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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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かなりちょっとしたトラブル

 アリナと一緒にこの場所でしか食べられない食べ物を提供してくれる店を探して町をぶらぶら歩いている。俺個人の意見としてはふたりでぶらぶら歩いているだけで幸せなので夜ぐらいまでなら店が見つからなくてもいいと思っていた。


「そこの美男美女のカップルさん、お話いいかい?」


 後ろに美男美女のカップルがいるのか?芸能界へのスカウトかな。


「そこの二人だって、止まってくれ」


 どうしたんだろうか?俺たちが揃って振り替えると髭を生やした小太りのおっさんが俺たちの後ろに立っていた。


「私たちですか?」


「そうですよ」


 美男は当てはまらない、美女は当てはまる、カップルは当てはまらない、ということで三つ中二つも外れているから違うと思ったのだが、俺たちのようだ。


「何かお困りですか?この町には長年住んでいて結構詳しいんですよ」


「この町ならではの料理が提供されるお店を探しているのですがご存じでしょうか?」


 そんなに余所者っぽく見えるのかな?周りの人と変わらない気がするが。


「勿論ですよ。是非ご案内させていただきたいです」


「こちらこそお願いします」


 店の勧誘の人か。


 それならサンドウィッチマンになるとかもっと宣伝方法はあるだろうに。わざわざ人に話しかけて誘うなんて面倒くさいし、広まりにくいからやってもあまり意味を為さないと思うんだけどな。無駄に人件費を使うだけになってしまう。


 俺は勧誘方法のダメなところを上げながら勧誘の人についていく。


 何度か通りを曲がった先で地下に入るようだった。地下に売っているのはよくあるから外にいる時には違和感を持たなかったのだが、中が薄暗く奥まで見えない。


 この店には色々と足りていないかも。


 そんな呑気な事を考えながらアリナと一緒に奥まで進んでいたら大きな音と共に目の前に檻が現れた。


 周囲にも檻があることから、上から檻が落ちてきて俺たちは閉じ込められたようだが、目的は何だ?俺の首だろうか?


「そのままそこで待っていろ」


 そう言って勧誘の人は出ていき、開きっぱなしにされていたドアも閉められた。入口とは逆方向に辛うじて弱い光を発する明かりがあるがそれでもかなり暗い。


「どうする?言われた通りに待つか?」


「倒せる自信があるなら目的を聞き出すのも悪くないかも」


「出来そうだが、念のために俺の側に寄っておけ」


 俺がそう言うとアリナは俺のかなり側に来た。


「まだいいのだが」


「いつ危なくなるか分からないじゃん」


 それもそうだな。


 俺は納得しながらアリナの周囲にも魔力防御を展開して、アリナの防御を固めておく。ついでに俺は魔力感知を使って周囲に人が居ないかなどを確認すると、誰もいないし武器もなく監視の目も無さそうだ。


 不用心すぎる。


 俺は興味本意で入り口とは反対側の鉄格子を魔力を込めた腕で広げようとすると、少しだけ広がった。これならいざという時は格子を変形させて出られるから心配事は無くなったし、待っていても問題ないかも。


