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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-2章 序列戦
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乗船

 いくら鍛練をしても自分が強くなったのか実感できない日々。だが俺は序列(ナンバーズ)戦に向けて頑張ってきた。勝ちたい理由は勝てば俺の罪が消える。


 法を犯したという事実が消えてなくなるのだ。


 序列(ナンバーズ)の日程は二日間で予選を行い、その後の三日間で本選を行う。


 予選一日目は何グループかに分かれて戦うバトルロワイアル。


 だいたい一グループ五百人。その中から四人まで減らす。そして予選二日目で一対一の戦いをして、予選通過を決める。予選を通過できるのは1グループで二人のみ。


 本選はグループの数次第で日数は変わるが大体三日間。一回戦につき一日を使う。


 序列戦を行う会場は大陸の下の方にある島にある特大闘技場。


 そこまで移動するのに電車で約二週間。そこから船に乗るのだが人が多すぎる。


 観戦するために行く人、出場するために行く人、そして警備員だ。序列戦で勝てば罪が消えるのだから当然逃亡中の犯罪者も参加する。その参加のためには海を渡らなければいけないので、そこを警察は確保するつもりでいるのだ。


 だから検査が厳しく時間がかかるため船に乗るための列が長座の列となり、その列の進みは遅い。


「進まないな、アリナ」


「うん、後一日はかかりそう」


 まじかよ。


 そういえば今のうちに確認したいことがあったんだった。


「アリナ、もし俺が勝てたら、俺の専属サポーターになってくれませんか」


「勿論いいよ。誘ってくれるの待っていたんだよ。もっと早く誘ってくれてもいいじゃん」


「なかなか言い出す勇気を持てなくて」


 待っていてくれたなんて嬉しいな。


 専属サポーターとは序列の三人にそれぞれ一人ずつつく秘書みたいな人のこと。序列(ナンバーズ)は専属サポーターの指名権があるから知り合いを指名できるけど、当然指名される側には拒否権がある。


 もし専属サポーターを指名しない場合は世界政府が選んでつけてくれるようになっているが専属サポーターはいなくてもいい。


 具体的な仕事は情報伝達と序列(ナンバーズ)の仕事のサポートだ。危険なことをする必要があるのは序列(ナンバーズ)だけで、サポーターは序列(ナンバーズ)に常についていく必要はない。


 なので序列(ナンバーズ)程給料は高くないが、他の仕事の平均の給料よりは断然高い。


 世界政府は金持ちだ。


「今からサポーターが楽しみになってきたよ」


「そんなに期待されても困るんだけど」


「ソウヤなら序列(ナンバーズ)に入れるよ。ファーストは無理だろうけど」


 アリナは割りと現実主義でこういうことを言ってくる。


「確かに出場するやつらを見てみないことには何とも言えないな。師匠レベルの相手が何人いるかでかなり変わってくる」


「ブレイダお姉ちゃんは強いからね~。戦うなら決勝がいいね」


 同意する。


 俺が全力を尽くしても勝てる確率半分未満、もしかしたら十パーセント未満かもしれないので戦いは出来る限り避けたい。


「師匠と剣術勝負は絶対にしてはいけないから、どうやって戦うか考えなければな」


「私も手伝うよ」


「ありがとう。二人なら師匠にだって勝てる策もでてくるはずだ。どうせ俺たちには時間がたっぷりとある」


 自分で言っていて嫌になる。


 明日まで船に乗れずに、列に並び続けるなど最悪だ。どうにかして暇な時間を埋めようと思い提案したが、いい案など思い浮かばない。


「一旦ソウヤの出来ることを整理しようよ」


「それはいいな」


 名案だな。


「まずはブレイダお姉ちゃんの苦手な遠距離」


「魔力弾を撃つのみ。魔力弾は多少の調節は可能」


 魔力弾のみなのは結構痛手だ。魔力弾の使用魔力効率は魔法に比べて非常に悪いため、魔力消費が激しい。


「次は近距離戦」


「近距離は師匠には劣るが剣術ができる。棍を使う予定だから師匠よりはリーチがある。格闘術も使えて、体に魔力を纏っての戦いは得意。格闘術は師匠よりも上手く知識もある」


