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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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トランプ

「何でこっち向かないの?」


「聞かなくても分かるだろう」


「本当に気にしなくてもいいのに」


 さっきよりも声が近い。


「アリナ近くないか?」


「今は同じ枕に頭が乗っているよ」


 それは近すぎるな。


「アリナの方を向くためにも離れてくれ」


「分かったよ」


 アリナが移動した音が聞こえたし、アリナの方を向くか。寝がえりをうつと、アリナの顔が目の前にあった。


「もう少し離れてほしかった」


「魔力感知で私の場所を探ってからこっち向けばよかったじゃん」


 それもそうではあるが、魔力を消費するから常に使用するわけにもいかないのだ。


「何かゲームをしようよ」


「ゲーム?」


 眠くないからか?俺もそうだけど。


「そう。このトランプを一枚ずつ引いて大きい数字を出した方の勝ち。数字が同じだったらスペード、クラブ、ハート、ダイヤの順に大きいとする。もし勝ったら相手に質問できるんだけど、その質問は『はい』か『いいえ』で答えられる質問のみだよ。ただし、質問しないことも可能。質問しなかった場合は次に勝ったときに質問が「はい」か「いいえ」で答えられる質問以外でも良くなるの。もしそれで負けたら勝利回数はリセットだよ。」


 そうなると四分の一で「はい」か「いいえ」以外で答える必要がでてくる。


 これはハイリスクローリターンだ。


「三回にしないか?」


 八分の一なら賭けることに躊躇する。


「えー、それは賭けにくいよ。でもその方がいいかな」


「決定だな。それと間にトランプを置くスペースを作らなくてはな」


 質問を一つに絞れば十分八分の一を引ける。


「上のスペースに置けばいいでしょ」


「三連勝後の質問は何でもありだよな」


「勿論。私の好きな人とかでも何でもいいよ」


 それなら良かった。


 確認をとっている間にアリナは枕よりも奥、寝ている俺たちの頭上のスペースにトランプを広げている。


「それじゃあ、始めようよ」


「ああ、始めようか」


 それぞれ一枚ずつ引く。


「俺は8」


「私は3」


 俺の勝ちだ。三連勝する予定だったが今は確認に使うか。


「好きな人はいますか?」


「はい」


 トランプは全て回収して混ぜておく。そのうちにアリナがもう一組のトランプを広げる。何故か俺たちはトランプを三組持ってきたからできることだ。


 みんなで遊ぼうと思って持ってきたが明らかに一組で十分である。


 アリナが広げ終わったところでもう一回引く。


「俺は10」


「私は9」


 ぎりぎり勝利。


「アリナは俺の好きな人を知っていますか?」


 質問が思いつかなかった。


「はい」


 え!?本当?


