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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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デパートでの買い物

 起きた。


 まだこの部屋には時計が無いため外を見る事でしか時間を知る術はない。それしか無いが窓の近くには家があって外を見るには結構角度を付けなくてはいけないから面倒くさい。


 窓の外を見てみるとまだ暗い。これだと早朝なのか夜なのか分からない。結局、一階に下りて時計を確認するしかない。


 俺は黒のズボンに白のTシャツ、そして黒の上着というこっちに来た時の格好に着替えて部屋を出る。アリナはまだ寝ているだろうから忍び足で廊下を歩く。


 廊下を下りるのが一番大変だ。音を出さずに階段を下りるのはかなりの難易度。常に気を付けなくてはいけない。時々音を出しながらも階段を下りきってリビングに向かう。


 リビングに入って時計を確認すると今は早朝だった。連日早起きをすると眠いな。


 ソファーに横になって横になってみたが、眠りにつく訳にはいかず、起きていなければいけない。


 暇だから近くにあった教科書を取って読み始める。これは歴史の教科書だな。歴史の教科書をパラパラと捲ってみると知らない人物ばかりが出てくる。


 知らない人物ばかりが出てくるのは俺の知識不足だと思えるのだが、知っている人物が一人も出て来ないのは不思議でならない。夢は自分の記憶とかを元に作られていると聞くが、教科書に出てくる人たちを見た記憶が無い。


 これは夢ではない?夢の中で寝るという事に違和感はあるし、感覚がリアルで変だとは思っていた。だが、これが夢じゃないというのならここはどこだ?


 やはり、ここがどこか説明できない限りこれは夢だ。どれだけ違和感があってもここがどこかを説明できないなら夢なんだ。


 だが、夢だとしても居心地がいいからこのままここにいても構わない。むしろここにいたい。


 俺は歴史の教科書を読み込んでいく。ここの事を知っていけばこの場所に染まれるような気がして必死に読み込んだ。四分の一くらい読んだ所で足音が聞こえてきた。


 俺は教科書を元に戻してソファーに座り直す。待っているとリビングのドアが開いた。


「おはよう、アリナ」


「おはよう。ソウヤは早起きなんだね」


「別にいつも早起きなわけではないのだが、目が覚める」


 いつもはアラームが無ければ起きないのだが、最近は起きれている。早起きが習慣化し始めているのだろうな。


「環境が違うからかな?夜寝れてる?」


「ああ。夜はすぐ眠りにつけるから単に早起きなだけだな」


「なら大丈夫そうだね」


「問題ない」


 まさかこんな事で心配されるとは思っていなかった。アリナは優しいな。


「それじゃあ、朝ご飯作ってくる」


「頼む。今度は俺が作る」


「うん、お願い」


 アリナの口に合うか分からないから、お願いされても良いものを作れるとは限らない。


「口に合うかどうか分からないから余り期待しないでくれ」


「大丈夫。私は嫌いな物が少ないから。でも口に合うかどうか分からない料理ってどんなのだろう?」


「いつもの料理とは違う感じの料理だからアリナは知らないかもしれない」


「そうなんだ。楽しみにしておくね」


 期待しないでくれって言わなかったっけ?言った記憶があるのに楽しみにされるのか。しないで欲しいんだけど。


 アリナは嫌いな物が少ないらしいからメニューが制限される事はない。だが、それだと択が多すぎて困る。


 ここにある店の品揃え次第で作れるものが変わってくるから今考えても仕方ないか。味噌が置いてあれば味噌汁を作れない事もないんだがな。できれば出汁を取らなくてもいい何かも置いてあればかなり楽できる。


 ついでに地図を買いたい。外出ができるようになった訳だが、これで迷子になってアリナを怒らせれば今度こそ俺の命が危うい。俺を心配して怒ってくれるのは分かっているのだが(プレッシャー)が凄すぎるんだよな。


 この前は初犯だからすぐに許してもらえたが、あれより延びたら不味い。死亡確率が跳ね上がる。


 地図優先。


 しばらく考えているとアリナが朝食を作り終えてテーブルに並べていた。俺はソファーからテーブルに移動する。


「今日の買い物はどこに行くんだ?」


「ティーヤデパートだよ」


 ティーヤデパート?かなり独特な名前だ。そんな人の名前みたいな名前のデパートがあるなんて。日本だとそういう感じのデパートの名前は聞かないよな。日本のデパートの名前にデパートって付くところは少ない気がするし。


