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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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人助けをする

 神出鬼没な魔物にどうやって会うのかという難しい事に対して俺が出来る事は手当たり次第に探すことのみ。という事でアリナと迷宮をさまよっているのだが、探索者の服とかが結構落ちている。


 ちらりと見ただけで分かるほどの量が服にこびりついている事から所有者はもういないのだろう。


 魔石となったから服だけが迷宮に取り残され、魔石は魔物の腹のなかで消え去った。という想像をするのは難くない。


 この現状を見てしまうと自己責任という言葉は余りに重すぎる。なのに何故人々は迷宮に潜るのかと聞かれれば迷宮はハイリスクハイリターンという夢を見ているからだろう。


 ハイリターンを手に出来るのはごく一部の強者のみ。それ以外の人たちは命を賭ける職には決してみあわない金しか手に入らないのだ。


 そんな事が分かったらすぐに探索者を止めようとする人は多いが、ほとんどの人は探索者になるための装備に貯金を使い込んでいる。だからこの街の外に出ようと近くの町に行っても職につける事はない。


 先に同じような事を考えた人で町は溢れ返っているからだ。なのにもっと遠くの町に行くには金がかかり過ぎる。


 という事で探索者は今日も街を出る事が出来ずに迷宮に潜りその日を凌ぐのが精一杯の金を稼いで生きているのだ。


 可哀想だと思うと同時に夢を見すぎたのが悪いから自業自得だとも思ってしまう。余り強くない人も多い迷宮では定期的にどこかからか断末魔が聞こえてくるが助けに行ける余裕はない。


 迷宮内は音が反響してどこで断末魔を上げているのかも分からない。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーー」


 だが今回は近い。


「どうする」


「ソウヤに任せるけど」


 俺に任せるけど助けに行って欲しいんだな、分かったよ。


「急ぐぞ」


「うん」


 俺は脚に魔力を込めて全速力で音がした方に駆け出す。


 距離はそこまで無いと思うのだが正確な位置を見つけるために魔力感知を展開して危機的状況に陥っている人を探して一パーティそれっぽい一たちを見つける。


 間に合うかどうかは運次第。


 俺は曲がり角で跳んで壁に脚をつけて少しの間壁を走ってから再び地面を走る。曲がるために速度を緩めている暇は無かったからやってみたけど平衡感覚おかしくなるな。


 俺が二、三度曲がってすぐに大型の魔物が目の前に現れた。こいつさえ倒せば万事解決。


 俺は棍を取り出して通常のサイズに戻してから魔物に向かって棍を振る。だが魔物はびくともせずに少しこちらを見ただけで、魔物の前で血まみれになりながら倒れている人に魔物は腕を振って爪によって勢いよく体が引き裂かれた。


 血が辺りに飛び散って魔物の爪から血が滴っている。間に合わなかったというか俺の実力不足。


 魔物はようやくこちらを向いたが高さ三メートルぐらいのサイズをしたライオン擬きだった。でかいし一歩近づいてくるごとにピチャピチャ音が鳴っていて不快。


 これは普通に戦ったら余裕で殺される。


 俺は[魂]でライオンの魂を見ながらタイミングを図る。だがタイミングが来るよりも先にライオンの腕が振られたため棍で手を突いて弾いた。


 弾くためにかなりの量の魔力を使ってしまった。棍で戦い続けるわけにはいかないか。


 俺は[魂]を使って右手を黒くする。ライオンが前足を振り上げた瞬間に軸足に右手を突っ込んで[魂]の発動を止める。すると俺の手が現れた元々ライオンの脚だった部分は引き裂かれていた。


 どういう原理でこうなるんだ?調べるためにはもっと試さなければいけないが試す相手がいない。


 俺が片足を引き裂いた事でライオンは後ろに跳び跳ねて下がっていった。これでしばらくは安泰かな。


 ライオンは後ろに跳び跳ねながら横にいた探索者の頭を爪で切って頭の上半分が宙を待った。それによって脳みそや眼球も空中に飛び散っているのを魔力によって強化された動体視力のせいで見る事になっている。


