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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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暇を持て余す

 タナトスに久しぶりに会ったがやはり変なやつだ。雰囲気とかに何か違和感を感じてしまうが、焼き肉を食べに行けば違和感の正体にも気づけるだろう。


 違和感はあれど仲良くなれる気はしている。俺とタナトスなら必ず息が合う瞬間が生まれると確信した。


 だが、これと試合は別の話だ。もし俺が戦うことになっても手加減などする気はないし、する余裕もないだろう。


 試合では格上に勝つことに最も意義があると俺は思う。だからこそ格上の師匠やタナトスに勝ちたい。


 そのためにも剣では勝てないオーウェンに様々な技を駆使して勝たねばならない。オーウェンの全力を俺はまだ引き出せていないから全力を引き出せてからが勝負だ。


 俺は今、予選を通過できる前提条件のもと考えていたが、予選のバトルロワイアルで勝ち残らなければいけない。俺は魔力消費が多い技しか持っていないから魔力無しで戦うしかない。


 予選通過がそもそも難しいのか。


 ああ、どうしよう。


 悩みながら帰っているとすでに部屋の扉の前に立っていた。もう帰って来たのか。


 俺はドアを開け、部屋に入っていくと、リビングにはアリナがいた。


「帰るの遅かったね。それにしても明後日の序列戦どうしようかみたいな顔してどうしたの?」


 俺は今そんな顔をしているのか?俺は何て情けないんだろうか。自分の悩みが顔に出てそれを悟られて。


「悩みがあるのは恥ずかしいこと何かじゃないよ。それはちゃんと考えている証拠だよ。だから悩みがあるなら話して。力になれる保証は無いけど話せば楽になれることだってあるし、私頑張るからさ」


 何で俺の考えていることが分かるんだ?


 俺にだってプライドはあるのだが、アリナの前だったら捨てられるし、アリナの言うことは正しいのかもしれない。


「明後日の序列戦勝てるかな?って思ってな。考えても仕方ないって分かっていてもどうしても考えてしまうんだ」


「私はまだ序列戦に出る理由をちゃんと知らないけど、負けても何かを失うわけじゃない。必ず一緒に暮らせる場所を私が作るから気楽にやろうよ。怪我しないように気を付けてね」


