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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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本選第一回戦 開始

「それでは本選第一試合を始めましょう。Ready Fight!」


 俺は開始と同時に後ろに下がってデブと距離をとろうとするがデブは追いかけてくる。あのハルバードに当たれば一撃で気絶しかねない。だからこそ遠距離で戦いたいのだが、見かけによらずデブは速く追い付かれはしないが距離が開かない。


 俺は魔力弾を数発デブに撃ってみるが、デブの魔力防御に阻まれて傷ひとつつくことは愚か、足止めにすらならなかった。このまま魔力切れまで逃げるのも有りだが、万が一デブの方が魔力が多い場合は俺の負け決定。


 これはハルバードが振れないほどの超近距離戦を仕掛けるべきか。


 棍が使えなくなるが事前に投げておけば邪魔にはなるまい。


 これしか無いのか。


 俺は棍をデブ目掛けて魔力を込めながら投げて、すぐに接近する。デブは棍を避けきれず当たって少しよろけたところで腹を殴る。


 おおーすっごい脂肪だ。


 俺の近距離打撃は三種類。


 普通に魔力を込めて殴る。魔力を先に動かして、魔力がぶつかってから殴る。魔力を遅らせて動かして、殴ってから魔力がぶつかる。


 普通に防御してはダメージが入るのを危惧してタイミングよく魔力を増やしてガードをする防御方法への対策として用意した戦い方だ。俺は三種類をランダムに使いながらデブに攻撃していく。


 正直、普通に魔力を込めて殴る以外の攻撃は少し威力が下がるから、あまり威力に違いは無いだろうが、少し混乱してくれればそれでいい。


 十発ぐらい入れたところで、かわされて蹴りを返された。


 それによって俺とデブの距離が少し離れてハルバードが振れる距離になってしまう。


 まずい


 全身の魔力を一層固めて防御に入るが横に振られたハルバードは俺の胸に直撃して俺は吹き飛ばされた。


 受け身を取ろうとするが肋骨のあたりに痛みが走って上手くとれずに地面に激突してそのまま少し滑る。


 俺はなんとか起き上がるがやはり肋骨が痛む。


「肋骨にひびが入ったんじゃねーか?さっさと降参しろよ。そうじゃなきゃ全身の骨が使い物にならなくなるぞー」


 確かにひびが入ったかもしれないがまだ折れてはいないだろう。


「俺を馬鹿にしておいて弱すぎるな。一撃で骨をやっちまうなんて」


 煩いな。棍はどこだ?デブは無視して見渡すとデブの近くに落ちているのが目に入った。


「ここに武器があるぞ。待ってやるから取りに来いよ」


 絶対に拾っている最中に攻撃するつもりだろうによく言うな。


「なら棍から距離を取れ」


「それは出来ないな。武器を取った後で距離をとられるわけにはいかないんだ」


 それらしい理由を言いやがって。今俺と距離を取っていることから、俺との遠距離戦は恐れていないようだからそれは可笑しい話だというのは分かりきっている。


 さっきの魔力弾で恐れることはないと判断したのだろうが、魔力の量を増やせば防御を貫けるかもしれない。


 俺は棍を取る振りをしながらデブと少しずつ距離を詰めて、魔力弾の威力が下がりすぎない距離まで近づこうとする。


 俺が棍を取っている隙に攻撃するためか少しも動かずにいる。これは狙い通り魔力弾を打ち込めるか。


 俺は念のためファフナーを召喚する準備を整えて、デブが有効射程に入ったところで魔力弾を放った。


 魔力を多めに込めて、それを圧縮してサイズを最初の魔力弾と同じにしてある。


 魔力弾を放ったところで背後にファフナーを召喚する。ファフナーは腕を伸ばす事で地面に腕をはわせて、棍を掴んだ。


「そうはいくかよ」


 デブは魔力弾を受けて少々腹が凹んでいたがあまり効いていないようで、棍を踏んでとらせないように対策をとっている。


「ちょっとお腹を凹ませてあげようと思ったのにもう出っ張っているじゃないか」


「余計なお世話なんだよ」


 キレながらデブはこちらに向かって走ってきた。そうなれば足は棍から離れるわけでファフナーは棍を手に入れる。


 俺の方はどうにかハルバードを避けなきゃいけないわけだが、また横に振ると一点賭けの読みをして避ける用意をする。後はタイミングよく避けるのみ。


 ハルバードが振られたタイミングで体を反って、避けた。


 空ぶったデブの背後からファフナーが棍を振り下ろして頭を殴る。流石にそれはダメージが入ったようでよろけたところを頭を俺が殴った。


 今度は連撃用に魔力を分散せずに一撃で決めたため、デブは後ろに少し飛んで行く。


 飛んで行ったデブの手にファフナーが腕を絡ませて腕を捻ってハルバードを奪い取った。


(完璧だファフナー、後は逃げていろ)


