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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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学校の始まり

 学校に着いたらまずは職員室に行く事になっているのだが、職員室は慣れないんだよな。


 恐らく俺は大人が駄目だ。会話をする事ができない。


 気は乗らないがすでに学校に着いているし、職員室の前にもういる。だが、今から逃げ出したい。俺は心の準備を時間をかけて整えて職員室のドアを開く。


「失礼します。今日からこの学校に通う事になりました。ソウヤです」


「ああ、君がソウヤ君か。編入試験は特に難しいのに数学、国語、理科で九十点台とは凄いじゃないか」


 やはり編入試験は難しいようだ。


「君のような優秀な生徒がうちの学校に来てくれてとても嬉しいよ」


 俺は何か言葉を返そうと思っても喉が詰まったかのように言葉が出ないため、相槌を打つ事しかできないのだが、自分の話をしてきている時にどうやって相槌を打てばいいか分からない。


 早く話が終わるか話題が変わってほしい。


 十分くらい話を聞いていると衝撃的な事を言われた。


「こんなに話をしてしまったか。担任を紹介しよう。着いてきてくれ」


 は?ならお前は誰だよ。担任でもないのに生徒を立たせたまま十分近くも話しやがって。心の中で悪態を吐く。口には出せたものじゃない。


 この謎の奴に担任の所まで連れていかれて、担任を紹介された。


「ソウヤです。宜しくお願いします」


 そう言ってお辞儀をする。


「担任のジョージ・ホルヘだ。宜しく頼むよ」


 ここから二十分立ったまま一方的に話された。計三十分も最悪な時間を過ごした。


「ああ、もうこんな時間だ。話をしていると短く感じるね」


 話をしたのはあなただけだ。俺は聞き手に回っていたからあなたの言う事に共感はできない。ただ言える事があるとすれば少なくとも百回は時計を見ただろうという事だな。


「では、教室に行こうか」


「はい」


 俺とジョージは教室に向かって歩き始める。


 ジョージに払う敬意はすでに消え失せてしまったが、話す時は敬語にしなくてはいけない。


 ジョージに付いていき教室に着いた。教室に付いている札を見ると、どうやらこの教室は1-3のようだ。


「ここで待っていてくれ」


「はい」


 SHR的なのをやるのか。日本とあまり変わらない感じなら俺はかなり楽なんだけどな。


「入ってこい」


 意外と呼ぶのが早い。余り待たされなかったのはプラスだが、唐突に命令形を使ってくるのはマイナスだ。俺はすでにジョージに対してマイナスなイメージがついているため、基本的にはマイナスな事が目立ってしまう。というよりは目立たせてしまう。


 俺がドアを開けて中に入ると生徒たちのほとんどがこっちを見てきている。人に見られるのは慣れていないから嫌だ。こっちを見ないで欲しい。


「とりあえず自己紹介をしてくれ」


「ソウヤです。宜しくお願いします」


 できる限り短い挨拶で済ませて、ジョージの指示を待つ。俺は自分の席の場所すら知らないのだから指示が無くては動けない。早く俺を席に着かせてくれ。


「えーっと、席は一番後ろの空いてる席だ」


 その言葉を聞いた瞬間に動き始める。移動している途中に最後列の空いている席を確認して、すぐに席に着いた。結構な速度で座れたと思う。


 席に着いてから辺りを見渡してみると、アリナは見当たらない。だというのに他の人と目があって最悪だ。俺と目があった奴にはSHR中に後ろを向くのは駄目だと思うぞと心の中で文句を言っておく。


「ではこれで終わりだ」


 ジョージがSHRが終わった事を告げてからすぐに、教室全体が賑やかになりだして席を立つ人が何人かいる。


 何人かが近くに立っている気配があるが気にしない事にしよう。変に見て、嫌がられたら嫌だからな。


 だが、それは無意味だった。


「ねえ、ソウヤ君だったよね」


「えっ、あっ、うん」


 ドレスのようなワンピースのようなお洒落な感じの服を着た女の子が話しかけてきた。ちなみにこの学校は私服だ。


「私、ソフィア。宜しくね」


 手を差し出してきたので手を取って握手しておいた。俺は人と接触する事を嫌う方ではあるが、こういう時は仕方がない。我慢できる範囲だ。


「宜しく」


 ソフィアと挨拶を交わしている間にクラスの人が集まってきて、たくさん話しかけられた。三十人以上の人が話しかけてきたし、時々同時に話してくる人がいたりして全然聞き取れなかったりという事があったから、顔と名前が一致しない人が大量にいる。(顔と名前が一致しないのは俺の記憶力が悪いというのが大きな理由だ)


 挨拶をしてきていないのは教室の端にいる不良っぽい人四人と席に座ったままだった三人だけだ。


 クラスの人と話している間に先生が来て、みんなは自分の席に戻っていった。それから授業が始まったのだが、簡単過ぎる。


 中学生程度の内容の数学で簡単過ぎて暇になった俺は挨拶に来た生徒の名前を座席順に覚えようと頑張っている。勿論、俺だって最初の授業くらいは真面目に受けようとは思っていたのだが、問題が簡単過ぎてすぐに解けてしまう。そうすると時間が余る。暇なのだ。


