夜食を作ってアリナと食べる
「またうな重食べに来ようね」
「いいけどアリナにはちょっと量が多かったんじゃないのか?」
「確かに限界まで食べたけど美味しかったからいいよ」
もし食べられない時は俺が代わりに全部食べれば済む話だから特に意味はないけど、一応確認だ。
「買い物行くか」
「忘れてた。うな重があまりにも美味しかったから」
夜までにアリナのお腹が空くとは思えないが大丈夫なのだろうか?俺だけでも量を減らしておかなくてはいけないな。
「何作ろうか。スーパーに何があるか分からないから決めきれないな」
「被らないようにしなきゃいけないけど、そこは以心伝心で何とかしよう」
「別行動?」
「何を作るかはお楽しみという事で」
被らないようにしなくてはいけないという事はアリナが俺と被らないように作るものを予想しなくてはいけないから本来アリナが作る物を考えるだけでは足りない。
ムズい。
ムズいが何とかしてみせよう。
俺はスーパーで久しぶりに見た懐かしい食べ物を見つけて即刻それに決めた。アリナはこれをどうすればいいのか分からないはずだから選ばないので問題ない。
俺は買った物を買い物袋に入れてスーパーの外でアリナを待つ。
「お待たせ。あんまり買っていないね」
「そんなに量が必要ではないからな。簡単に作れるが無限に食べられるものを作る」
「それは楽しみ。私は作るのにちょっとだけ時間がかかるよ」
何だろう?袋を見るとかなりの量があるからアリナはそれまでにはお腹を空かせるつもりでいるのだろう。だがアリナには無理だろうな。
「荷物持つよ」
「中身を見られるわけにはいかないからダメ」
「別に見ないけどな」
「念のため」
量があるから持ちたかったんだけど断られたらどうしようもない。俺は仕方なく自分の袋だけを持って家に戻る。
アリナは家に着いてからすぐに手を洗って料理を始めた。そんなに時間がかかる料理なのか?俺も早めに取りかかった方がいいから俺も始めよう。
俺は買ってきたものを取り出す。
「それ私も買おうか一瞬考えたけどどう料理すればいいのか分からなかったから止めたの。どうやるの?」
「枝豆は塩茹でするのが定番かな」
「そういう系は茹でるのが定番だもんね。そう思っても手は出せなかったよ」
俺は買ってきた枝豆を机の上に広げた新聞の上に乗せて、キッチンバサミで買ってきた大量の枝豆の端の部分を切っていく。こうすることで塩味が浸透しやすくなるみたいだ。
「作り終わったら俺の方を手伝って」
「キッチンバサミってもう一個あるの?」
「あったと思う」
「それじゃあ終わったらね」
アリナが手伝いに来るまでどのくらいの量を切り終える事が出来るのだろうか?半分終われば良い方か。
俺は黙々と枝豆の端を切っていく。そしてかなりの時間が過ぎて俺はようやく枝豆を全て切り終えた。
「アリナは終わりそうにないのか?」
「思っていた以上に量が多くて」
「俺はこれから火を使うけど問題ない?」
「いいよ」
俺はアリナの許可を取ったところで鍋を取り出して水を溜め火にかける。沸騰までの間はすることが無いからアリナにちょっかいでもかけていようかな。
「アリナ、暇になった」
「私は忙しいから無理」
俺はボウルを抑えているアリナの手を掴む。
「暇」
「そんな急に子供みたいな事言わないの。ほら、あっちで遊んできたら?」
「そんな急に親みたいな事言うなよ。手伝える事があったら言ってくれよ。これはふざけていなから」
俺はアリナの手を離して鍋の水の状態を確認しにいく。もうすぐ沸騰しそうだな。
俺は大量の枝豆を近くに持ってきて準備をする。
俺は沸騰したらすぐに枝豆を投入。最後に塩を入れて後は待つだけという事でまたアリナに構ってもらおう。
「ちゃんと暇になった」
「それじゃあ、これお願い」
俺はアリナのやっていた事を引き継いで、アリナは新たに別の事を始めた。それからしばらくして二人とも料理が完成してテーブルに置く。
大量の枝豆と大量のコロッケ。
「潰していた時からじゃがいも多いとは思っていたけどまさかここまでとは」
