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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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アーサーの役割

「久しぶり」


「そんなに久しぶりじゃないだろうけど、久しぶり」


 一、二週間ぶりぐらいだから実際久しぶりではない。だが、序列戦のことを考えすぎてか数ヵ月ぶりに会った感覚だ。


 アーサーと軽く挨拶を交わしてから歩き始める。


「部屋はもう決まっているのか?」


 金持ちぐらいしか事前予約はできないが勇者家なら出来るかもしれない。


「うん、コロシアムのVIP用の部屋が用意されているよ。勇者という肩書きのおかげでね」


 俺たちの国では良い感じでは無かったけど、他の国なら厚待遇なんだな。


 俺たちの国は他の国に比べて身分差別が圧倒的にあるという話だったから、ぎりぎり貴族みたいな勇者家は肩身が狭いだろう。


 俺には貴族と会う機会が剣道場でしかなかったため、差別を感じない。剣道場の貴族は話しかけてこないだけだし、師匠はフレンドリーだし、アリナやアーサーは優しいからな。


 思い付いたのは段差だけだ。


 身分によって住める高さが違うのは差別に当たるのだろうか。


「ソウヤはもうエントリーしたのかい?」


「師匠にしてもらったぞ。アーサーはしないのか?」


「僕には勇者っていう肩書きが一応あるから、序列(ナンバーズ)に入らなくても問題ないからね」


 勇者にも世界政府から仕事が出されて成功すれば報酬を貰えるらしいが、ナンバーズの方が給料良いみたいなのに。


 ノルマが無い分勇者の方が楽かもしれないが、アーサーは人助けさえできればいいとでも思っているのだろう。


 そういう完全な善人なところがアーサーのイカれているところだ。


 自分の利益を省みずに人のために命をかけられるのはイカれているとしか言い様がない。だからこそ、勇者として頑張れているのだろう。


 今は大して活動していないけど。


「公式な場でアーサーと全力で戦いたかったな」


「僕は遠慮したいな。公式な場で勇者が負けるわけにはいかないからね」


「私は見たかったけどなー」


 アリナは人の頑張っている姿が好きだもんな。それを見て自分も頑張ろうと思っていつも頑張れるアリナも充分すごい。


「アーサーは何で来たんだ?」


「もう少し言い方を考えてよ。勇者として解説役で来たんだけど特にすることが無さそうなんだ」


 お前来るんじゃねーよ的な言い方になってしまったな。


「解説役って実況の人の隣に座って喋るみたいな?」


 俺が聞きたいことをアリナが代わりに聞いてくれた。


「そうだと思って話を受けたんだけど、詳しく聞いたらどうやらVIP相手に解説をするみたいなんだ。疲れそうだよ」


「VIPってどういう人たちなんだ?」


「企業のトップの人たちとかの世界政府にお金を融通している人たちだよ。そんな社会の荒波を征したような人たちの相手なんて嫌だよ」


 狐の相手は苦手みたいだな。太っていたら狸なんだが、そういう人たちは体に気を使っているだろうから太らないだろう。自分が長生きすることが一番利益を生むような人たちだからな。


 そう考えると凄い狐だ。


「私、世界政府について詳しくは知らない」


「俺もだ」


 アリナが知らないことを俺が知っているわけがないと思ったが、こっちに来てそれなりに経つのにそれは不味いな。


「アリナも知らないなら解説しよう。世界政府っていうのは世界の国々をまとめるためにできた機関なんだ。だからどこかの国で問題が起これば世界政府を中心にして動く。その財源はさっき言った人が融通してくれたお金だけじゃなくて、それぞれの国の税金の一部を徴収しているんだよ。その徴収したお金に見合った働きを世界政府はちゃんとしているから徴収に文句は出ないし世界政府に多くの国は頼っている。その働きの一つがナンバーズ。めっちゃ強い何でも屋として働いているんだ」


