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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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師匠戦 決着

 俺が連撃をしている最中に師匠が蹴りをしてきたので一旦距離を取ってから師匠に格闘術の間合いまで近づいて師匠の鳩尾目掛けて拳を振るう。


 あれ?魔力がなくなった。


 俺の拳はしっかりと師匠の鳩尾を捉えたが魔力防御に阻まれ、魔力を纏っていない俺の手が痛む。そして師匠の拳が俺の顔面に当たって俺は吹っ飛んでいった。


 後一撃当てれば勝てるんだ、早く魔力が使えるようになってくれ。


 俺は魔力が回復するまで師匠から逃げなければいけないので地面に両手をついて立ち上がろうとするが一向に体が持ち上がらない。


「ソウヤ選手、後五秒以内に立ち上がらなければ負けとなってしまいます」


 そんなことを言われても体が上がらないんだ。そのカウントをするにはまだ早いんじゃないか?若干ルールがねじ曲げられている気がしなくもない。審判のさじ加減ではあるから、文句は言えないが。


「五!」


 何とか起き上がろうとするが体に力が入らない。


「四!」


 魔力が無くても体は動くはずなのに何で、何で立ち上がれない。


「三!」


 俺は周囲を見てみたが周りに掴まって立ち上がれる物はない。


「二!」


 棍を手放さなければ今立ち上がるのに使えたのに。


「一!」


 考えても仕方の無いことが頭を周り始めた。


「ゼロ!ソウヤ選手、戦闘不能によりブレイダ・ペンテシレイア選手の勝利です」


 立ち上がろうとする俺に無慈悲にも俺の敗北が宣言された。


「ソウヤ、大丈夫か?」


「起き上がれないんです」


 師匠が見かねて声をかけてくれたので正直に現状を伝える。


「分かった。肩を貸そう」


 そういって俺の手を取って自分の肩に乗せてから俺を持ち上げた。


「体に魔力を込めすぎだ。普段より多くの魔力を込めたせいで体が異常をきたしたんだ。後少しすれば自分で歩けるようになるはずだ」


 俺の現状を瞬時に読み取って教えてくれた。


「そうなんですか。そんなことになるなんて知らなかったです」


「私も魔力を込めすぎた時初めて知ったが、異常をきたすほどの魔力量を持つ人が少ないから余り知られていないようだ」


 俺は混爆(エクスプロージョン)中だったからその量の魔力を込められたが、師匠は何でその量の魔力を込めたんだ? 師匠なら一撃の威力はどこまでいくんだろうとか思ってやりかねない所はあるから鍛練中の可能性も十分ありえる。


 師匠の肩を借りながら、と言ってもはぼ師匠に持たれている状態ではあったが無事、橋を渡って戻ってこれた。


 師匠の言う通り俺の体に少しずつ力が入るようにはなってきているがまだ一人では歩けない。


「控え室を抜ければアリナが待っているだろうから、それまでに歩けるようにした方がいい」


 確かにアリナに無駄な心配をかけたくない。だからといってすぐに歩けるようになる訳がないのだが、支えがあれば一人で歩けるぐらいにはしないといけない。


 控え室まで辿りついてしまったが、遅くなることもまた心配をかけることになるので立ち止まってはいけないのだ。


「師匠、もう大丈夫です」


「分かった。手を放す」


 そう言って師匠は手を放したので俺はすぐに壁によりかかって壁に体を押し付けながら歩いた。


「かなり元に戻っているな、頑張れ」


 俺はそのまま歩いて控え室入り口に出た瞬間に手を縁に押しあてて体を壁から離す。体は離せても手は離せないので片手だけ壁に当てていて気取っている感じになっているが仕方がない。


