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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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アムカバセに立ち寄って

 俺たちは部屋に戻ってきてからは特に大きなことはなく、出発の日を迎えた。


「準備出来てる?しばらく戻って来れないよ」


「終わっているよ。ソウヤは?」


「終わってる」


 俺たちはエレベーターで階層を移動して目的の場所に行ける転移魔法陣がある部屋の前まで来た。


 扉の前に雨坂さんが立っていて、ドアを開けてくれる。


「ありがとうございます」


「仕事ですので」


 俺たち三人は魔法陣の上に乗る。


「それでは起動します」


 その言葉と同時に辺りが魔力が包まれ始めて魔法が発動するが、転移の感覚は慣れない。引き延ばされているような圧縮されているような感覚に視界が歪む感じがして気持ち悪い。だが、その感覚はすぐに消え去って、気がつけば迷宮国家だ。


 転移した先は世界最大の迷宮がある国の要塞都市イリオスである。この都市は外側がぐるっと壁で囲まれているのに加えて、街自体が魔法陣になっていて、最大級の防御魔法が常時発動しているため、要塞都市と呼ばれているのだ。


 この都市には大迷宮はないので俺たちは電車に乗って、移動する。


「雨坂さん、例の魔物での被害状況はどうですか?」


「現状では多くはないですが、時間の問題でしょう。今回の魔物は多くの階層に現れる神出鬼没の魔物のようで、すべての冒険者が出くわす可能性がありますので。それと手柄を立てたい冒険者が無謀にも突撃しかねないです」


 神出鬼没なのに犠牲者が少ないとはどういうことだ?余り人を襲ったりしないのか?それなら不意打ちをしやすいし、緊急性が低くなる。


「ソウヤ様は迷宮に行った回数が少なかったんでしたね。犠牲者が少ないというのは、あくまで例の魔物によっての被害が出たという事が確定している人数です。例の魔物が確認された日の少し前から行方不明者と亡くなられた方は急激に増えています。本当の犠牲者はかなり多いでしょね」


 何それ、怖っ


 確定という事は殺されたのを見た人が報告した人数ということだろう。つまり、殺されるところを見た人が居ないというのはパーティーが全滅したということだ。


「大迷宮を閉鎖する事は無いんですか?」


「大迷宮では基本的にありえませんね。迷宮はどこの国にも属さない事になっていますので、封鎖する事自体が難しいですから。それによって迷宮内は治外法権状態。迷宮内でのルールは自己責任のみです」


 それは迷宮内でなら人を殺しても裁く事は出来ないということか。ますます危ない。


「サード様が大迷宮に行く事は公表されていませんが、任命式の時にお顔が新聞で広まっているでしょうから人にも気を付けてください。有名人の頭は高値で取引される事があるようですので」


「アリナは?」


「アリナ様のお顔は公表されていませんが、とても綺麗な方なので、人拐いには気を付けた方がいいです」


 アリナはびっくりした顔で見ているが、アリナは誰が見ても綺麗だぞ。


「気を付けろよ、アリナ」


「うん」


「アリナが拐われた時は世界政府は動くんですか?」


「生きていらっしゃるのでしたら、総力を尽くして救うでしょう」


 俺の首が斬られた時は回収してくれないんだ。


「ソウヤは私が回収するから」


「危ないから止めておけ」


 俺の首なんてアリナの安全と比べたら安い。


『次は終点、終点、アムカバセ』


「終点?」


「ここより先は砂漠ですので、レールが引けないんです。ここより先は徒歩になります。一応この先の岩石砂漠を迂回した道なら馬車が通れますが、かなり遠回りになりますので、徒歩に比べると数日は遅れるかと」


