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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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試合開始前まで

「いやー、ソウヤがあんなことを言うなんて驚きだよ」


「師匠、見てたんですか」


「ああ、声をかけようと思っていたところで騒ぎになったからな。ただ、あの男は強いぞ。本選に出るのは間違いないだろう。でも、ソウヤが勝てない相手ではない。所詮、本選に上がれる程度とでも言っておこうか」


 師匠が言ってくれるなら少しは安心できる。だが、勝てる相手と言わないことから確実に勝てる相手とも言えないということだろう。


 油断はできない。


「もし負けたら敵討ちお願いしますね」


「ああ、任せておけ。必ず勝つ」


 これで安心できる。ただ、出来れば自分の力で勝ちたい。


「それと運がいいことに今日は立っていても問題ない」


「普段なら問題があるんですか?」


「足が疲れるだろ。だが、今日はすぐにDブロックまで進むだろうからな。すぐに席が空いてアリナは座れるようになるだろう」


 すぐに試合を終わらせるほどの強者がいるということか。


「それは楽でいいですね」


「そうだな。それでは私はこれで。じゃあな、アリナ、ソウヤ」


「じゃあね、ブレイダお姉ちゃん」


 恐らく、師匠の話は俺のDブロックまでだから、強者が三人以上いることが確定した。


「お待たせしました。予選Aブロック出場選手、入場です」


 司会の声が爆音で流れてくる。


 ようやくか。


 真ん中の試合をするフィールドに続々と選手が足を踏み入れる。


 今回のフィールドは二層構造。外側と中央が階段で繋がっている以外は、上の階層と下の階層の繋がりは中央の太い柱だけだ。


 フィールドはコロシアムと接地していないので、この隙間が場外となるが、場外のすぐ下には水が敷いてある。


 この水に触れればアウト。逆を言えば、触れるより先に戻ってくればセーフだ。


 そのフィールドの決められた位置に選手が移動しているのだが、一人明らかに雰囲気が強者なやつがいる。


 全身を白の服で身を包んでいて、白い髪を腰あたりまで伸ばしているやつだ。


 魔力の感じからこいつは強い。こいつは勝ち残るだろうな。


「全員所定の位置に着いたようなので、私から開始の合図をさせていただきます。Ready Fight!」


 相変わらずの爆音で開始の合図が告げられたと同時にあいつは片手を掲げて指を鳴らした。すると爆風が観客席最後尾にいた俺にも届き、気づいたころにはあいつ以外の全ての選手は場外に落ちていた。


 強い。


「勝者、エンゲ選手。一人勝ちは前代未聞。今回の序列戦、波乱の予感がするぞー」


 音量がでかすぎるんだって。


 いつか鼓膜が破れそう。


 そんな爆音のなかでもエンゲの名前はちゃんと拾った。タナトスが戦う予定のエンゲだろう。


 タナトスが強いと言っていたが、これほどまでとは。だが、エンゲに勝てると言ったタナトスはどれほど強いのだろうか。


 水に落ちた選手の回収が終わると次の試合が始まった。


「Aブロックが想定よりかなり早く終わってしまったので、予定の時間よりかなり繰り下げてBブロックを開始します。選手入場」


 選手の中にタナトスがいる。


 お手並み拝見だな。


 俺に背を向けながらフィールドの中を歩いているタナトスが振り向いた。今、目があったような気がしなくもない。


 この距離で気づかれたのか?