 暇な授業中に頑張って生徒の名前を思い出そうとしていた時に嫌な事を聞いてしまった。


「来週から定期考査だからな。しっかりと勉強しろよ」


 この言葉を聞いた瞬間に俺は先生の方を向いた。


「ああ、ソウヤ君は初めてのテストか。大変だと思うけど、好成績を修めたら授業免除だから。それで授業免除になっているほとんどの生徒は授業を受けているけど」


 何で編入した一週間後に定期考査何だよ。だが、授業免除か。授業免除にする事に学校側へのメリットがあるのだろうか。授業免除にした所でほとんどの生徒は授業を受けているとの事。メリットを産み出すのは授業免除になった一握りの人の中でも一握りの授業を受けない人という事なのかもしれない。


 考えたい事が新たに生まれて、二時間目の国語と三時間目の理科は考えを巡らせた。ちゃんとは授業を聞いていないが、寝てはいないから印象はそこまで悪くはないのではないだろうか。


 問題なく三時間目を終えたわけだが、次の授業の科目は魔法だ。


 俺が今までに見た魔法は嘘発見器のみ。自動ドアに魔力を吸われはしたが、魔力というものを俺はよく分かっていない。魔法も魔力を吸われた状況も関係しているのは機械だ。


 嘘発見器の見た目は魔法ではなく機械。魔力を吸われたのは自動ドアにだ。自動ドアの下に冷気でも出ているのかもしれない。そして、冷気に吹かれて体の体温を奪われる事を魔力が吸われると表現する可能性がある。


 そうなると魔法=機械。日本の科目で言う情報のようなものが、ここでの魔法にあたるのだろうな。


 考える事に集中していて周りを見ていないうちに、クラスの人たちが教室を出始めていた。情報をするなら移動教室だな。


 移動教室なら俺に声をかけてくれてもいいんじゃないかと思う。俺の人気は半日天下だったという事か。アリナ以外の人と話す機会が生まれただけ良しとしよう。


 大事なのは俺に声がかからない事ではなくどこに行けばいいのか分からない事だ。俺がぼけっとしている間に居なくなってしまった。居るのは教室の端に集まっている不良のみだ。あれには関わりたくない。


 取り合えず廊下も確認してみたが、やはり同じクラスの生徒と思われる人は見当たらない。これでは移動できない。困った時はアリナに頼るのみだ。


 俺は教室から出てアリナを探す。俺はアリナ以外の人とは話せないからな。



 ミッション

  アリナを探そう

 スタート



 さて、まずは近くの教室から探していこう。アリナは美人だからすぐに見つかるはずだ。


 アリナならすぐに見つかると思っていたのだが、全然見つからない。移動教室していたクラスが一つで、異常に一ヶ所に人が集まっているクラスが一つあった。


 移動教室していたら絶対に見つけられないし、あの人混みに入っていく勇気は俺には無いから無理だな。


 俺の頼みの綱のアリナはいなかった。


 窮地に立ったお陰で俺の頭はとても冴えていた。俺は学校内の地図が教室に貼ってあった気がするのを思い出してすぐに確認に向かう。


 所詮希望に過ぎなかった。地図はあったが、どこで授業をやっているのかは分からない。


 初日から授業をサボる事になってしまう。それは避けたかったのだが、どうしよう。


 誰かこの哀れな編入生を拾いに来てください。ソフィアさんや他の名前を覚えきれなかった(覚えるつもりがなかったとも言う)生徒たちよ。本音を言えば一番来て欲しいのはアリナだが、この際誰でもいいから来てくれ。


 俺の願いは虚しくも届かずに予鈴が鳴った。


 初日からサボる大型新人になってしまったようだ。何事も無いかのように普通に勉強していようかな。社会の点数が悪かったのはショックだったし。


 そう思って自分の席の方に歩いていると、教室にソフィアさんとその取り巻きたちが現れた。


「いた!ソウヤ君ごめん、置いていって」


「次、どこに行けばいいんですか?」


「案内するからついてきて」


 言われた通りに着いていく。まずは玄関に行って靴を履き替える。それから校舎の側を通って運動場みたいな所に着いた。


 運動場みたいと言っても教室より少し広い程度の場所で、人の形の的が数体、端の方に並べてあるような感じだ。


 俺が着いた頃には当然生徒たちは並び終わっていて、すでに先生らしき人もいた。


「すいません。遅れました」


「君がソウヤ君だな。話は聞いているよ」


 問題無さそうなので生徒の集団の一番後ろの一番端についた。


「では、授業を始める。今日は炎魔法の授業だ」


 それから教科書を開かされて、炎魔法の説明をされたが、俺は全然分からなかった。


 俺が説明を理解できなかった事何かよりももっと大事な事が説明の後に起きた。


 説明が終わって実践練習に移ったのだが、片手を前に突き出した生徒が「出でよ」と言う度に手から火球が出てきて射出される。


 感覚が普通にあるし、夢の中で結構な時間が経っても夢から覚めない事から考えるとこれは夢じゃない。それにこの状況を見ればここは地球でもない。


 ここ異世界だ。

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