「どっちがいい?」


 アリナの意見を聞いておく。


「ソウヤの行きたい方で」


「なら歩くか」


「左様でしたら本日はこの街で一泊しましょう」


 まだ昼なのに休むということは朝から行けば日が出ている最中につける位置に大迷宮はあるのだろうな。結構遠いな。


「荷物を持って砂漠を越えるんですか?」


 荷物はキャリーバッグだから不安定な道のりを行くのはかなり大変だろう。


「荷物は今日と明日の分だけを取って後は送りましょう」


「わかりました」


 俺たちは列車を下りて駅から出ていく。


「宿はこれからですか?」


「世界政府が所有する物件があるのでそこを使います」


 さすが世界政府。俺たちは駅から少し離れて住宅街まで移動してきた。


「ここがソウヤ様とアリナ様が本日泊まる家です」


 普通の一軒家。こういう時だけのために家を用意するのは普通にコスパ悪いんじゃないか。


「こちらが家の鍵になります。後程送る荷物を受け取りに参りますのでよろしくお願いします」


 俺は鍵を受け取って、いつも通りに家の間取りを確認すると、当然のように(同じ家に住むことすら違和感があるのだが)ダブルベッドだった。


「またダブルベッドだね」


「まただな。世界政府は俺たちを何だと思っているんだよ」


「う~ん、新婚?」


 新婚か。新婚は常にいちゃついているイメージだが、今の俺たちはそう見えるのか?嬉しいような嬉しくないような。


「ふざけていないで荷物の整理をしよう」


「忘れてた」


 俺たちは荷物を開けて今日と明日の分の着替えとかを取り出して、荷物を閉じる。


「荷物はどのくらいで届くんだ?」


「たぶん迂回ルートの馬車に荷物を載せて運ぶから数日後だけど、明日か明後日の朝には届くんじゃないかな」


 なるほど。世界政府なら車くらい持っていそうなのだが、馬車という事は車の製作には何かしらの難でもあるのかもしれない。


 迷宮探索用に持ってきたバッグに取り出した荷物を詰める。


「それならこの量でも問題ないか」


 俺は荷物の量をかなり減らしているが、これでも明後日の朝まではもつだろう。


「結構荷物少ないね」


「最低限の物だけで問題ないだろうからな」


 俺たちは荷物を玄関に置いて、キッチンに行く。


「冷蔵庫に何か入っているか?」


 アリナが冷蔵庫を開けて中身を確認している。


「何も入っていないよ。いつ使うか分からないんだから、さすがに入れないでしょ」


「それもそうか。昼と夜どうする?」


「折角だし外に食べに行こうよ」


 俺は財布を取り出して中身を確認する。


「よし、食べに行こう」


「割り勘なんだから確認しなくてもいいでしょ」


「俺が払う」


 俺は財布をポケットに入れて雨坂さんが来るのを待つ。


 ピンポーン


 少し待っているとインターフォンが鳴った。


「俺が出る」


「よろしく」


 俺が玄関を開けて外に出ると、雨坂さんが立っていた。


「荷物を受け取りに参りました」


「ちょっと待ってください」


 俺は雨坂さんを待たせてから、すぐに家に入って俺とアリナの荷物を持って外に出る。


「これとこれです」


「分かりました」


 雨坂さんは二つの荷物を受け取った。


「それでは失礼します。明日の朝九時頃にもう一度伺いまして、大迷宮に向けて出発しますのでよろしくお願いします」


 そう言って雨坂さんは荷物を持って立ち去った。


 俺はそくささと玄関から出て、アリナの元に向かう。


「明日の九時出発だってさ。荷物の受け渡しを終わらせたし、そろそろ昼を食べに行かないか?」


「どこに行く?折角ならここでしか食べられない料理を食べに行きたいなって思うけど」


「それなら町を歩いてみて探すか。もし見つからなかったら道行く人に聞いていただいて」


 俺は話しかける何て出来ないから。


「コミュニケーションが関わる時の頼み事の時は丁寧だよね。今回は私がそうしたいんだから頼まれなくてもするつもりだったよ」


 アリナなら目的のレストランの場所を聞き出すことは容易だろうな。俺なら話しかけ始めた時に発声の確認をしてから、真っ白になってしまって消えた聞く内容を思い出して聞くという行程が必須。


 すると頭の中で文章が出来る速度にかなりばらつきが出てしまって、急に早口になったと思ったら言葉に詰まるという聞かれる側が苛々する質問になりかねない。


 なりかねないというかなる。


 アリナは本気で尊敬できる。

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