 格子は鉄製ではないのだろうし、この馬鹿みたいなやり方から察するに俺がサードと気づいての所業ではなく、単純な人拐いで間違いないだろう。


「一回売られてみて、自分にどのくらいの値段が付くのか知りたいな」


「その時は私が何とかして買うよ」


「そう言ってもらえると助かるのだが、もしアリナが売られたら俺では到底買えそうにないだろうな」


 アリナの美しさに金持ちの馬鹿どもは大金を叩いて手に入れようとするだろうから俺の貯蓄では足りない。


「その代わりにアリナを盗んで助け出す」


 俺の数少ない戦えるという強みを生かして、アリナを救いだそう。


「その方がロマンチックだね」


 あまりロマンは求めての発言ではなかったけど、確かに奴隷の人をお金では買えないから盗み出すというのにはロマンがある気がする。


 俺たちは会話をしながらどれくらいの時間を過ごしただろうか。かなり時間が経ったころに入り口のドアが開いてゾロゾロと人が入ってきた。


「これから売られる覚悟はできたか?」


 売られる事はまずないと思うけどな。格子がこんなに柔らかいものを使っているなら手錠をつけられたとしても簡単に壊せるだろうからな。


「何故私たちを選んだの?」


「余所者の美男美女となれば通報は遅くなるし、金になるからな」


 俺たちの正体に気がつかずに誘拐してしまうとは気の毒に。


「そろそろお腹が空いてきたころだし、私たちの正体を明かしましょうか」


 そこでアリナが会話を切ったから俺へのバトンなんだろうな。


「俺は世界政府独立治安維持組織序列《ナンバーズ》、サード」


「そして私はサード専属サポーターです」


 序列《ナンバーズ》は治安維持組織の指示を受けずに行動する事が可能だから独立治安維持組織となっている。


「馬鹿が犯罪をするべきではないぞ」


 とりあえず煽っておく。


「何てやつ連れてきたんだ。ずらかるぞ」


 自己紹介をすれば気づいてもらえるほどの知名度があるようだ。俺は鉄格子を歪ませて外に出てから先頭で逃げる男に魔力弾を当てて気絶させてすぐに入り口の方に走る。


 幸い最初のやつが気絶したおかげで他のやつらの足は止まったのですぐにドアの前に俺が立ち塞がった。


 あ、やっべ。アリナが間抜けな誘拐犯どもに囲まれている。


 俺と互角に戦えるアリナなら問題ないとは思うけど万が一の事を考えたら動かざるをえない。俺は急いで気絶している誘拐犯でバリケードを作ってアリナのもとに駆けつけるが、一足遅くアリナに近づいていた誘拐犯は宙を舞っていた。


 俺は宙を待っている誘拐犯に魔力弾を当ててからアリナの手を取る。


 アリナの手を引いて入り口まで走りながら、誘拐犯バリケードをどかそうとしている誘拐犯に魔力弾を飛ばす。この魔力弾で何とか全員を外に出すことなく気絶させる事が出来たようだ。


「これで全員倒せたな。通報してからまた一緒に店を探しに行こうか」


「私はもう少しは耐えられるから私の事は気にせずに自分の責務を全うして」


「自分の責務といってもこれは俺の仕事なのか?本来の責務を全うするには時間を使わない方がいいような気もするけど」


「それもそうだから公衆電話からばれないようにかけちゃおう」


 アリナは非常に話の分かる人だ。


 俺たちは地下室を後にして公衆電話をかけにいくけど俺は電話でも人見知りをしちゃうタイプだからここはアリナに任せるしかない。


「俺は電話でも話せなくなっちゃうからお願いしてもよろしいですか?」


「任せて。こういうのは適材適所だよ。戦闘は頑張ってもらったから次は私の番だね。」


 アリナは世界で一番神に近い存在かもしれない。


 公衆電話の前まで来たから俺はドアを開けてアリナを中に入るように促す。ドアボーイになった気分だ。


「ソウヤも一緒に入るといいよ」


「狭いからさすがに」


「大丈夫。二人とも太っているわけじゃないから簡単に二人は入れるよ」


 周りに見られたら恥ずかしいかなと思って一回断ったけどアリナがどう会話するのか聞きたいから入る事にする。


「それじゃあかけるね」


 アリナが受話器を取って番号を押す。警察とかに電話をかけるときは料金が一切かからない。たぶんお金が無くても通報できるようにするためと途中で切れないようにするためだろうね。


 お金の入れ忘れで途中で切れたりしても公衆電話にかけ直す事はできないから色々と大変だろう。それの防止のために無料となっていると推測する。


「はい。えーっと誘拐犯が現れまして誘拐されそうになりました。組織だって行動していたので初犯ではないと思います。誘拐犯は全員連れが気絶させましたので急いで向かうべきです。住所は…」


 アリナは必要な情報だけを警察に伝えて俺らの素性は一切明かさなかった。

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