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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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エンゲ戦 決着

 俺は急いで後ろに下がろうとすると横っ腹が痛んで動きが遅くなり、エンゲの蹴りが俺の傷口に当たる。


 俺は防御しきれず後ろに飛ぶが、痛みで脳が上手く働かない。


 吹き飛んで俺は受け身も取れず地面を転がっていき、摩擦で勝手に止まったところで脳が再び動き出した。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


 他のどの情報よりも先に痛みが俺の脳に与えられるふぁ、痛かろうとも追撃は来るので体を起こそうと膝を付けて、両手で上半身だけを持ち上げる。


 ポタッ


 音のする方に眼をやると血が滴っている。それを見てしまうと横っ腹に意識が行ってしまうので、前を見ると血の跡が前にもあった。


 転がった時についたようだが、それよりもエンゲが接近してきていた方が問題である。


 俺は急いで立ち上がろうと膝立ちになったところでエンゲの拳が俺の顎に激突した。


 俺はその勢いのまま後方に倒れて意識を手放した。

――――――――

 重たい瞼を持ち上げると白い天井がある。周囲にはカーテン。


 ここは病院なのか?こんな感じの風景で起きるのはもう三度目だろう。


「ソウヤ!大丈夫!?」


「大丈夫だ」


 この声はアリナか。この状況で起きた時にアリナに声をかけられたのは初めてだな。


「医者は軽い脳震盪だと言っていたのだから、ソウヤは大丈夫だと言っただろう」


 これは師匠の声か。師匠が来るとは思っても見なかったな。


「師匠もいらしたんですか」


 俺は上半身を起こす。


「ああ。アリナからソウヤの試合前の様子が変だったと聞いていたのでな」


 アリナは師匠に話したのか。


「今回は脳震盪だから問題ないですし、今回は偶々ああなっただけですので問題ないです」


「そうか。なら良かった」


「ブレイダお姉ちゃんは何か知っているの?」


「私は特に知らないんだ。私はもう行かせてもらう」


 師匠は次に試合があるんだったよな、タナトスと。師匠が部屋から出ていくのを見送るが歩く姿さえ達人感があるよな、実際に達人なんだけさ。


「試合前のは何だったの?」


 嘘をつきたいがアリナに嘘は通じないしどうしよう。


「俺も何で起きたのか分からないんだ」


 これは嘘じゃない、何であのタイミングになったのかは分からない。


「でももう起きることは無いと思うから大丈夫だ」


「嘘は言っていないけど何か隠している気がする。でも信じるからね」


「ありがとう」


 アリナは隠し事をしているのも嘘をついているのも分かってしまうとは、アリナと結婚する人は浮気できないな。


「それでここどこ?」


「コロシアム内の医療室。設備が整っていてすごいんだよ!」


 アリナは設備のことについて語りだしたが、すごい楽しそうに話す。


「アリナは医療系の仕事につきたいのか?」


「仕事にしたいとは思わないよ」


 アリナの学力なら十分なれると思ったがなるつもりはないようだ。


「でも今回は残念だったね。四位決定だよ」


 唐突に序列戦の話か。


「だが、もしかしたら序列になれるかもしれない」


「何で?」


「タナトスは多分序列になるつもりは無いのだと思う。だから繰り上げでなれるはず」


 繰り上げ制度があるのか知らないけど。


「辞退は今まで無かったと思うけどどうなんだろうね。もしなれたら嬉しいよ」


「どうしてだ?」


「そうなったら私はソウヤの専属サポーターになれるんでしょ。色んなところにソウヤと行けるじゃん」


 旅行とは違うと思うが息抜きも必要か。


「着いていく必要は無いのだがついてくるのか?」


「勿論、一人で現地の人とコミュニケーション取れるの?」


「着いてきてください」


 序列に来る任務は中々にハードな任務だと聞く。ハードな任務なら確認を取らなければいけないことも多いはずだから、コミュニケーションも必要になってくるだろう。つまり俺一人には無理。


