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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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デート 中編

 急に自殺とか重い話をされても返答に困る。


「そうだな、アリナの話を聞いて俺に何かできないか考えるな」


「もし、何もできないとしたら?」


 何もできない程に重大な問題は確かにあるだろう。


「そしたら、土下座でもして死なないでくれって言うだろう。俺にはアリナがいなければ駄目なんだって、頼み込む」


「それでも、どうしても死にたいって言ったら?」


「それなら俺も諦める」


 俺の手に負えないことはどう頑張っても無理だ。


「それでアリナが死んだら俺も死ぬ」


「そうなら、アーサーとブレイダお姉ちゃんに死なないように見張っていてってお願いするかな」


「二人とも忙しいから必ず隙は出来るから何としても死ぬ。最悪アーサーが居ない時を狙えば、魔法が苦手な師匠では俺を救えないだろうから、首でも切って死ぬかな」


「ソウヤ、死なないで。ソウヤが死んだら悲しいよ」


 あれ?いつのまにか俺が死ぬ話になっていないか。


「アリナが生きている限りは死なない。アリナが生きている限りは何としても生きていなければいけないからな」


「私が居なくなっても生きて。約束して」


「無理だ。アリナの居ない世界に意味はない」


 俺がアリナの居ない世界に居てもしょうがない。


「お願いだから約束して。老衰で死ぬまで生き抜くって約束して。お願いだから」


「それならアリナが長生きしてくれればいい」


「もしものこととかあるじゃん」


「もしものことでそんなに剥きにならないでくれ」


 もしものことは確かにあるが、もしもはもしもであって起きない限り一生分からないものなんだ。


「それもそうだね。ごめんね」


「俺も相手に生きてほしいという気持ちは分かるから気にしないで」


 俺はアリナの「おはよう」に応えなければいけないからアリナより先に死ぬわけにはいかないが、アリナには長生きして欲しい。


「もし何かあったら言ってくれ。力になれるように頑張るから」


「うん。その時はお願い」


「ああ。いくれでも話を聞くし、アリナのためなら惜しむ事など無い」


 金も努力も惜しまずにアリナを思って動く。これは義務でも何でもないけど、絶対にするのだろうな。


「ありがとう。そろそろ行く?」


「そうだな。そろそろ行くか」


 俺が立ち上がるとすぐにアリナも立ったので、俺はアリナをお姫様だっこして雑居ビルから飛び降り、衝撃を魔力で和らげる。俺はゆっくりとアリナを下ろして、歩き出す。


「次はどこに行くの?」


「デパートに行こうとは思ってはいるが、行きたいところはある?」


「デパートに賛成」


 俺はアリナのちょっと後ろを歩いてアリナの目の動きが見える位置で歩く。


 アリナが目移りをすればすぐに気づけるようにと、思っていたがアリナは時々俺の方を見るくらいで全然回りの物を見なかった。


 もうすでに突き当たりを曲がればデパートについてしまう所まで来てしまっている。


 突き当たりにある教会には看板があって、そこにはウエディングドレス試着体験と書かれていた。


「ウエディングドレスだって」


「私もいつか着ることになるのかな?」


 その時には隣に俺が立っていると嬉しいな。アリナの目線は確実に看板の方を見ている。


「試着するか?」


「大丈夫だよ」


「遠慮するな。凄い見ていただろ」


「うん。やっぱりお願い」


 最初に遠慮するなと言っておいたのに遠慮されてしまうとは。


 俺たちは教会まで来て、手続きを行う。


「男性の方はタキシードを着られますか?もし着られても料金は変わりありませんが」


 俺がちらっとアリナの方を見るとアリナが力強く頷いた。


「お願いします」


「女性の方は先に移動してください」


 アリナはスタッフに連れられて奥に消えたので残っている手続きを全て済ませる。印刷とカメラの品質を上げた結果、五万近くが一気に手元から離れたが仕方ない。