「だってパン粉を残すわけにはいかないじゃん」
ならコロッケにしなければいいだけなのに何でアリナはこういう所がバカなんだろうな。そういう所も可愛い所だ。
「折角だしお酒でも買ってくるべきだったかな?」
「酒?俺たちはまだ飲めないだろ」
俺が転移した国では日本と同じく酒は二十歳から。
「ソウヤは親に連絡していないから自分の不祥事は自分で責任を取るでしょ。私は親がいないようなものだから私も自分で責任を取る。だからいいでしょ?」
「俺はもう十九で二十歳に近いから問題は少ないと思うけどアリナはまだ十八だ。アリナの体を心配するとまだダメだと思う」
「それじゃあ、諦めるよ。そういえば飲み物がないからこの話をしたんだった。ソウヤの好みの飲み物を買ってくるよ」
アリナは意外とルールを気にしないんだな。他の国では十八歳からという国もあるようだからこの国では合法かもしれない。
「俺が行ってくる」
「それじゃあ、お願い」
俺はカバンを持って家を出る。近くにあるコンビニまで走って行って量が多めの飲み物を買ってすぐに家に戻った。
「早いね。それじゃあ、食べ始めようよ」
俺は台所から二つグラスを持ってテーブルに置き、グラスに飲み物を注ぐ。
「ありがとう。それじゃあいただきます」
「いただきます」
俺はコロッケに箸をのばして食べるがかなり美味しい。この大量のコロッケが目に入りさえしなければ。
「美味しい」
「よかった。私は枝豆を食べようかな」
アリナが枝豆に箸をのばすが枝豆を箸で食べるのは難しすぎないだろうか?
「どうやって食べるつもり?」
「どうやってって普通に、はむって」
普通に、はむっという事は皮も食べるという解釈でいいのか?
「枝豆はえんどう豆と違って皮は食べない」
「そうなの!?危なかった。という事は中の豆だけを食べるの?」
「そう。だから手で食べた方が楽だと思う」
「それなら先にコロッケを食べた方がいいかな」
手が汚れるならば先に箸を使う料理を食べた方がいいという気持ちは分かる。
「腹六分目ぐらいでコロッケを止めるといい」
「分かったよ」
そう言ったアリナは結構すぐに枝豆を食べ始めた。つまりまだまだ残っている大量のコロッケは俺一人で食べなくてはいけないという事だ。
「枝豆美味しいね」
「俺はコロッケがあるから当分食べられそうにないけど」
「コロッケは残してもいいよ。後で持ち運べるようにしておくから」
それは助かる。俺は結構頑張って食べたけど途中で諦めて枝豆を食べ始めた。
「さすがに作り過ぎちゃったね」
「ああ、近いうちに全部食べる」
明日ぐらいには全部食べきろうかな。
「出された物は食べきるのは昔から?」
「ああ、親の教えがあってな昔からだ。ただ無理はするなとも言われている」
「いい親御さん何だね」
「そうだな。割りといい親だと思うよ」
人としてこうあるべきみたいな事は一通り教えてくれたと思うし、自分たちが出来ない事を俺に押し付けたりはしなかった。それでいて俺のペースというのも大事にしてくれていたからいい親だ。
「私の父親は勇者としてあるべき姿であれば他の事何てどうでもいいという感じの人だったから」
「それなのにアリナとアーサーというちゃんとしていて優しい子が育ったのか。アリナとアーサーは元が優しいのか?」
「それは私とアーサーとよく一緒にいたのがお母さんだからだと思う。父親は長男と次男に付きっきりだったからお母さんが一緒にいてくれたの。お母さんはとっても優しかったんだよ」
アリナはお母さんの話をする時は嬉しそうだけどお父さんやアーサー以外の兄弟の時は嫌そうな顔をする。
それにお父さんではなく父親、お兄ちゃんじゃなくて長男、次男と言ったところからも仲良くない事がよく分かるな。
アリナの家庭事情は複雑だと思ったがアリナにはもうジークフリート家は関係ないからもう問題ないんだ。
「アリナは今と昔どっちの方がいいんだ?」
「今!」
アリナはかなり食いぎみに答えてくれた。
「ならよかった。アリナがいいと思える場を作れているなら」
「ありがとう」




