任命式
世界政府の支部から帰ってきた時と同じようにして、本部まで来た。本部まで来た時に荷物は預けてので、今は手ぶらな状態になっている。
「こちらでございます」
今日が任命式のため本部に来たのだが、案内人は変わらず雨坂さんのようだ。
「お久しぶりです」
「お久しぶりです。束の間の休息はいかがだったでしょうか?」
「良かったですよ」
アリナと一緒にでかけることができたので、かなり良かった。
俺は雨坂について行き、エレベーターに乗る。俺はアリナと一緒にエレベーターに乗り込むが、このエレベーターの後ろは全面ガラス張りで海がよく見える。
「何これ?」
アリナが聞いてくるが、アリナでも知らないのか。
「エレベーターだよ。この箱ごと上下に移動するんだよ。外の景色を見ていればよく分かると思う」
エレベーターは上昇していき、海はだんだん遠ざかっていくのと同時に懐かしい感覚がある。
「この感覚!?前も乗ったことある!」
この感覚は覚えているようだ。しばらく乗って海がかなり離れたころにエレベーターは止まり、ドアが開く。
「着きましたよ」
表示を見ると五十階と示している。
「ここが最上階ですか?」
「この上に世界政府の議員用の部屋がありまして、その上に議事堂があります。さらにその上がゼロ様の寝室、最上階に玉座です」
ゼロということは序列のトップか?序列はファーストがトップだと思っていたが、一番の上はゼロなのか?分からん。
「序列が立ち入れるのはここ、五十階までです。気を付けてください」
「了解です」
階段を上っていたらうっかりとか、ありそうだから気を付けたいところだ。
「この先で任命式を行います」
でっかい扉を雨坂さんが開けて中に通されたが、体育館ぐらいの広さがあるのではないだろうか。天井が高いし、広いし、奥に簾がかかっていて、何のための部屋か全く分からない。
中国の皇帝の玉座とかはこんな感じになっているような気がする。
すでに師匠とエンゲは中にいて、俺は二人の横に距離を取って立った。
「皆様がそろいましたので、任命式を始めます」
雨坂さんが司会のようだ。
「それでは今回序列になる方々の紹介です。サード、ソウヤ様。セカンド、ブレイダ・ペンテシレイア様。ファースト、エンゲ様。以上三名です。」
本当にサードになるんだな。
同じ事を何度も思っている気がするが、実感が微妙に沸かない話だったから仕方ないだろう。
「それでは世界政府総裁、ゼロ様からお言葉をいただきます」
へー、ゼロはもっと上の階に住んでいるのにわざわざ下りて、くっ…
空気が重い。
全身が圧迫されているかのようで、空気が上手く吸えない。この重さに負けて床にへたりこんでしまいたいぐらいに重く俺の体にのしかかっている。
これがゼロの魔力。
「これからよろしくお願いいたします」
合成音声のような声でそう言った。ゼロ自信は奥にある簾の向こうにいるようでシルエットだけが見える。
昔の天皇かな。
「それではこれにて任命式を終わります」
ゼロの言葉はあれだけなのか。
「序列の皆様にはそれぞれの役職が分かるブローチをつけていただきます」
その言葉を合図にトレーみたいのを持った人が近づいてきて俺の前に止まる。
トレーの中にはクッションが敷かれており、真ん中にブローチが置いてあった。それに手を伸ばしてブローチを取るが、クッションが柔らかい。
ずっと触っていたい。
ブローチと取らないままだとトレーを持っている人に迷惑がかかるので、ブローチを取って身に付ける。後ろに立っているアリナも何か貰っていた。
普通はここまでが任命式なのでは?何で終了後に必要なブローチを貰う?