 バイト代の半分くらいをアリナにあげていて残りはほとんど貯金していたから良かったが、日頃から使い込んでいたら危なかった。


 アリナに渡すのがバイト代の半分で済んでいるのも俺が授業免除になっているおかげで授業料が非常に安く済んでいるおかげでもある。


 料金をきちんと支払ってから俺も移動してタキシードに着替える。


 着替えて撮影会場に行くとすでにウエディングドレスを着たアリナが待っていた。髪の毛を結っていて、いつもとは雰囲気が違うアリナは言葉では表現できないほどに美しい。


 会場には馬鹿でかいカメラがあってめっちゃ場所を取っていた。


 最初はアリナがブーケを持って写真を撮っていて、眼福過ぎる。


 目の保養。これは五万以上の価値があるな。


 次は俺も撮影に参加して、アリナの隣に立って写る。


 色々なポーズで撮って次で最後になった。


「最後は誓いのキス」


 誓いのキス!?俺はアリナに何とか言ってくれとの意を込めてアリナの方を見ると、アリナの顔がものすごく近くにあった。


 近くにあったどころの話ではなく、唇と唇が触れている。


 柔らかい


 俺はこの瞬間を世界で一番長く、世界一短く感じた。


「これで撮影終了です。印刷枚数を先に伝えてから着替えてください」


「私言ってくるね」


「…うん」


 俺はぼんやりしながら着替えて、アリナを待つ。俺は自分の唇を触ってみるが、あの時の感触とは違うためすぐに離してあの時のことを思い出す。


 もしかしたら唇以外の部分が触れていたのかもしれない、いや、あれは唇だった。


 現実逃避をしようとしているが、本心ではアリナとのキスを喜んでいるから逃げ切れない。同じことがずっと頭を回りながらまっていると、アリナが戻ってきた。


「それじゃあ、写真を受け取ってデパートに行こうか」


「そうだな」


 俺たちは受付で写真を受け取って、外に出る。


「ちょっと待ってね」


 アリナが一所懸命に写真を取り出している。


「三枚頼んだのか?」


「私二枚ソウヤ一枚だから」


 同じ写真が二枚というのはアルバムに入れる用と、飾る用かな。俺はどうしようか、十枚ぐらいあるから全ては飾れない。


 写真を見ていると、俺とアリナがキスしている写真があり、ちゅんと見ても唇が触れている。


「良かったのか?これ」


 俺とアリナがキスしている写真をアリナに見せながら質問する。


「嫌だった?」


 何でそんなに悲しそうな顔をする。


「そんなこと無い。ファーストキスとかは気にしないのかと思っただけ」


「ファーストキスは好きな人にあげたからいいの」


「そう…なの…か…」


 アリナの好きな人は俺じゃないのか。僅かな希望が消えた。


「あー、えっと、うーん。ソウヤとすごい仲が良いからキスできるんだよ」


 フォローを入れられた気がする。


「私がキスできる相手はソウヤだけだよ」


 ファーストキスの相手は既に亡くなったのか。辛かっただろうにそれを感じさせない振る舞いができているアリナはすごい。


「アリナ、強く生きるんだ」


「話がずれてる?親みたいな事を言っているけど」


 アリナからは言葉からも行動からも悲しさを感じない。


「どんどん話がずれていく気がするからこの話は一旦終わり。デパートにもう着くよ」


 話を切られた。


「デパートでどこか行きたい店はあるか?」


「いろいろなところを見て回りたい。晩ご飯の時間は決めているの?ぎりぎりまで回りたいんだけど」


「決めていない。二人の腹の空き具合によるな」


「ならだいたい時間は決まってくるね」


 食事の時間は毎日ほぼ同じだから腹が減る時間もだいたい決まってくる。それまで遊び尽くしても晩ご飯代は余るはずだ。


「ところで写真撮影はどのくらいしたの?」


「値段?値段はな、だいたい一万弱かな」


 ほんとの値段を言ったらあとで金を返されそうだから嘘をつくしかない。慰労会で慰労される側に払わせるなどできるわけがないのだ。

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