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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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試合の日の朝

「ソウヤ、朝だよ。起きて」


 アリナが起こそうとしてくる。夢の中ぐらいゆっくりさせて欲しいものだが、駄目なのだろうな。そう思っていながらも起きる気はない。


 まだ寝転がっていたいのだが、俺の体は揺らされて目が覚める。


「すぐに起きてよ」


 あれは現実で言われたのか。


「もう朝ご飯出来たのか?出来ていないなら手伝うが」


「もう作ったよ。どうせ手伝おうとすると思ってね」


 次からはもっと早く起きなければな。


「今日からだけど準備は整っているの?」


「ああ、当然だ。ルールも全部覚えたし」


「結構な量あったよね。あれ全部?」


 そんなたくさんでも無かったと思うがあの程度なら。


「全部暗唱できる」


「記憶力いいね。ずっと授業免除になるわけだ」


 教科書を覚えればいい問題が多いからな。頭の中でルールの穴を探しながらアリナのご飯を味わう。


 ルール上、相手を殺すことは禁止だが、それを審判は事前に止められるわけがないので、うっかり殺されることもあるかもしれない。そうなってしまえば当然、アリナの手料理はもう食べられないので、いつも以上に味わって食べる。


 俺が死んだらアリナは泣いてくれるだろうか。泣いてくれたら嬉しいな。それで俺が生きてきた意味が生まれると思う。


 縁起でもないことを考えていてもしょうがないか。


「今日も美味しかったよ」


 感想を伝えてから皿を流し場まで運ぶ。蛇口を捻ろうとしたところでアリナが来た。


「私がやっておくから着替えてきたら?」


 これはイントネーションの感じに合わせて書き起こしたら疑問系ではあるが、実際は決定事項の通達だ。


 断ることは不可能。


 着替えと鎖帷子を取って脱衣所に行って着替える。重量を最低限減らすために付けられる防具が制限されてしまうことでかなり心許ない。


 己の魔力で身を守ることが基本ではあるが、いざという時の保険は欲しいものなのだ。その上今日は審判の目が届きにくいバトルロワイヤルのため不安がある。


 場外に落ちた場合と戦闘不能になった時に敗北となるがその判断は審判がするため、戦闘不能の判断が遅くなればなるほど危険が増える。


 安全を取れば弱くなり、強さを取れば安全性に欠けるというジレンマ。


 だが、無傷で勝てば問題はない。故にいかに潜みながら戦えるかが鍵になる。


 そんなことをすれば何か言われるかもしれないが、後の一対一で実力を多少なりとも示せば黙るだろう。明らかな格上との戦いにならなければいいのだがな。


 そんなことを考えながらもそくささと着替えを済ましてリビングに戻る。すると、アリナはもう出掛ける用意を完全に済ましていた。


「もう行くのか?」


「場所とりに行ってくるよ」


 俺はまだ棍の手入れが終わっていないからすぐにはいけない。


「ファフナーを連れていけ」


「魔力消費するんでしょ?これから試合なんだから温存しなきゃ」


「場所とり用に姿だけを作れば大して魔力を消費しないから試合までに回復できる。これで二人分の確保がしやすだろう」


「ソウヤも見るの?」


 それは当然だろう。誰が強いのかの把握も必要だし。


「試合までの時間に見ておきたいんだ」


「分かった。それならファフナーを連れていくね」


 俺がファフナー人形を召喚してからアリナに渡すと、アリナはすぐに部屋から出ていった。俺も早く準備しなければな。


 寝室のベッドの横に立て掛けてある棍を手に取る。


 棍に少しだけ魔力を流してみて魔力の流れを確認したが、流れて戻ってくる魔力の量からどこかに異常はないようだ。


 魔力が漏れだしていたり通りが悪いなどの異常があると、必要な魔力量が増えたりすぐに効果が発揮できなかったりする。


 こんなギリギリで確認しても、すでに代えは利かないのだが、異常を知っておけば対策も取れるというものだ。だが、異常が無かったからその必要もない。


