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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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岩石砂漠を越える

 一人では時間がかかっただろうけどアリナと一緒にやればすぐに家全体の掃除を終わらせる事が出来た。


「よし終わった。そしてもうすぐ雨坂さんが来る予定だから出発の準備をしよう」


「私はこのバッグを持てば終わり」


「俺もバッグを持てば終わりだ」


 俺たちはすぐに準備を終わらせて外に出る。雨坂さん到着まで後少しだから外で待っていればすぐに来てくれるだろうし、インターホンが鳴ってから出るという時間を省く事が出来る。


「アリナは迷宮内まで着いてくるのか?」


「勿論。前もこの話しなかったけ?」


「したか?覚えていないな」


 こういう記憶力はあまりよくない。来ないという話をした気もするし来るという話をしたかもしれない。


「お荷物にはならないようにするけど、もし邪魔になったら見殺しにしてもいいから。昨日、今日だったね。今日話した通りにいつ死んでも後悔しないから」


「絶対に見殺しにはしないよ。死ぬ時は俺、アリナの順だ。アリナが居てくれなきゃ困る事が多いからな」


「私のせいでソウヤが死ぬくらいならソウヤを庇って死ぬ」


 互いに相手のために死のうとしたら結局は同時に死ぬ事になるのかな?俺が何とか反射神経を全力で使ってアリナを守りたいところだけど。


 普通に死ぬ勇気は全然湧かないけどアリナのために死ぬ勇気はびっくりするぐらい湧いてくる。この命はアリナに貰ったようなものだし、アリナのために使えるなら本望だな。


「お待たせしてしまいましたか?申し訳ございません」


 雨坂さんが来ていたが話しかけられるまで気づかなかったな。気を抜いていたようだ。


「お気になさらず」


「それでは出発しましょう。この町を出てすぐにある岩石砂漠を突っ切れば今日中に着けますので」


 俺とアリナは雨坂さんについていき、町を出て岩石砂漠に着いたのだが割りとすごい光景が広がっていた。


 大量のビュートとメサがあって隙間が少ない。


 何がどうなってこの地形を作りあげたのか謎な程の地形だ。


「ここはアスレチックとして利用される事もありますので、私を置いて走っても構いませんよ」


 俺はアリナの方を向くと目があって二人同時に頷いた。考える事は同じようだ。


 二人とも同時にかけだして先にあるビュートに飛び移る。遠目に見た時と比べると圧倒的に隙間が広く、魔力を脚に込めなくては到底届かない。だけどアリナは魔力で走っている俺と並走できている。


「上手くスキルを使っているな」


「練習したからね」


 俺の知らないところでアリナがスキルの練習をしていたのか。


 それにしても重力というか引力を操って飛び上がったり加速したりしているのは凄すぎる。引力を操っているアリナなら頑張れば空を飛べるような気がする。


「空は飛べないのか?」


「飛べるけどそんな長い時間は飛べないよ。速度の調整とか色々あって難しいし、魔力消費が多いからね」


 重力に抗うための引力、進行方向に進むための引力、進行方向に引っ張られ続けるという事は加速し続けるという事だから速度が上がりすぎないようにするためとか微調整に使う引力。