「それでは退出していただきまして、案内人から説明を受けてください」
式は異常に短かったな、何はともあれ案内人は継続なのか。
「それではソウヤ様、アリナ様、こちらに」
雨坂さんが先導して俺たちは二十階に連れてこられた。
壁が豪華。
この階層は部屋が多めだが、他の階層に比べるとであって、ホテルとかに比べると少ない。
一個一個の部屋が広いのだろうな。その部屋の中でも奥の部屋に通される。
「ここが、お二方の部屋になります。私生活で使う部屋ですので、お申し付けいただければ自由に内装を変えることが可能です。後程、確認が必要な事などは紙に纏めてポストに入れますので、確認することを忘れないでください。それは失礼します」
雨坂さんが部屋を出ていき、俺とアリナは部屋に取り残された。
「まずは部屋の内装の確認だな」
「そうだね」
俺たちは玄関を抜けて、リビングに入るが広い。俺たちの荷物がしっかりと置かれているのを確認して、リビングから繋がっている部屋を確認する。
片方は寝室。
めっちゃでかいベッドが置いてある。
他に寝室が無い。
「どうする?寝室について」
「別々の部屋の方がいいかなと思うけど、ソウヤはどう思う」
「同感」
「アメサカさんが来たら頼もう」
寝室について決定した時にポストの扉の音が聞こえてきた。アリナが急いで玄関に行き、外に飛び出していったのでそっちは任せて俺は届いた書類をリビングで読む。
ある程度は知っていた内容なので軽く読んでおき、専属サポーターについて書かれているところを抜き出してテーブルに置いておく。
ドアが開いた音がしたので、玄関に行くと息切れしているアリナが立っていた。
「伝えたよ…走って追いかけたから…疲れちゃった…」
帰りはどうした?帰りも走ってきたのか?謎はあるがアリナはリビングに行って、ソファーに横になった。
「これ読んでおいた方がいいかも。後はこれ」
俺は纏めておいた紙と、アリナの血液検査の結果が入った封筒を渡す。俺の分もあるため封筒を開けて中身を確認する。
血液には特に異常はなく、血液を流れる魔力の検査結果の紙を見ると衝撃の事実が書いてあった。
『あなたは魔人の可能性が高いです』
何で?両親のどっちかが転移した魔族の血を引いていたのか?血は薄まるから魔族であるためには近い人か隔世遺伝しかないだろう。
血ではなく魔力の性質が魔族よりだったのなら魔族の魂が地球に流れ着いたのかもしれない。どちらにしろ両親のどっちかが魔族の可能性があるのか。
家族のだれが魔族なのかよりも、魔族は今も差別があることを考えなくてはな。
絶対に回りには言わない方がいい。アリナは差別をするような人じゃないけど念のためにアリナにも隠しておこう。
俺は紙を封筒に戻してバッグに入れておいた。
俺は紙の確認をしていると俺宛の手紙が一通入っていることに気がついた。
『サード様。現サード様は歴代のサードの力のレベルに達していないように思われます。十階に訓練場がありますのでそこで鍛えることをお勧めします』
刺がないように弱いとかは使わずに書いてくれているのだろうが、実際俺は本選では一回しか勝っていない。タナトス、エンゲ、師匠の三人が強すぎて、俺より強かろうと負けていたのだろう。
俺は怒りに任せてデブに勝利しただけで、運だけでサードになったようなものだ。分かってはいるのだ、分かってはいたのだが、ちょっとショックだな。
自分で思うのと他人に言われるのでは違いすぎる。
俺は生き残って退職するために強くならなくてはいけないのに、スタートが他の人たちよりも後ろにある。なのに俺は強くなる速度が遅い。
「俺良いところ無いな」
「そんなことないよ」
アリナの息はすっかり整ったようだ。
「優しいよ。いつも周りのことを気にかけている辺りがすごいと思う。真面目で頑張り屋さん。自分に足りないと思ったら、頑張って足りるようになるまで頑張っているよ。大きな所はそんな感じかな。あっ、ついでにイケメン」
自分の良いところを認めるのは大事なことか。
「ありがとう。励ましてくれて」
「ソウヤを支えるのが役目だから」
「これからも宜しく頼む」




