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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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大迷宮一回目

 雨坂さんがすぐに俺たちに発信器の魔法具と《ライト》の魔法具を幾つか貸してくれたので、それを持ってアリナと迷宮に潜る事となった。


 そして、俺たちは今大迷宮の入り口に来ている。


「さてと、入るとするか」


「ゆっくり、慎重に頑張ろうね」


 大迷宮の入り口はかなりの広さで結構整備されている。


 入り口の手前にはご丁寧にも『ここから先は死地である。覚悟の無い者は引き返す事』と書かれた看板が置かれていた。


 俺たちは覚悟を持って迷宮内に入っていく。たぶん覚悟は出来ている。二人ともいつ死んでもいいみたいだし。


 入り口に近い道は道の端にある《ライト》の魔法具が発動していてかなり明るいが少しでも道を逸れれば真っ暗だ。地面は岩が剥き出しになっているような感じで微妙に歩きにくくなっている。


 迷宮内では魔物が魔石になってくれるおかげで腐敗臭とか変わった臭いはしない。


「アリナ、何で魔物は迷宮内で死んだら魔石になるんだ?」


「人も魔石になるよ」


 それはかなり恐ろしいな。死んだ時に届くのは遺骨ではなく魔石なのか。


「魔石になる理由は色々な説があるけど、今一番有力なのは何かしらの魔法が働いているからだよ」


「誰がそんな魔法を?一個一個に仕掛けるのは無理があるから全て繋がっているとしたらかなり大がかりな魔法だぞ」


「それはまだ分かっていないよ。まだ何らかの魔法が働いている可能性が高いぐらいしか分かっていないんだから」


 まだまだ人類には分からない事だらけのようだ。


 それにしても人も魔石になってしまうのはかなり驚いたな。俺がここで死んだら魔石になってしまうようだが、遺骨よりはちゃんと形として残るから俺としては嬉しい。


「俺が死んだら俺の魔石に魔法陣でも彫って持ち歩いてくれよ」


「そんなの勿体なくてできないよ」


「なら魔法陣を彫らなくてもいいから持っていてくれたら嬉しいな」


「それならいいよ。肌身離さず持っておくから」


 これでもう安心して死ねるな。


 俺は死んでもアリナと一緒にいられるのは嬉しいけど、魔法陣を彫ってもらって役に立てる状態にしてもらった方がかなり嬉しいのだが仕方ないか。


 俺は周囲に魔力感知を展開しながら迷宮内を奥へ奥へと進んでいく。


 中々大きい触手持ちの魔物は見つかる事なくすでに俺の魔力は半分近くになっていた。


「俺の魔力がもう半分に近い。そろそろ引き返そう」


「分かったよ。帰りも油断なくね」


 俺は言われた通りに油断なく魔力感知を展開しながら来た道を戻っているとお呼びじゃない魔物がやってきた。


「前方の十字路の左右の道で狼みたいな魔物が十匹待ち構えている」


「何か手伝える事は?」


「目に入った狼を浮かせられるか?」


「出来るよ。浮かせて邪魔をすればいいんだね」


 俺は〔伸縮棍〕を取り出して構える。


 〔伸縮棍〕はその名の通り伸び縮みが自由自在なのだが、長くなればなるほど強度が弱くなっていくという弱点付きだ。


 俺は縮めていた棍の長さを丁度いいサイズまで戻してゆっくりと十字路に近づいていく。数が多いから一気に倒すのは不可能。確実に数を減らしていくのが妥当だろうな。


 俺は道の片方に寄ってから一気に十字路に入る。


 すると左右から狼のような魔物が飛び出してきたので近い方の集団に棍を振って三体を倒し、こっち側は残り二体。反対側はアリナが食い止めてくれているから無視して、すでに懐に入ってこようと跳んできている二体の狼の進む先に魔力弾を作った。