 グロテスク極まりない。


 俺のせいで今死んだのか。俺がライオンと戦おうとしなければ最初に殺された人以外は逃げ切れたかもしれない。


 いや、俺が戦っている最中に逃げていれば助かっていた。


 迷宮内は自己責任、自己責任なんだ。


 俺は棍を強く握りしめてライオンに近づいていく。


 誰がどうなろうと自己責任、自己責任だから俺のせいじゃない。


 俺はライオンに向き直ってライオンの微かな動きさえ見逃さないように注視する。ライオンにつけた傷はすでに血の跡だけを残して塞がってしまっているようだが、今の俺が持つ攻撃手段はあれしかない。


 スキルを使う事による魔力の消費はほとんどないからこれなら長期戦も可能だ。周囲の魔力は[吸収体]で奪っているからライオンは常に魔力を消耗し続けていて体を癒すのに魔力を更に使う。


 長期戦に持ち込めば勝機はあるのだが帰りの魔力を残しておきたいから俺は早期決着を望んでいる。早期決着をするタイミングを待ち続けているが中々来ない。


 俺は前足を振り上げた所で軸足を攻撃する事を繰り返しながら時間を稼いでいるとようやくその時が来た。


 俺は少し飛び上がってライオンの顔に[魂]の力を纏った手を突っ込んで、中にある固い物を掴み引き抜く。


 完全に魔石が外に出てきた時から一気にライオンの体はぼろぼろになっていき体の皮膚がなくなり肉が剥き出しになっていたり血が吹き出したり。左後ろ足が急激に潰れた事から皮膚より先に骨が消え去ったのだろう。


 数秒も経たない内にライオンの体は消え去った。


 俺が辺りを確認してみると周囲には血塗れでボロボロな服が三つ。俺が到着する前に一人殺されていたのか。


 俺は三人の魔石を回収して唯一生き残った女の子の前に行く。


「どうして君のような少女が探索者に?」


「家族を養うお金を集めるため。私のような子供が稼げる職はこれしかないんです」


 見た感じこの少女の年齢は十二、三歳といったところだろうがこの年齢で働ける職業何てこれしかないだろう。


 俺がアリナを置いていったからアリナが到着した頃には既にこの少女しか生き残っていなかったがアリナはこの少女を護る立ち回りをしてくれていた。


「この魔石は見なかった事にしよう」


 俺は手に入れた魔石四つを全て少女に押し付ける。俺が手に入れた魔石は全て回収するのが義務ではあるが見ていない物は回収出来ない。気づいたら少女が手に入れていたのだ。


「そういう事で」


「そうだね。魔石は拾った人の物。ソウヤが拾っている所も持っている所も私は見ていないからソウヤの物と主張するのは無理があるね」


 俺の意図を汲み取ってくれたようだ。そういっておけば確実に魔石はこの少女の物になる完璧な証言をしてくれた。


 アリナの頭の回転の速さには頭が上がらない。


「怪我をしているよ!大変だよ。急いで手当てをしなきゃ」


 アリナが少女の傷を見つけたようだが正直今まで気づかなかったのにアリナは凄いな。


 アリナはバッグから絆創膏と消毒液、魔石を取り出す。その魔石は回復系の魔法陣が彫られているのだろうがかなり用意周到だな。


 アリナは手早く少女の傷口を消毒してから絆創膏を貼る。そして絆創膏の上に魔石を当てて、魔力を込めている。


 これなら俺が怪我をしたとしてもすぐに手当てをしてもらえていいな。


 アリナは少女の手当てを終えてから少女の体を見て他の傷がないか確認している。


「これでよし。もう大丈夫だよ」


 アリナは少女にそう言ってから少し離れて見守っていた俺の近くに来てヒソヒソ声で話始めた。


「あの女の子を入り口まで送ってあげたいんだけどいいかな?女の子一人じゃ危険だよ」


「俺も一緒に戻ろう。魔力を少し消費し過ぎたから今日の探索はこれで終わりだ」

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