。提供する相手が大人だった時の話だがな。お前たちみたいな子供を雇わせるほどの力は持ち合わせていない。孤児院に入れてやるぐらいの事は可能だろう」


 俺の権力はどれくらいなのかが自分でも分かっていない。


「私たちも昔は孤児院に入っていたんだけど職員の人たちとか孤児院に入っている子供たちが私たちに酷い態度を取ってきていたから逃げ出したの」


 おお、八方塞がり。


「それなら俺にはどうしようもない。諦めてそのままの生活を続けるかトラウマを克服して元いた孤児院と別の所に入るしかないな」


「交渉失敗かあー。残念だよ。でもね、私は優しいお兄ちゃんが何とかしてくれるって信じているから」


「姉のためなら俺はとことん利用する気か。そういうのは嫌いじゃない」


 ルルは立ち上がって歩き始めた。もう話が終わったから帰るつもりなのだろう。


 ルルは少しと言っていたが実際はどれくらい読めているのだろうか?もしかしたら俺を動かせる可能性が高い話し方を選んでいるのではないだろうか?


 疑いだしたらキリがない。


 だがルルとはアリナと会話する時よりも高度な読み合いを要求されているのは事実。ルルは頭がいいからどんな職業につけば稼いでいけるだろうか?少し考えただけで思い付いた職業などならルルがもう思い付いているがルルではつけない職業なのだろう。


 ここは地球での知識も動員して…これだな。


 脳内を日本語で考えればルルが俺の脳内を読んでも理解不能になってしまうだろう。少し大人げないかもしれないが人に心を読まれ続けるのはあまりいい気がしないから許してもらおうか。


 占い師とかはどうだろうか?占い師なら相手の事を占った振りをして相手の心を読む事でいい占い師であるかのように見せられるのでは?いい案だと思うが占い師には道具が必要だから時間も金もかかる。


 俺は気づいたらルルの仕事を探してしまっている。優しいと言われた後にこういう事するのは恥ずかしいからアリナに意見を聞いてそれに従って行動するか。


「わざわざ公園に来たのは部屋の中だと私が身の上話をしているのがお姉ちゃんにばれちゃうからだよ。散歩につきあってくれてありがとう」


 お世辞にもいい身の上とは言えないからリリはその身の上を話されるのは嫌なのだろうな。


「散歩と言っても話をしている時間の方が長かったがな」


 もう家の前についたしな。俺たちは一緒に部屋に入る。


「ソウヤさん、ルル、お帰り」


「ただいま」


「俺はもう帰る事にするよ」


 俺は荷物を取って帰ろうとする。


「そうですか。お気をつけてお帰りください」


「ああ、リリも迷宮では気を付けろよ。ルルは三個でお手玉出来るように頑張れ。それじゃあ、お邪魔しました」

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