 棍の確認を終えた俺は腕にスカーフを巻いてピンで留める。


 これが無ければ出場も出来ない。


 スカーフが掴まれないように隙間が無くなるように巻いてあること、外れないことを確認して準備終了だ。


 俺は部屋を出て鍵をかける。後で鍵をアリナに渡さなければいけない。


 試合中にうっかり落としたりすると戻ってこない可能性があるからアリナに任せておく。アリナなら任せても問題ないだろう。


 まだ試合開始までには時間が残っているのでゆっくり歩きながらコロシアムに向かおうとするのだが、アリナがどの辺りの席を取ったのか知らないことに気がついた。


 コロシアムは結構な広さがあるのだが、見つけられるだろうか。ファフナーは今は中身が無いような状態だから位置を探れない。


 髪の毛の色で判断すればいいか。


 この世界の人の髪の色はそれなりにあるから黒と白の組み合わせはそう多くはないだろう。


 見つけやすくはあるだろうが人数が多いに決まっているし時間がかかるのは明白から、俺はゆっくり歩いていたのを早歩きにして急いでコロシアムに向かう。


 俺はこの前無断でコロシアムに入ったので観客席までのルートは把握している。俺はコロシアムに入ってから、観客席の一番後ろまで迷うことなく移動してきた。


 黒い長い髪と白い少し長い髪を見つけ出そうと移動しながら観客席の方を見るがどこも満席であり、背の高い人が邪魔で良く見えないことがある。


 黒い長い髪と白い少し長い髪を見つけるたびにその人の近くに行き服装を確認する。それを数度繰り返してようやく見つけることができた。


 かなりの時間待たせてしまったようだ。


 食べ物や飲み物を売りながら歩いている人からジュースを一個買ってからアリナのところに向かう。


「待たせたな、お詫びにジュース」


「そんなこと無いんだけど、有り難く受け取るよ」


 ジュースを渡しながらファフナーの召喚を解除して座ろうとすると、横からそこに太った人が割り込んで座った。


「あれ?座ろうとしてた?すまんすまん。でもこういうのは早い者勝ちだからな」


 謝るぐらいならどけ。早い者勝ちなら俺たちの方が早く場所を取っていた。


「お嬢ちゃん、狭いからどいてくれる」


 は?自分で早い者勝ちとか言っておきながら先にいた人をどかすのかよ。自分が太っているのが悪いんだろう。


「そうですか」


 アリナは立たなくてもいい。


 そう思ていたのだが、アリナが立ってしまったので、もう立ち去るしかないか。その時、天から降ってきたかのようにある言葉を思いついた。


「自分たちは自重で膝が痛くなる心配がないので、自分たちは立っている事向いていますから座るのは諦めます」


 少々大きめの声で言ったからか、周囲から笑い声が聞こえてくる。


「じゃあ、行こっか」


「待て、お前出場者だな。何ブロックだ?」


 スカーフでばれたか。


「D」


「俺はEだ。せいぜい本線まで上がってくることだな。そしたら俺様が直々にぼこぼこにしてやるよ」


「そうですか。楽しみにしています。この人数の前で宣言したのを後悔する姿をね」


 本選は両方の同意があれば指名で戦える。それで戦う気だろう。


「後で怖くなって逃げ出しても許してやるよ」


「あなたの言った言葉が全てあなたに帰ってくるので言葉は慎重に選ぶことをお薦めします」


 これ以上話しても意味がないので俺は立ち去る。


「あんなことを言っても大丈夫なの?」


「そこはちゃんと考えてあるさ。いざという時は師匠の威を借ればいいとね」


「ずる賢いね」


 あれなら煽れば簡単に師匠との勝負に持っていけそうだからな。アリナをどかしたことを後悔させなければいけない。


「ソウヤが怒ったと思ったけど、今回は怒るほどのことでも無いよね」


「アリナをどかす道理があるものか」


「私のために怒っているなら気にしなくていいよ。ソウヤが立ったから私も立とうと思っていたし」


 それでも俺はあいつの態度が気に食わない。


 アリナにまで何か言わなければ心の中で愚痴っていただけで済んだのに自分でもあんなことを言ってしまうとはビックリだ。

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