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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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意外な人物

 暇・・・


 後二日もあるがすることがない。


「暇…」


 何かいい案がないかアリナに聞くために口に出す。


「私は暇じゃないの」


 それは見れば分かる。アリナは今、家計簿をつけているのだ。アリナは今は遊ぶ暇がないようなので、俺は本を取り出して読み始める。


 本を開いたところでアリナに質問をされる。


「本当に本好きだよね。何で本を読むの?」


 何で?と何故聞く必要がある。


「アリナも本を読むじゃないか。聞かなくても分かるだろう」


「面白い以外の答えをソウヤは持っているのかな、と思ってね」


 面白い以外の答えを聞きたかったのか。


「俺が本を読む理由はね~、経験かな」


「経験?どういうこと?」


 聞いてくれるのを待っていました。


「自分の人生は一回きりだけど、本の世界にも人生があってそれを読めば人生を疑似体験できるだろ。それを積み重ねていけば一回きりの人生だとしても経験した人生の量は数えきれない程になる」


 実際には魂は輪廻するみたいだけど体も記憶を失って、別の生物になる可能性が高いというのに、それで人生二回目とは言えないだろう。だから自分の人生は一回きりとするが、物語の中の人物も人に作られたものではあるけど人生があるのだ。


 その人生は生きている人間にある、ぼーっとしているような無駄な時間が省かれている。


 そのため人は短時間で疑似体験できる。


「経験してどうすんの?」


 鋭い質問だな、難しすぎる。


「え~とな、経験することで色々な考え方を持てるようになれると思うんだ。そうなれば自分が選択をする時に選択肢が増えてくれるはず」


 色々な考え方を持つということは色々な視点を持つことと同じだ。


 その視点を使えば一つの物事だろうと様々な角度から物事が見えるため、一面しか見えていない時よりも情報量が増えて選択肢が増えることに繋がる。


「なるほどね、確かにそうだね。聞けて良かった」


 伝わったようで、よかった。話に区切りがついたし読書を始めるか。


 読書をしばらくしていたが、途中でアリナの暇そうな姿が目の端に映った。


「暇なのか?」


「邪魔しちゃった?ごめんね」


 邪魔をしたとしても謝らなくていいのに。


「邪魔されていない。アリナが俺の暇潰しの相手になってくれそうだったから話しかけただけだ」


「でも読書中」


「読書も暇潰しの一環だ。暇潰しの内容が読書からアリナと遊ぶことに変わるだけで、暇潰しということには変わらない」


 読書はいつでも出来るがアリナと遊ぶことはアリナの都合が良いときだけだから、当然アリナと遊ぶことを選ぶ。


 とりあえず俺はトランプをテーブルに置く。


「何する?」


「どうせ時間はあるのだから片っ端からやっていけばいいだろう」


「そうだね」


 こうして始まったトランプは夕方まで続き、夕食によって打ち切られた。俺は夕食を食べ終えて外を散歩している。


 いくら歩いても島の内側に闘技場があって外側に海が広がっているだけで変わることのない景色が続いている。いつもならこんな景色しかない場所になど人がいないのだが、船が到着したのか大量に人が歩いてきていた。