 俺の魔力感知の範囲は十メートルぐらいしかないのに、この距離は百メートルなど裕に越えているぞ。


 すでに強いのが分かってしまう。


「それでは選手が定位置につきましたので、Ready Fight!」


 開始の合図と同時にタナトス以外の選手がフィールドから消えた。よく見ると、水に大量の人が浮いている。


 一瞬で全ての選手を予備動作なしで、動かしたのか。


 化け物すぎる。


 魔力は基本的に体と同時に動く。だから、エンゲは指を鳴らすような動作をして、それで動いた魔力を使う事で魔力を扱いやすくしたのだろう。


 特に大量の魔力を動かす時には予備動作なしでは厳しいのだが、タナトスは成功させたのだ。


 俺には到底真似できない神業。そう表現するのが一番適切だろう。


「ま、またしても一人勝ち。しょ、勝者タナトス選手」


 司会がめっちゃ驚いているよ。


「司会でも驚くか」


「あれは仕方ないよね。ところであれが前に言っていたタナトス?」


 そんなこと言ったっけな。言ったとしたら最初の病院の時か。


「そうだ。変なやつだとは思っていたが、こんなに凄いやつとは思っていなかった」


「変なやつと凄いやつが等式で結ばれていない?」


「凄いやつは大抵どこか変だろ」


「一理あるね」


 ただただ変なやつもいるから要注意だけどな。


「次ブレイダお姉ちゃん」


 知らなかった。それなら次も早く終わりそうだ。


「そろそろ俺も準備しないとな」


「そうだね」


「アリナは空いた席に座れよ」


 選手が座っていた分、結構空きがある。


「でも、戻ってくるかもしれないし」


「負けているのに戻ってくるような図太いやつはそういない」


 ついでに水浸しになっているから乾くのに時間がかかるだろう。


「さあ、予定よりもかなり早めのCブロック。来るのが遅かった人には現状が一切分かっていないでしょうが、説明する時間はありません。選手入場です」


 なら言うなよとつっこみたいところではあるが、師匠を探さなくては。


 あれ?オーウェンか?オーウェンもCブロックか。なら絶対に勝ち残る。


 師匠のすることは一つしかないから、取るべき行動も一つのみ。それが分かっているのは十分なアドバンテージ。


 師匠とオーウェンが残るな。


「選手が所定の位置につきましたので、Ready Fight!」


 相変わらずの音量。もう馴れてきた。


 それより試合に集中しなくては。師匠は上段にいるのでよく見える。


 師匠が端まで駆け出して、端に着いた瞬間に剣を大きく横薙ぎ。

すると爆風が流れ、選手たちが反対の壁にぶつかってから落ちていく。


 上段に残っているのは師匠のみ。


「強い。あれはブレイダ・ペンテシレイア選手です。またしても試合がすぐに終わってしまうのか」


 師匠は端にある階段を無視して一気に下段まで飛び降りて、再び剣を振るう。これによって上段と同じことが下段でも起きた。


 一つ違う点を挙げるとすれば、下段では師匠以外に生き残った選手がいる。


 オーウェンだ。


 師匠ならどうせこうすると剣道場に通っていた人間なら分かるからこそ、オーウェンは最初から全力で防御していた。


 他の選手は突発的なことでちゃんとした防御が出来ていなかったが、オーウェンは魔力をしっかりと固めていたし、剣で受け流す構えを最初からしていたので、防御出来ていたのである。


「勝者、ブレイダ・ペンテシレイア選手、オーウェン・ルイス選手」


「それじゃあ、行ってくる」


「頑張ってきてね」


 次は俺が出る。


 観客席から移動して選手控え室まで移動する。観客席から出てすぐなので迷子になることはない。控え室に着くとすでに数十名程が壁の方に集まっている。


 選手の初期位置が張り出されているのだろうな。初期位置は運営がランダムで決めたもので、初期位置といっても座標を決められるわけではなく指定の範囲に入った状態でスタートするということだ。


 初期位置によって入場する位置が変わってくるのでこれから移動しなくてはいけない。だから早く確認したいのだが、人が多く叶わない。


背伸びをしてやっとのことで紙を見たが、番号ごとに張り出されていて探すのに苦労する。


 下段の五番


 下段の五番の入場位置は当然下の階だな。


 急いで移動して階段を見つけて、入場位置を探すためにぐるっと一周してようやく見つけた。


「ガキが相手か?楽でいいな」


 入場口のところにいたおっさんが俺を見て笑っている。もう俺も十八何だがな。


「年を取っているよりは若い方がいいと子供ながらに思うんですがどうですかね?」


 そう言うと周囲がどっと笑った。


 「そうに違いない」と周囲が口々に言う。


「選手入場」


 和やかだった空間が一気に重くなる。この空気感の中で勝たなくてはいけない。そう思わせる重さだった。

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