 本選ではフィールドと観客席の壁との間は埋められているため、捨てることが出来ないのが惜しい。ファフナーがちゃんと逃げていることを確認するためにファフナーの方を向くと、しっかりと壁の方まで走っている。


 余所見をしていた俺の腹に大量の魔力が衝突した。


 ハルバードがぶつけられた時は後ろに跳んで威力を弱めようとしたのだが、今度は出来ずにまともに受けてしまう。意識が少し遠退いたがすぐに引き戻して、次のパンチはしっかりとガードしながら後ろに跳んだ。


 俺は地面にうつ伏せになっている。


「惜しかったがこれはもう俺の勝ちだな。まともに一発入っちまったんだからな」


 確かに厳しいかな。


「喧嘩はそっちから売ってきたんだから何か奪い取らなきゃな」


 俺は確かに嫌みを言ったが喧嘩を売ったのはそっちでは?


「あの女を奪い取ろう。どうせお前の顔に釣られてきた売女だろう」


 は?

―――――

 俺は元の世界では暗くて人と関わらずに毎日同じことを繰り返しながら生きてきた。だけど、今は少しづつ人と関わる回数が増えてきて初対面の人ともまともに話せる程度まで俺は人と関われるようになっている。


 その変化がもたらされたのは、ここが異世界だからじゃなくてアリナと過ごしてきたからなんだと確信している。だからアリナは恩人であり好きな人なんだ。


 そんな人を侮辱されて俺の中で何かが切れたんだとこの試合を振り替えれば思う。


 デブのあの発言から俺は完全に冷静さを失っていたのでほとんど思考していなかった。それでも記憶はしっかりとあるのでこれから冷静さを欠いたら自分がどうなるのかということを覚えておくために思い出しておこう。


 デブの発言で怒っていた俺だがまだ少し考える頭が残っていたので自分の聞き間違いの可能性を考えた。


「もう一度言ってみろ」


「あの売女は俺がもらい受けようと言ったんだよ」


「そうか」


 ここで俺は魔力制御が出来ていないので大量の魔力が放出されている。俺は一歩ずつ確実にデブとの距離を縮めていきデブの前に立つ。


「何だ!?この魔力は。何なんだ!」


 そう言いながら俺に向かってデブが殴ってくるが俺はその腕を掴んで捻りデブの右腕の骨が折れた。


 体外に魔力を放出しているお陰で全身に魔力を回しやすく、質量の無い筋肉も使って大幅に筋力が上がっていたようだ。上がったのは筋力だけではなく、脳も活性化しているような気がする。


「がああああああああああああ」


 デブが叫んでいるが無視する。デブは叫びながらも後ろに逃げようとするが後ろに転んでしまった。


 デブは早々に転んではしまったがそれでも俺から数歩の距離まで逃げれたので後ろに座りながら下がろうとする。


 俺が目の前に着くころにはすっかり息を整えていた。


「すまなかった。審判、きけっ」


 デブが棄権しようとしたのを聞いて俺はすぐにデブの首を絞めた。


 ここでなら殺さない限り様々な事が許される数少ない場であることを怒りながらも分かっているのだろう。


 首を絞めすぎて気絶しないように十秒ぐらいで手を離した。


「ゼーー、ハーー、ゼーー、ハーー」


 デブが俺の手を抑えながら過呼吸になっている。息を吐けば喉を絞めやすくなるというのに、呼吸しようと必死だ。


 そんなデブの腹を思いっきり蹴り飛ばす。


 中々酷いことをしているが俺にそんなことを考える優しさなどあの時は持ち合わせていない。デブはまた俺と距離が開いたが再び棄権をしようとするつもりは無いようだ。


 棄権のためには審判を呼んでから棄権の旨を伝えなきゃいけないからどう頑張っても邪魔が可能なのをデブは火事場の馬鹿力的に脳をフル回転させて諦めたようだ。


 よく酸素がすくない状態で目先の保身に走らなかったと思う。

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