 一緒に暮らせるようにしてくれるなら気楽にやってもいいかもじれない。でも、そんなことを言ってくれたアリナのためにも勝たなければな。


 負けるかもしれないじゃなくて、勝つ。その覚悟が欠如していたな。


「アリナ、ありがとう。心が軽くなった。俺は勝つ」


「あれ?私は適度に頑張ってねみたいな話をしていたつもりだったんだけど…。まあ、いっか。ソウヤが元気になったみたいだし」


 大事なのは勝つつもりで挑む心。その心があれば戦える。


「明日も暇何だけど」


「明日は何しようか?またトランプ?」


 トランプは今日散々やったから明日までやる気はそんなにないのだが、他にすることもない。


「アーサーに会いに行こうよ」


「もう来ているのか?」


「今日から明日にかけての船で来るみたいだから明日の昼にはいると思うよ」


 明日の昼か。それまでならトランプで持つな。


「それじゃあ、私は寝る」


「今日はいつもより早いな」


「今日はもうちょっと眠いの、おやすみ」


「おやすみ」


 アリナは寝室のドアを開けて寝室に入っていく。俺一人になってしまった。今すぐ寝に行くのはアリナを追ってベッドに入ったみたいであまりしたくない。


 だがやることは読書かトランプぐらいしかないのだ。トランプの一人用ゲームで知っているのは、ピラミッドだけなのだが成功した試しがない。


 あとは読書。ただ、今は読書をする気分じゃない。


 この世界でテレビが普及していれば簡単に暇を潰せる。だが俺たちが書いた論文を書いて一年以上経ったが、一般家庭における値段を考えるとまだまだ高い。


 テレビを作るのに大量の魔石が必要であり、作るのにも時間がかかる。そうなると、そんなものを事業にする会社は現れないので放送される番組がない。


 するとそんなものを買おうと思う人がいないのでテレビの需要は低くなる。そんな感じだからテレビを大量生産しようという会社もない。


 その結果超大画面で空中に映し出すテレビが生まれた。


 というのも家庭用にテレビを作っても売れるわけがないので、大衆向けにでっかいのを作ろうとなったわけだ。大衆向けテレビはスタジアムや闘技場で使用されている。


 遠い席の客には中央の人など見えるわけがないので、チケットが売れなかったのだが大衆向けテレビの導入により、遠くても映し出されるためよく見えるので遠い席でも買う人が増えたのだ。


 そういうわけで、テレビは家庭用には発展してくれなかったので今暇なのである。


 こういう時のために頑張ってテレビを作ったのにその努力は無駄になり、努力せずに作ったトランプの方が暇潰しになっている。


 今度暇にでもなったら量産型テレビの開発をするぞ。他人任せにしていては望み通りの結果など得られない。


 制作者である俺が自らテレビを改良して一般家庭用のテレビを作る。そうなれば番組を作ろうとする企業が出てきて番組ができて、それに伴って複数の企業でも番組が作られてバリエーション豊かな番組が放送される。


 するとテレビの需要が高まり、また新たな企業が番組を作るといういい循環が生まれるはずだ。最終的にはテレビの値段競争になって、どんどん値段が安くなり俺たちが買えるようになる。


 その結果俺が暇を潰せるようになる。という俺が得をするために他の人にも得をしてもらおうという計画でした。


 これが実現するには俺が序列戦で負けて、学校卒業後に研究室に入るしかない。すでに論文が掲載されたことのある俺になら、しばらくの間は研究費を出してくれる研究室があるはずだ。


 そこで結果を出せれば研究費と給料が上がる。出せなければ研究室を追い出されるという、結果が全ての仕組みになっているのがこの世界の研究室だ。


 社会に求められているのが結果だというのがよく分かる仕組みだが、個人に大事なのは過程だと俺は思う。


 何故なら人には次があるからだ。


 過去にやってきたことと全く無関係という物事はそう多くない。たいていの場合に何か共通点が存在している。その共通していることがある次に生かせるのは結果ではなく過程だ。


 結果だけで応用することができる天才などこの世にいるか怪しいほどの才能だろう。なので凡人は過程を応用して使っていくのだ。


 そうやって色々なことを応用して、それを組み合わせることで次の結果を生む。


 結果だけを求めるというのは、過程を知らない難しい数学の問題の答えだけを見て、類題を一から解こうとするようなものだ。


 凡人は過程を積み重ねて結果を得ていく。他人に求められるのは結果というのが世知辛いところではあるが、まあ、自分が天才だと思うなら過程など忘れて結果を求めればいい。俺には到底出来ないから羨ましい。


 俺は[吸収体]で才能を得ることは出来ても、それは付け焼き刃でしかなく、天才には及ばないのだ。それなのに俺は役に立つ才能など持ち合わせていない。


 まるで俺の才能が分散しているかのように、たいていのことが人より少しできるだけだ。そうなると、必ず最低一つは負ける。圧倒的に負ける。


 師匠やオーウェンには[吸収体]を使っても才能の差がある。だからといって、アーサーのような勇気もないしアリナのような優しさもない。


 そんな俺だからこそ、この序列戦で結果を残すことに大きな意義がある。


 一つ一つの才能では遠く及ばないような相手に才能の量と才能の生かし方で勝つことで、俺は自分の才能に意味を見いだせるようになれるはずだ。


 それは俺の持っているものが無駄じゃないんだと俺に示せて、きっと俺の自信に繋がる。そうやって少しずつ少しずつ自信を付けていって、最終目標はアリナに告白することだ。


 俺は真夜中に何を考えているんだ。

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