 俺は道の端により人の流れに逆らって歩いていると大量の人の中に会ったことのある顔が見えた。俺がそちらに顔を向けると気づいたのか目が合う。


 その人は人の流れから抜け出して俺の後ろに立った。


「少し話がある。時間はあるか?」


「ある」


 この人には少々疑問を抱いたままだったから聞ける機会ができて良かった。俺は常に解放されている闘技場の入り口から闘技場に入り、闘技場の観客席まで移動してくる。


「人はいないようだ」


「話って何ですかソウヤさん」


 暗闇の中からその人は現れる。


「約二年半前病院で会ったことを覚えているな、タナトス」


「当然です。忘れるわけないでしょう」


 忘れていたらどうしようかと思っていたから良かった。


「俺とアリナ、アーサーの名前をどこで知った?」


「ソウヤさんの名前を知ったのはソウヤさんがこちらに来てからすぐですね。アリナさんとアーサーさんは彼女らが名付けられたときぐらいから」


 見た目からすればあいつらが生まれた時にはタナトスはまだ生まれていない。


「お前の年齢は?」


「覚えていないですね。正確に言えば数えていないですけど」


 具体的な数字を言って欲しかったのだが、数えていないか。見た目からすると簡単に数えられそうな年齢なのだがな。


「変なことを言ってきたせいで忘れていたが俺が聞いたのは場所だ。時間じゃない。場所をどうやって知ったのかを答えろ」


「そんなの魔力を使って集めたに決まっているじゃないですか。なので時間を答えました」


 俺よりは確実に魔力制御が上手いのか。今戦ってしまえば勝てる保証はない。


「この国の人たちは全員調べたのか?」


「まさか、そんなことはないですよ。数人しか調べていませんよ」


 その方が何故俺たちが選ばれたのかという疑問が生じてしまう。


「俺たちに何か用でもあるのか?」


「いえ、用はないので基本的に接触するつもりは無かったんですが、ソウヤさんは時々自分の感知をすり抜けてしまうので、前回と今回の遭遇が起きてしまったんです」


 普段は会わないようにしているのか。


 話せば話すほど分からなくなるし、真面目に質問しても意味がない。


「序列戦にはでるのか?」


「序列戦に出るエンゲと戦いたくて」


 誰だそれ?


「強いのか?」


「強いとは思いますけど自分なら負けはないです」


 ならタナトスは強すぎるだろ。


「エンゲと本選で戦えるようにくじには細工します。だからソウヤさんが決勝に来ない限り戦うことはないです」


 俺が決勝に行けないみたいな言い方をしてくるな。俺は決勝に行くつもりで頑張って来たんだけど。


「そこまでくじに細工できるのか?」


「ええ。本選に上がった人の全ての対戦カードを選べるくらいには出来ますよ。要望があるなら聞きます」


「誰と戦ってもいいようにしてきたつもりだ。誰が相手でも勝つさ」


「頑張ってください」


 頑張るさ。


「タナトスの好きな食べ物は?」


「急に何の話ですか?肉全般ですけど」


「タナトスのことは何も知らないから少しずつ知っていこうと思ってな。今度焼き肉でも一緒に行こうぜ」


 焼き肉なら肉好きのタナトスも納得だろう。


「さっきも言いましたが接触するつもりは無いんです」


「だからまた奇跡的に会った時にでも焼き肉を食べながらゆっくり話そう」


「もしその奇跡が起きたらですよ」


 約束を取り付けることに成功した。だがタナトスは俺の魔力感知に引っ掛からないため、タナトスの感知に引っ掛からないタイミング中に偶然会うという奇跡を起こさなければ会えない。


 だとしてもまたいつか会う機会はあるだろう。


「約束は守れよ」


「守りますよ。一緒にご飯を食べられる機会なんてそう有ったもんじゃないでしょうし」


 約束を守るという約束を取り付けられたし絶対に守ってくれるだろう。


「そろそろ帰らないとアリナさんが心配するんじゃないですか?この島を一周するのにかかる時間より五倍の時間が過ぎています」


 そんなに過ぎていたら心配させるかもしれない。


「そうだな、もう帰ることにするよ。当日に会おう」


「当日は焼き肉はノーカンですよね?」


「絶対会えるからノーカンだ。奇跡的に会えたらという話だったからな」


 奇跡的に会えて焼き肉に行くから意味があるのであって、一週間以内に会って焼き肉に行っても意味がない。


「やっぱりそうですよね。それでは当日に」


「ああ、当日に」


 別れの挨拶を済ませて俺は宿泊施設まで、アリナの所まで戻るべく帰路につく。

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