「知らなかった」


「ソウヤは知っておこうよ」


 今度覚えていたら調べよう。


「VIPの人たちのお金を使って増設された部屋で暮らすのは心苦しいよ。勇者家は一文たりとも出していないのに使うなんて」


 そういうのを聞くと本当に昔は戦うためだけの島だったんだなって思う。今はすっかり薄れてしまっているがな。


 俺たちはアーサーについていきコロシアムの中を上っていき最上段についた。


「一番上とはな。煙と何とかは高いところに上るようだが、それに当てはまる人が偉くなれるわけがないのにな」


「成功した人の高いところは高過ぎるよね」


 なるほど。


 中途半端な高さに上るのが駄目なのか。安全に高いところに上るのが凄い人。


「一応ここが僕の部屋だよ」


 アーサー・ジークフリード様と書かれた紙がドアの横にある。


「どれだけ広い部屋何だろうな」


「そんな広くないと思うけど」


 そう言ってドアを開くアーサー。


 玄関を抜けてリビングに行くと奥行きと横の幅がかなりある。


「広いな」


「広いね」


「広かったね」


 アーサーがこれを広くないと言い出したらどうしようかと思っていたが、アーサーも広いと思ったようだ。


「さすがVIPルーム」


「これは王族レベルの部屋じゃない?」


 元貴族のアリナなら貴族や王族の部屋の広さが分かるんだ。


「王族レベルでも厳しいんじゃないかな。せめて王族の本家ぐらいじゃなきゃ」


 アーサーはアリナより王族に詳しいようだ。アーサーは今も貴族だからな。


 世界政府のVIP凄すぎる。これを用意させられる程の金を融通できるレベルの金持ちということだろ。


 もはや本当に狐なのでは?アーサーは本物の狐の相手をするとは、大変だな。


「アーサーはこんなに良い部屋を用意して貰ったんだし、解説頑張らなくては」


「そうだね。これに見合った働きをアーサーはしなくちゃね」


「あれ?二人ともどうしたの?言葉では応援しているのに気持ちが真逆に思えたんだけど」


 アーサーよ、それは間違いじゃない。


 三人で一緒に頑張ってきたと思っていたのに一人だけ良い思いをしやがって。こんな所に泊まれるなこんな所に泊まれるなんて良すぎるのだから、その分苦労をしてもらわなくてはな。


 という風を装っているだけで、実際には思っていない。


「部屋、たくさんあるし、二人も泊まる?」


「「いや、結構」」


 そうなってしまえば俺たちが苦労なしで良いところに泊まることになってしまうので、却下だ。


「ここ、本当に広いな。一生かかっても泊まれそうにない。それに見合った働きをアーサーなら出来るさ。俺は明日の準備があるから戻る」


「それなら私も。アーサーならきっと出来るよ」


「最後にハードルを上げないでよ。どう考えても無理でしょ」


 俺はアーサーの悲痛?な叫びを聞きながら玄関に行く。そして、アリナと一緒に部屋を出た。


「アーサーは大変だな。アーサーはハードルが高いほど頑張れるから大丈夫だろうけど」


「そうだね。アーサーなら上手いこと凌げると思うよ」


 確かに乗り越えるよりも凌ぐの方が適切な表現だろうな。


「戻ったら何するの?」


「ルールの再確認ぐらいしか無いな。特にすることは無いんだ」


 あの流れのまま部屋から出る言い訳としては完璧な言い訳だったと思う。


「私は今日中に明日以降の分の作り置きをしなきゃいけないから料理するね。明日からは朝から座席取りをして、戻る時間は分からないからね」


「無理して見に来なくてもいい。負けたら格好悪いし」


「負けても格好悪くないよ。これまで努力してきたのは知っているよ。努力は必ずしも実を結ぶものじゃないけど、それでも努力できることは凄いことだと思う。だから胸を張って歩いて。どんな結果だとしてもその先には得られるものがあると思うよ。それをカッコ悪いとは口が裂けても言えないよ」


 負けても得られるか。アリナは必ず励ましてくれる。俺はいつも俺を支えてくれるアリナのために勝ちたいんだ。

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