 海外だと普通なのかもしれない。


「どうやっていくんだ?」


「歩きだよ。徒歩十分くらいの距離」


 徒歩十分は結構疲れる。日頃運動していないからな。


「食器を片付けたらすぐに行くからね」


「了解」


 結構すぐに行くんだな。


「俺が持っていく必要がある物は何かあるか?」


「必要な物は私が持っていくから大丈夫だよ」


 それはちょっと申し訳ないな。帰りはできる限り荷物を持とう。


 それから俺は朝食を食べ終わってから食器をシンクに置いて、今はソファーに寝転がっている。食器洗いをしようとするとアリナに止められるからできていない。


 それでアリナが食器洗い中だ。


「食器洗い終わったよ。準備してくるからちょっと待ってて」


 アリナは二階にいってからすぐにバッグを持って下りてきて、今度は玄関から大きな荷物を取り出した。


「準備できたよ。行こう」


「ああ」


 俺は靴を履いて、玄関のドアを開ける。


 アリナは重そうに重そうに荷物をもって立ち上がった。重そう。


「荷物持とうか?」


「大丈夫大丈夫」


 アリナは重そうに歩いていて、大丈夫そうには見えない。やはり俺が持った方が良さそうだ。


 だが、さっき断られたしな。どうしよう。


 昔の俺は外で遊んだりしていた事があって力があった。今となっては運動をしなくなってすっかり衰えてしまってはいるが、ここは持つべきだな。


「荷物、俺が持つよ」


「ごめんね。ありがとう」


 そう言って今度は荷物を渡してくれた。やはり重すぎたようだな。


 重っ


 荷物を受け取ってみると想像以上の重さだった。俺は何とか体勢を整えて歩き始める。


「大丈夫?」


「ああ、全然問題ない」


 できるだけ平然と答えた。重いのを悟られないように平然としているように振る舞っているつもりだが、実際はどう見えているのだろうか。


 これで無理して平然としているように見えていたら恥ずかしいな。


 しばらく歩いていると大きな建物が見えてきた。垂れ幕がぶら下がっていたりして、デパートに見える。


 あと少しだ。


「だいぶ疲れているように見えるけど大丈夫?」


「大丈夫。後少しくらい問題ない」


 実際はもうかなりキツい。俺はそれでも残っている力を振り絞って何とかデパートの入り口まで来た。


「荷物持ってくれてありがとう。ちょっとここで待ってて」


 アリナは荷物を俺から受け取ってからすぐにどこかに行ってしまった。俺は近くのベンチに座って休む。


 かなり疲れた。俺はベンチでぐったりと休んでから十分くらいでアリナは戻ってきた。


「お待たせ」


「あの荷物は何だったんだ?」


「あれは色々入っていたよ。色々入っているから答えにくいかな。それじゃあ、行こう」


 俺は立ち上がってアリナと一緒に自動ドアを通った。


 うっ


 通った瞬間寒気がした。中と外の温度差でなったわけじゃないし、風邪にはなっていないからな。大丈夫か。


 デパートではまず服屋に行って服を買った。アリナが俺に自由に選ばせてくれたから俺は値段を見ながら初日と同じような服ばかりを買ったせいで、若干にアリナに呆れられた気がする。


 次に家具。俺は欲しい家具があったわけではなかったため大きな買い物はせずに安い掛け時計を一つ買った。


 最後に教科書。試験勉強をするために早めに教科書を買う事にしたようだが、教科書を中々見つけられず結構苦労した。それだけではなく色々な本に目移りしてしまったから余計に時間をかけてしまった。


 俺たちは買い物を終えて入り口に戻ってきている。


「じゃあ、帰ろうか」


「そうだな」


 行きと同じく自動ドアを通るとまた寒気がした。自動ドアの下に冷気でもでているのだろうか。


「自動ドアを通ると寒気がするのだが、何か知らないか?」


「それはね、魔力を取られているからだよ」


 魔力?何かの概念的なものか何かか?


 だが取られるとなると実際にあるのかもしれないが、魔力で何ができるんだ?炎とか出せるようになったりするかな。


 魔力によって寒気が起こるのならば、魔力が何かに影響を及ぼせるという事のようだ。そうなるとあの嘘を見抜く機械が本物である可能性が出てきたのか。


 もしそうならば、ここは地球じゃない。一応、極狭い範囲で未知の存在の魔力を研究していて、そこに来ている可能性は無くは無いが考えにくい。


 つまり、ここは異世界。異世界転移というのをしてしまったのか。


 そんなわけないか。異世界転移できるなんてどんな確率だよ。魔法なんて夢だ。異世界転移する確率と限られた地域で極秘の研究をしている確率のどっちの方が確率が高いかと言えば後者だろう。


 夢の可能性が強まったという事だろう。夢らしくない夢だという事が唯一の懸念点ではあるが。


 今度図書館で魔法についてしっかりと確認しなければいけないな。だが図書館に行けば迷子だ。


 やはり必要なのは地図。


「地図が欲しい」


「今更!?今度買っておくね」


 取り合えずアリナに頼ってみたが確かに今更だ。デパートで買えばよかった。


 地図を手に入れるまでは一人で外出できないが仕方ないか。


「地図に関してはできればでいい。ところで学校にはいつから行くんだ?」


「学校にはこれから書類を書いてそれから試験。試験が一、二週間後くらいでそれからだから結構先だね」


 結構近いな。俺みたいな人がすぐにでも入れるようにしているのかもしれないが、試験が難しいと言っていたような気がするから、そう簡単には入れないだろう。


「それまで暇だな。図書館でも行こうかな」


「迷子になるからダメ」


 自分でもダメだとは思っていたから当然アリナは止めるか。


「地図を持っていけば迷わない」


「そこまで細かく載っている地図ってある?私は余り地図を買わないから分からない」


 ガイドブックみたいなものなら詳しく載っていると思う。

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