「もう大丈夫なの?」


「ああ、全然平気だ。一時的に動けなくなっただけだから。詳しい事は師匠に聞いてくれ」


 俺は自分が大丈夫なことを伝えてから師匠に丸投げする。


「ブレイダお姉ちゃん、ソウヤの強がりじゃなくて本当に大丈夫なの?」


 ご名答、俺の強がりだ。そんなことより、アリナが師匠の方に目線を向けたので俺は壁から手を離して、背中を壁につけて壁に寄りかかった。


 気取ったポーズ二号。


「本当だよ。私も一回なったことがあるがすぐに治ったし、その後も異常は無かった」


 師匠のことが俺に当てはまるかどうか分かったもんじゃないが、治ることを祈るしかない。そのためにも出来るだけアリナと話して時間を稼いでくれ。


「体に魔力を込めすぎて起こる異常だが、魔力が抜ければ元通りになるし、次は慣れて同じ量なら動けなくなることはなくなる」


 それを聞いたアリナは再び俺の方を向いた。


「無茶しない。動けなくなるまで戦っちゃ駄目だからね」


「まさか動けなくなるとは思わなかったから今回は仕方ないと思うが、次からは気を付ける」


 弁解しつつ相手の話を受け入れる、これで納得してくれるだろう。


「本当に気を付けてね」


「分かった」


 アリナと話しているうちにかなり体の調子も戻ってきた。俺は壁から離れて支えなしでアリナの近くまで歩いてみるが少しもふらつくことなく歩くことができている。


「それじゃあ次の試合の観戦でもしに行くか」


「そうだね」


「それじゃあ、私はこれで」


 師匠はいつもどこに行っているのだろうか?謎である。


「師匠はどこに行っているんだ?」


「私も知らないよ」


 アリナなら知っているかもと思ったが流石に知らないようだ。


「次はタナトスとエンゲだったよな。負けた方と三位決定戦だが、タナトスとだからたぶんエンゲと戦うんだろうな」


「タナトスって人凄いの?」


「たぶんな。エンゲに勝つ気満々だったし」


 タナトスは予選を見る限りエンゲより魔力の扱いに長けているのだが、二人の戦うところはちゃんと見れていないし、タナトスに自信があるという根拠としては弱い事だけで喋った。


 だが何となく、何となくではあるがタナトスが勝つ気がする。タナトスの自信は信用に値すると何故だか思っているのだろうな。


 全ては試合が始まってみれば分かること、今気にしても仕方ない。


 俺たちが席につくころにはすでに両者ともフィールドを歩いていた。


 タナトスが勝つこととタナトスが音も拾える広範囲な感知を行っていることに賭けて願いを呟いてみる。


「タナトス、出来る限りエンゲの手の内を明かしてくれ」


 そう言うとタナトスはこちらを見てから頷いた気がした。呟いてみるものだな。


 タナトスが俺の言葉を聞いてくれてなのか試合が始まってからタナトスは逃げに専念してエンゲの攻撃を全て避けていたのだが、タナトスがしていたのは恐らく瞬間移動。


 かなりの距離を一瞬で移動していたのに風一つ起こらなかったからそう判断したが、もし違ってフィールドの端から端までを動いて移動したうえで風を起こさなかったとしてもすごすぎる。


 最初のタナトスの避けでこれはタナトスの勝ちだなと確信してからエンゲの動き使う魔法をずっと確認していたが、エンゲは全ての属性の魔法を上位魔法まで扱えて動きもかなり素早い。


 そんなエンゲの攻撃を全て避けて、最後は魔力を放ち一撃で気絶させていたことでタナトスの異常性がよく分かる。


 てっきり師匠とエンゲとタナトスは同じぐらいのラインにいると思って行動していたのにタナトスは遥か上の領域にいるようだ。


「試合も終わったことだし、部屋に戻ろう」


「本当にタナトス君が勝ってすごかったね」


「俺もあそこまでとは思っていなかったがな」


 今日はエンゲに勝つ方法を思いつかなければいけないと思うと気が重いがとりあえず部屋に戻る。部屋に戻ってからはごろごろしながら勝ち筋を考えてご飯を食べてアリナの後に風呂に入った。


 出てきたところでどっと疲れが体にのし掛かってくる。


 師匠との戦いで疲れたんだな、今日は早く寝よう。俺は体をよく拭いて着替えてから洗面所のドアを開けて寝室に向かう。


「大丈夫!?ふらふらだよ」


 アリナの声が遠くから聞こえるような感覚があるがしっかりと聞き取れる。ふらふら歩いているつもりは無いのだがそうなのかもしれない。


 アリナが寝室のドアを開けてくれてベッドまで誘導してくれたところで俺の意識は途絶えた。

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