 上手いこと狼は見事に魔力弾にぶつかって魔石となったため、残りの五体の方を向くと俺の目線より少し上ぐらいの所で浮いている。


 そして凄い吠えてきているけど気にせずきっちりと止めを刺そうと棍で一匹ずつ串刺しにしていく。


「あそこまでしっかりと浮かせてくれるとは思っていなかった。アリナのスキル強くなったのか?」


「スキルの扱いに慣れてきただけかな。昔は全然使っていなかったけど、今は少し練習しているし」


 なるほど。


 昨日なんか魔力切れするまでスキルを使って走ったし。気づかないうちにかなり上手くなったな。戦闘中で使えるほど練習したのだろうな。


 俺は狼の魔石を拾いながらふと疑問に思う。


「大迷宮と呼ばれるぐらいなのに今のが初めての戦闘だったよな。何でだ?」


「たぶんソウヤがいるからじゃない?」


「俺はついに魔物にまで嫌われたか」


「そうじゃなくてソウヤの[吸収体]が周りの魔力を薄くしているから魔物が寄ってきにくくなったって事。そもそもソウヤは人にも嫌われていないよ」


 そうだった。俺はそもそも興味を持たれていないから嫌われるわけがないんだった。


「ソウヤが自虐に入っている気がする。ソウヤは凄い人だからね。というのはまた今度話し合うとして理由は分かってくれた?」


「分かったよ」


 魔力が無ければ生きられない魔物にとって魔力が薄い所に行くメリットはないから寄ってこないという事だろうな。


だが、幾ら[吸収体]で吸収しても寄ってくる魔物はいるだろう。早急に魔力を欲している魔物が襲ってくる可能性もあるし、一定以上の強さを誇る魔物にとっては多少薄いぐらいどうという事はないだろうから目的の魔物に逃げられる心配はない。


 俺は楽が出来てよし、弱い魔物は殺されなくてよし、win-winだな。


 そんな事を考えながらもしっかりと作業をする。俺は棍の長さを短くして袋に入れるが、短くしても重さは変わらないから持ち運ぶのが少し大変だ。ただ普通の長さで持ち歩くよりは目立たないし悪くはない。


「拾った魔石はどうすればいいんだったけ?」


「目的の魔物以外の魔石は全てサポーターを通じて案内人に渡すよ。目的の魔物の魔石だけは貰っていいって」


 一番いい魔石だけ貰えるのは結構世界政府が損するのではないだろうか。雑魚の魔石が幾ら集まったところでそんなに変わらない気がするけど塵が積もればという事かな。


 俺は魔石をアリナに渡して魔力感知を使いながら来た道を再び戻り始める。


 [吸収体]のお陰で魔物は出ることなく非常に安全な道になっているのだが、たぶん他の探索者にとっては迷惑だろう。魔物を倒すことで生計を立てているというのに魔物が出ないという事態に陥っているのだから可哀想ではあるが、脅威を無くすためなのだから許してほしいし俺にはどうしようもない。


 しばらく歩いて魔物に会う事無く入り口付近まで来たがこっちは少し魔力の濃さが戻っていた気がする。


 それでもこっちの魔物は狩り尽くされていて結局魔物は出ることはない。そして追い討ちをかけるように魔力を自動的に吸収する。


「アリナ、戻ってきたぞ」


「全然戦っていないから迷宮に潜ったっていう実感がないよ」


 アーサーと潜った時は結構忙しかったのに今回はほぼ散歩状態。軽く運動しただけのような感じだけどこんな事を思えるのも今の内だ。


 今の内じゃなきゃ困る。


 一応この任務には期限が設けられているから何時までものんびりしているわけにはいかない。だけど会えるかどうかは運次第な所もあるから奇跡的に一切遭遇しないなんて事も十分ありえるが、アリナと二手に分かれて行動するのはアリナが心配だからしない。


 運任せ。だが、神に祈るとかはしない。


 こっちの神の名前を知らないから祈り用がないし、神がいるとしたら俺は神が人を助ける存在だとは考えていないしな。神は全ての生物を平等に扱う故に生物に不干渉な存在だと思っている。神が人間だけに肩入れしたら大変な事になりそうだし。


 今度神話でも調べておこうかな。


 神話って結構面白いしこっちの文化を知るのにいいだろう。まだこっちの文化に慣れきってはいないからまだまだ調べければいけない事は多い。


 それはともかく神の有無に関わらず俺の中で大事にしている事がある。自分の見えている世界が全てだと思わない事と自分の見えない事を完全に肯定しない事だ。

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