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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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迷宮に挑戦する少女の家

 俺が一緒に帰る事で魔物の出現率は大幅に下がる。


 魔力は半分を切っていないから帰る必要もない俺が帰る理由の一つだ。


 アリナなら少女を守りながら逃げ切る事が可能であるのは間違いないので俺にとって大きな理由がある。


 もし討伐対象の魔物を俺一人の時に見つけたとすると当然道を外れて追いに行く事になるのだが、俺が魔物に魔石を付け終えた時に元の道に戻れる自信はない。迷子はその場を動かないのが鉄則だから動かないといつ魔物に襲われるのか分からない状況に放置される事になる。


 生き残るために魔力を消費していって魔力が尽きた時は運のつき。確実に魔物に食い殺される事になるから迷宮内で迷子は不味い。


 だから俺は帰る。


 アリナと一緒に居なければ俺が死ぬ可能性が高い。帰らざるをえないのだ。


「魔物が出ない…」


「それはね、このお兄さんが出ないようにしてくれているからだよ」


 まるで望んでそうしているかのように言っているが、したくなくてもそうなってしまうのだ。


「凄いですね!」


「使っていても魔物が来る事はあるし、大きなデメリットもあるし」


 俺に話が振られるようにしないでくれよ、アリナ。


 俺はちらりとアリナの方を見るとニコニコ顔のアリナと目があった。アリナはわざと俺とこの少女が会話をするようにしたのだろう。


 それから迷宮を出るまでアリナは俺に話が振られるように俺の話を中心に話をしていた。


「お礼をしたいので一緒に私の家まで来ていただけませんか?」


 俺はアリナにアリナはどうするのか?という質問を目線で送ってみるとアリナはすぐに頷いた。


「ソウヤさんはどうですか?」


「お邪魔させてもらおうかな」


「アリナさんは?」


「私はいいかな」


 騙したな。明らかにアリナは俺の意図を汲んで頷いていたのに断りやがった。


 何で?何で嘘をついたんだ?


「それじゃあ私は先に家に帰るから」


 アリナはすぐに歩き始めてしまった。


 この娘がいる時にアリナに何で帰るのかは聞けないから呼び止められない。帰ったら何で嘘をついたのか聞くとするか。


「私の家はこちらです」


 俺は少女に案内されて歩き出す。


「家と言ってもアパートの部屋を借りているだけなんです。とても狭いですが我慢してください」


「広さはあまり気にしない」


 俺は前を歩いている少女をよく観察する。迷宮内では俺が先導していたから見れなかったが今なら視線に気づかれる事もなく観察できる。


 上下の服共に動きやすい服、腰には短剣と袋、髪はショートカット。服をよく見るとボロボロになっている。


 今日怪我をしていた所以外でもボロボロになっている事から新しい服を買う金もないのだろうな。今時冒険者用の腰につける鞄も売っているというのに袋というのも財力の無さがよく分かる。