「俺、アリナがいなきゃダメダメだ」


「ソウヤにはソウヤの良いところがあるから大丈夫だよ」


 そんなことは無い。アリナの前ではいい格好したいから頑張っているだけで俺には良いところはないんだ。


「ソウヤは優しいよ。自分では気づいていなと思うけど知らない人でも気にかけているぐらいだし」


「気にかけていない」


「私は知っているんだから」


 そんなことは無いと思うのだがな。


「アリナも優しい。いつも周りの人を気にかけているし、行動もする」


 俺だけが褒められるのは嫌だったのでアリナも褒めておく。


「ありがとう」


 俺ももう動けそうだし、ここから出なきゃな。


「ちなみに俺の控え室での様子ってどんな感じだったんだ?」


「うーんとねっ、耳を塞ぎながら座り込んでどうしたんだろうと思って近づいたら、全身げ震えていて目をぎゅっと閉じていたよ。どうしたの?って声をかけたけど返事が無かったし震えて寒そうだったから温めようと思ってソウヤにくっついたの」


「あの時は助かった。ありがとう」


 アリナがいなければ不味い状況になっていた可能性も十分ある。


「よく分からないけど、役に立てて良かった」


 本当にアリナがいなかったらどうなっていた事やら。たぶん、俺は試合に出られず、心配になったアリナが探しに来てくれて助けてくれるのだろうが、危なかったな。


「アリナには感謝してもしきれないな」


 俺は靴を履いてベッドから降りる。服はそのままだったから、着替える必要は無い。


「そんなことないよ。私もいつも助けられてるからお互い様だよ」


 俺は助けているつもりは無いんだけどな。俺はもう帰ろうと思って自分の服装を確認してみると破れた服のところから包帯が覗いている。


「鎖帷子が壊れている」


「本当だね。でもこのくらいは許してくれるでしょ」


「そうだと良いのだがな」


 許してくれなかった時は弁償か?そしたら俺とエンゲのどっちが払うんだろうか?使ったのは俺だけど壊したのはエンゲだ。流石に俺か。


「返しに行ってこようかな」


「私も行くよ。また何かあったら大変だからね」


「そういえばその前に部屋に戻らなければいけないんだった」


 アリナのおかげで思い出した。


「着替えもしなきゃいけないしね」


 破れた服のまま出歩くわけにはいかないか。


「そうだな。部屋に戻るか」


 軽く会話をしながら俺たちは部屋に戻ってきた。


「それじゃあ、俺は着替えてくる」


 俺はバッグから必要な物を取り出して、洗面所に入る。


 コップに水を入れて一気に飲んでから着替えをしたが、鎖帷子はすっかりぼろぼろだ。脱いだ服はバッグに戻して鎖帷子をアリナに見せる。


「ぼろぼろになってる」


「エンゲさんの力加減が可笑しいんだよ」


 それもそうだが、試合だから仕方の無いことだ。


「借りたものは小手と棍と鎖帷子で借りた時に書いた紙もある」


「それじゃあ、返しに行こう」


 再び移動してきて倉庫に来た。倉庫の入り口横に人が居たので、その人のところに一式を持っていく。


「これ返却したいんですけど」


 アリナが代わりに言ってくれる。俺は勢いに任せて喋る以外だとアリナ、アーサー、師匠、一応オーウェンとソフィアさんとしか話せない。


 特に初対面の人とは難しいのだ。


「返却ですね。三点とも揃っているので問題ないですね」


 そう言ってその人は紙に印をつけて、三点とも回収した。


「これで終わりみたい。戻ろっか」


 特に何か言われることもなく返却が済んだようだ。


「ソウヤもあのくらいのコミュニケーションをとれるようになると良いんだけど」


「無理」


 話せたら良いとは思うんだけど言葉が出てこないのだ。


『勝者タナトス選手』


「師匠負けたみたいだね」


「そうだな、でも序列には確実に入れる」


 二位だからな。


「師匠はこの後も試合があるから大変だよな」


「そうなの!?」


「知らなかったのか?序列の順番を決めるためにまだ対戦していない師匠とエンゲが戦うことになるのだが、師匠なら今日戦うのだろうな。エンゲが望まないのならば、試合は無いが」


 挑戦を受ける側の師匠は試合を明日に延期することは可能だが、それをする人ではないだろう。


「そしたらブレイダお姉ちゃんは連戦だよ」


「挑戦する側のエンゲは制限時間以内に勝たなければ負けだからエンゲにハンデはある」


 師匠が逃げを選択する人ではないから余り意味は無い気もするが。


「俺たちは荷物をまとめよう。船の時みたいにバタバタしたくないし」


「そうだね」

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