 ぱっと思い付くだけで三つは必要になってくるからそれだけ調整と魔力が必要になってくるという事か。


 色々と考えながらしばらく走って跳んでを繰り返しながら遊んでいるとアリナが口を開く。


「私の事投げて」


 とんでもない事を頼んできたな。


「どういう風に?」


「斜め上に。私は重力を無効化しておくから思いっきり投げていいよ。丁度いいところで降ってくるから受け止めてね」


「上手いこと落下の衝撃を減らしてくれなかったらキャッチ出来ないからそれも考えてくれ」


「了解!」


「それじゃあ、行くぞ」


 俺はアリナの手を掴んで魔力を込めながら思いっきり斜め前に投げ飛ばす。アリナはもの凄い勢いで飛んでいって数秒後には見えなくなった。


 これでは落下地点に行って受け止める事何て不可能だというわけはなく、ファフナーの召喚用の魔石付きネックレスの位置を魔力を使って辿れば現在位置は分かる。


 あの魔石でファフナーを召喚出来るという事は俺のスキルと繋がっているという事だから魔力を辿れるのだ。


 アリナはすでに落下に入っているようだが、ちょっと遠い。俺は全速力で走っていくが普通に落ちていたら間に合わないだろう。


 ただアリナは高所恐怖症だ。何でこんな事を頼んだのか分からないという話は置いといて、普通に落下する速度で落ちるのはアリナには怖いはずだから速度を遅くするはず。


 俺が全力疾走していると目の前に大きな谷が現れた。谷の下に川がある事からその影響で出来た谷だろうけど、急がなくてはいけない状況で迂回するしかなくなってしまった。


 恨むぞ、川。


 俺は斜め横のビュートに跳び移って、次はメサに跳び、再び走り始める。


 投げた角度的にはアリナは中央に走っている大きな谷に落ちてくる事になってしまったが、何とか空中で受け止めるしかない。


 次には大量のビュートが現れて走るスペースが少なくなったが、何度も跳び移りながら減速しないように飛ぶたびに魔力を込める。


 何でこんなに障害が多いんだよ。


 俺はアリナを遠くに投げすぎた事を後悔しながら進んでいると、ついにアリナが見えてきた。結構落下速度が速いが間に合わない事はない。


 身体強化系の魔法を使えたらもっと楽に追い付けるのに。


 [吸収体]さえなければ今ごろは魔法をかなり使えていたと思う。力加減馬鹿だし、スキルは使えないし俺の存在するかも分からない良いところが一個も出ていない。


 俺は走り続けてアリナの落下してくる場所には何とか間に合いそうだと思っているとアリナが加速した。魔力切れにでもなったのか?今さら加速したところでギリギリ間に合うから問題ない。


 俺は落下地点手前で止まらずに谷に向かって大きく跳ぶ。俺は今度こそ力加減を間違えずに空中でアリナを受け止めて反対側のメサに着地した。


 今回の力加減の調整はアリナの落下を想像してそこに向かって飛び込むイメージをしたのに合わせて、魔力が連れてってくれただけ。落下のイメージ何て誰にでもできる事を使って魔力にやってもらっただけなのに自分の力かのように言ってみた。


「ぐすっ」


 アリナが若干泣いているのか?


「私が高所恐怖症なの知っているよね。なのに何であんなに投げるの?怖かった」


「ついうっかり全力で投げてしまって。申し訳ない」


「バカ」


 小声で短く言ったバカがもの凄く可愛い。


「バカバカバカバカーー」


 今度は俺の胸をすごい叩き始めたが、手を握って叩かれているから少しだけ痛い。


「悪かったって。そんなに叩かないでくれ」


 謝ってても止めてくれる気配がない。


「悪かったって。今度何か奢るから許して」


 アリナは手を止めて上目使いで俺の顔を見ている。


「うな重また一緒に食べてくれる?」


「ああ、今度一緒に食べよう」


「ならいいよ」


 アリナの機嫌はうな重で取れるようだ。


「うな重!うな重!うな重!」


 アリナが喜びでリズムに乗ってうな重と言い始める。アリナはうな重を食べれるというだけでアホになってしまうようだ。うな重恐るべし


「それじゃあ先に進もうか。もう町は見えてきたよ」


 結構長距離を走り続けたからもう町が奥に見えている。


「本当だ!うな重あるかな?」


「あそこにはないだろうな。海から遠い。だから戻ってくる時に食べに行こうな」


「約束だよ」


「約束する」


 帰りなら食べる機会はほぼ確実にやってくるだろうし、来ないとしても何とか時間を作って食べに行くか。


「それならもう少しは競争でもする?」


「競争するには遠くないか?それにアリナは魔力切れを起こしているのでは?」


「距離は気にしないの。魔力はまだもう少しあるから大丈夫。最後にちょっと温存したからね」


 あれは温存したから加速したのか。


 俺たちは合図もなく、同時に走り始めた。


 今回の収穫はアリナはうな重でアホになる事だろうな。アリナを怒らせた時はうな重をちらつかせればきっと怒っていた事すら忘れてくれるだろう。

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