 髪の毛の切り方が丁寧じゃない。動きやすさを維持するために定期的に髪の毛を切らなければいけないのだろう。


「ここが私たちが住んでいる家です」


 少女が立っているのは壁の塗装が所々剥げているし階段も錆び付いていていつ足場が抜けてもおかしくないように思えるほどにボロボロのアパートの前だ。


「私たちの部屋はこっちです」


 そういって少女は階段を上り始めたが落ちそうで怖い。


 俺も着いていって階段を上るが踏んでみると意外と大丈夫そうだが手すりは塗装が捲れていたり錆びた部分が剥き出しになっていたりでとても掴めそうにないな。


 手すりを掴めないから上れないという事はないから上るのに苦労はしない。ただ足場が抜けるのが怖いから慎重に急いで階段を上りきった。


 少女に部屋に入れてもらったのだが部屋の中は案外綺麗にされている。それでも壁紙が剥がれているような所もあるけど余り気になるレベルではない。


 部屋を使う人たちは丁寧に使っていたみたいだ。


「お姉ちゃん、お帰り!…誰!?」


 部屋の奥から九歳ぐらいのショートヘアーの小さい少女が出てきた。


「お邪魔します」


「えっ、あっ、ごゆっくりどうぞ」


 小さい少女は戸惑いながらも言葉を返してくれた。


「この子が私の妹のルルです」


「ルルさん?ルルちゃん?ともかくよろしくお願いします」


「ルルでいいです。よろしくお願いします」


 この少女は自分の妹の紹介はしたけど自己紹介をしないとは変わっているな。


「お姉ちゃんはもう自己紹介したの?」


「あっ、してなかった。私はリリです」


 リリとルルか。


 この町にいる間は忘れる事はなさそうな覚えやすい名前で助かったがどっちがどっちか忘れそう。あいうえお順で早い方がお姉ちゃんと覚えていようかと思ったけどそしたら間違えてララリリになりかねない。


 頑張って普通に覚えるか。


「リリさんは何とお呼びすればいいですか?」


「呼び捨てとタメ口で話してください。私は料理を作ってきますね。ルルと遊んであげてください」


「分かったよ、リリ。俺と遊ぼうかルル」


「はい!」


 ルルは元気があっていいな。だがその元気についていける元気は俺にはない。


「何をして遊ぼうか?」


「お手玉で遊ぼうよ」


 お手玉は小学校にあったけどやった事無かったな。


 魔力の補助無しだったら全然出来ない気がする。


 ここはルルを立てて普通にやるか俺の格好いい所を見せるために魔力で補助するべきかどっちがいいだろうか。ルルの腕前次第といったところ。


「お家にある遊び道具はこれしかないの」


 そんな急に重い話をされてもどうすればいいのか分からない。こういう時は話題を逸らすしかないよな。


「ルルはお手玉上手いのか?」


「ずっとやっているけど中々上達しなくて。お兄ちゃんはお手玉出来るの?出来るなら教えてよ」


 こうなったら本気出すしかない。俺は動体視力を上げるために目や目の周りに魔力を流し、腕の速度を上げるために腕にも魔力を流しておく。


「お手玉貸して」


「はい」


 俺はルルからお手玉を三個受け取ってジャグリングを始める。やり方があっているのかは分からないが三個のお手玉は上手い事宙を舞っている。


 それっぽい。


 自分でもびっくりするほど上手くいっている。俺は他にお手玉がないかチラチラと見てルルが持っているのを確認できた。


「ルル、そのお手玉を俺に渡して」


「投げればいいの?」


「ああ」


「分かったよ。はいっ」


 ルルは掛け声と同時にお手玉を投げたので今ジャグリングしているお手玉を高めに投げて投げられたお手玉を掴む。そしてそのお手玉も投げて四つでジャグリングを成功させた。


 俺すげえ。


「すごいよ!お兄ちゃん」


 俺もそう思う。俺はもう満足してジャグリングを止める。


「俺もこんなに上手くいくとは思っていなかった」


「すごすぎるよ。私にも教えて」


 教えなければいけないのだった。でも俺に技術はないから教えられる気はしない。


「俺、教えるの下手だから教えても分からないかもしれないけど、それでもいいか?」


「うん。頑張って理解する」


「それじゃあルルがどれくらい出来るのか見せてくれ」


「うん」


 俺がルルにお手玉を四個差し出すと、ルルは二個のお手玉を取ってジャグリングを始めた。二個では安定して出来ている。


「二個では出来るけど三個では出来ないの」


 なるほど。俺の役目は三個で出来るように教える事のようだな。


「それじゃあ三個でもやってみて」


「うん」


 ルルは三個でお手玉を始めた。三個では二周させるのが限界のようで毎回二周以内にお手玉を落とす。


 魔力の補助無しでこれは結構すごいと思うが頑張って教えるか。俺は目の辺りに魔力を流してルルの動きを細かく見ながら頑張って教える。


「ご飯出来ました」


 教えているとリリが料理を運んできた。

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