格闘メインで戦うのが理想的だ。


「奥の手として魔力を使った筋力増加に、魔力消費の激しい式神降霊術がある。成功するか分からない技としては混爆(エクスプロージョン)を強制的に師匠とすることもできるかもしれない」


 もし成功した場合は師匠の魔力を消費させることもできるので一石二鳥だ。


「ブレイダお姉ちゃんなら混爆(エクスプロージョン)に気づくと思うけど、魔力操作ならソウヤの方が得意なんだから気を散らすのにも使えるね」


 そういうこともできるのか。


混爆(エクスプロージョン)を狙いつつ格闘術で戦う。距離が離れれば魔力弾で牽制が理想的だね」


「問題はその理想を実現させてくれるかだな」


 一番の問題はそこ。どうやって理想の状態まで持っていくか。師匠相手にリーチの短い格闘術で戦うことが難しいし、距離を取らせてくれるかも分からない。


「結論としてはできる限りのことをするのみ。それに限るね」


 結局はそれしかない。


「何の話をしているんだ?」


 不意に後ろから話しかけられ急いで振り向くとそこには師匠がいた。


「師匠!?何故ここに?」


「それは当然序列(ナンバーズ)戦にでるために決まっているだろう。それと、もし良かったら私たちの船に乗らないか?もうすぐ出発なんだが」


 それを聞いてすぐにアリナの方を向くと目が合う。


 目線で会話をして頷き合う。


「「乗ります」」


「二人同時に言うのか、仲がいいな。分かったが急遽手配するのだから文句は言わないでくれ」


 部屋が地下とか狭かったりするのか?俺はそのくらい構わないが。


 俺たちの仲の良さについては最初の時点でアリナが距離を縮めてくれたおかげだな。もし最初から敬語だったら俺は常に距離をとって今でも敬語だったろう。


 それでも今ほどは仲良くはなれないだろうから、今ほどに仲良くなったきっかけは塔からの落下だな。そこから俺はアリナの何気ない仕草も気にかけるようになって、アリナの考えが読めるようになった。


「アリナ、師匠の乗る船について何か知らないか?」


「私も知らないよ。でも私たちの乗る予定だった船よりは大きいと思う」


 さすが貴族だな、俺たちとは財力が違う。


 俺たちが乗る予定だった船は序列(ナンバーズ)戦の時期のみ世界政府が無料で出してくれる船だった。だが、師匠のおかげで無料で貴族用の船に乗せてもらえる。


 師匠に感謝、感謝。何て考えていたら師匠が来た。


「船の部屋を取れたから今から乗りに行こうか」


「はい」


 移動してきたのだが、船が豪華客船ぐらいのサイズの船で驚いている。


 もっと小さいと思っていたのに。


 師匠が警備員にチケットを三枚渡して通れるようになったがあまりに大きく、これから自分が乗るんだという実感がわかない。実感がわかないまま船にかけられている橋を渡り部屋まで連れてこられた。


「ここが君たちの部屋だ」


 君たち?二人分は取れなかったのかな?疑問を持ちながら部屋に入って行くと寝室にはダブルベッド一つ。


 俺が急いでドアまで行くと、

「それではごゆっくり~」

 と言いながら師匠はドアを閉めた。


 急いでドアを開けて廊下を確認したが、誰もいない。


 逃げ足はやっ


 仕方なく部屋に戻ってきたが、今度はアリナがいない。


「アリナどこ~」


 トイレにいるなら返事をしてくれるはずだし、風呂かな? 廊下から通じているのは脱衣所で、その奥に風呂があるはずだ。なので風呂にいるなら脱衣所は開けても問題ないが、万が一脱衣所にいたらどうしよう。


 数分悩んだ結果開けてみることにした。


 ドアを開けてすぐに俺はドアを閉じて、リビングに移動する。


 俺は何も見ていない、俺は何も見ていない、俺は何も見ていない


 オレハナニモミテイナイ、オレハナニモミテイナイ、オレハナニモミテイナイ


 万が一にも開けたら奇跡的に風呂場のドアが開いていてその奥に裸のアリナがいるなどあり得ない。

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