 本当に知っているなら今すぐにでも告白するべきだよな。


 前回と同じ手順を踏んでもう一回引く。


「俺は13」


「私は1」


 付き合ってくださいと言うべきか?間違いなくそうか。


「あ~、パス」


 あ~、の間に勇気を振り絞ろうとして諦めた。


「今更パス?もう三連勝したしもう無理だよ」


 この意気地無しが。


 意気地無しの結果が三十二分の一の賭けに出たのだと意気地無しなのか分からないけど。


 その次はしっかりと負けた。


「私の体は本当にいい体型?」


「はい」


 この質問以降はアリナもパス。


 何か質問したいことが定まっていてのパスか。ゲーム提案者が質問考えていないはあり得ないし。


 俺たちはどちらとも八分の一を引けないまま眠くなった。


「駄目だ、眠い」


「私も。ちなみにソウヤは私に何を聞きたかったの?」


「アリナの好きな人」


 これを聞いてから告白しようと思った。


「私は何で序列(ナンバーズ)戦に出ようと思ったのか」


「当然罪が消えるから」


「そのためだけに危険なことをする性格じゃないよね」


 アリナはよく俺の性格を分かっている。


「そうかもしれないが、その質問に真面目に答える気はない」


 もうゲームも終わっているのだから答える気はないな。


「残念だよ。明日には到着するからもうこのゲームする時間はないのに」


 もう着くのか。


「着いてからも遊べばいい」


「ソウヤは戦って疲れるんだから休むの優先」


 どのくらい疲れるかも分からないからなんとも言えないな。アリナと遊ぶことは癒しではあるのだが、それで寝るのが遅くなっては意味がない。


「そうかもしれないな」


「私の好きな人教えようか?」


 急に何を言い出すんだ。


「ゲームに勝てていないから聞くつもりはない。ましてやさっきのアリナの質問に俺は真面目に答えていないしな」


 真面目に答えていれば交換条件だとか言えばいいかもしれないが、俺は答える気はない。


「残念だよ」


「期が来ればまた聞くことになるさ」


 俺の決心がつけば告白をする。好きな人を聞くこととは違うかもしれないが、少しはアリナの好きな人が誰なのかを知る手がかりになるはずだ。


「うん。楽しみに待つよ」


「ああ、待っていてくれ。それと俺はもう寝る。おやすみ」


「おやすみ、ソウヤ」


 俺は程無くして眠りについた。

――――――――

 ソウヤは本当に眠りにつくまでが早い。


 私――アリナはもう少しソウヤと話していたかった。というか、私はソウヤがこんなに近くにいたらドキドキしてすぐに眠りにつけないのに、どうしてそんなに直ぐに寝ちゃうの?


 もう私のことは好きじゃなくなったの?それなら私がソウヤの近くに寄ろうと頑張っていたのすんごい恥ずかしいじゃん。だったらさっきのソウヤに告白しようと思ってやったトランプも馬鹿みたい。


 ソウヤはなかなか告白してくれないから、私が告白しようと思ったのにソウヤは賭けの商品は賭け以外で得ようとしないから告白できなかった。


 告白する気はあるみたいだけど決心つかなそうだしどうしよう、と思って今日のゲームは考えに考えての作戦だったのに、ただただ楽しい時間になっちゃったしな。


 ルールを頑張って考えて聞きやすいように四分の一の確率にしたのに、ソウヤにルール変更を求められて妨害されて、質問例に私の好きな人を聞くにしてソウヤがそう質問するように誘導したのに八分の一を最初しか引かないある意味で豪運。


 ソウヤが勝つかどうかドキドキしたのは楽しかったからまだ良かった。


 次やる時は如何様して負けよう。袖口にでもカードを忍ばせておいて毎回低い数字を出そう。


 こんなに好きなのに何で伝わらないかな?好きでもない人に裸を見られていいわけがないのに何でそれが分からないのかな?好きでもない人と同じベッドで寝るはずがないのに何で?


 好きでもない人にこんなに近くに寄ったりしないのに。


 ブレイダお姉ちゃんがお膳立して、ダブルベッドの部屋にまでしてくれたのに何で気がつかないの?


 八つ当たりみたいなことを考えてしまったがソウヤの性格的に伝わるわけない。ソウヤなら私の好きな人は絶対自分じゃないって決め付けているはずだからね。


 もうこのまま同じ枕で寝ちゃおう、私のことが好きなのか分からないけど寝ているうちなら良いよね?


 好きって言って欲しい。


 デートは時々しか出来ていないからもっと恋人らしいことをしたい。


 休日には毎回のように二人で出掛けて手を繋いで歩いてハグしてキスして回りに嫉妬されるくらいに充実した日々を二人で生きたい。でも、それらの気持ち以上にそこまでしてしまうと一層別れが悲しくなるという気持ちが普段なら強いのに。


 何か理性より気持ちが勝ってしまって、別れの悲しさを忘れていた。


 出会いはいつか別れに変わってしまうものだから。


 そうなんだけど、私が居なくなった時にソウヤがどれくらい泣くのか知りたい気もある。私がどれくらいソウヤにとって大きい存在になれたかは涙の量で分かる。


 それが私が生きた証しになる。


 ソウヤが一生忘れることの出来ない時間をソウヤと二人で作りたい。ソウヤが他の誰かを好きになることを躊躇しちゃうぐらいの時間を。


 私はあなたと一緒に過ごせて幸せを、幸せの大きさを知ったから、それをソウヤにも知ってほしい。


 幸せの大きさを知れば何気ない日々にも幸せを感じられるようになるから。


 私が初めて会った時のソウヤの目は不幸で満ちているように見えたけど、それも少しづつ薄れてきたからソウヤもいつか幸せの大きさが絶対に分かる。


 それまで私頑張るよ。


 懸念があるとすれば幸せを知れば知るほどに不幸も知っていくことかな。今まで幸せが少なかった私にとって不幸と幸せの区別が大してつかなかったのに、幸せを知ったから不幸も知った。


 でもソウヤは私と違って幸せも不幸も知っていたけど幸せを忘れて不幸だけが残ったように見える。だから幸せを思い出して欲しい。


 私に幸せをくれた恩返しが幸せなら最高にロマンチックじゃないかな?

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