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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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お出掛け 後半

 アリナと一緒に買い物をして塔のある公園に来た。


 荷物は道の途中にあるコインロッカーに預けて、持ち物は財布だけの身軽な状態になる。


「塔はどうやって上ろうか?」


「階段かな。疲れたらおんぶしてね」


「当然だ」


 そう言って塔を登り始めたのだが、半分ぐらいのところで、

「ソウヤ、おんぶして」


 めちゃくちゃ元気に見えるのにそんなことを言ってくるが、断るつもりはない。


「はい、乗って」


 アリナの前で屈む。そうするとアリナはすぐに乗ってくるのだが、前に背負った時よりも密着している。


「アリナは恥ずかしくないのか?おんぶされて」


「恥ずかしさよりも嬉しさが勝っちゃうの。人の温かさに触れれているようでね」


 密着状態から気を紛らすために話しかけたのに返答がすごい耳元から聞こえてくるせいで結局アリナを考えてしまうのは変わらなかった。


 俺もアリナの体温を感じながらゆっくりと階段を上っていく。


 時間をかけて塔を上ったおかげで展望デッキについたころには夕日が射していた。


「夕日が射している。早く渡り廊下に行こう」


「うん」


 渡り廊下に来たのだが、中々アリナは渡り廊下に立ってくれない。


「下を見なければ大丈夫だ。ほら、こっちに来て」


「うん」


 意を決したような表情で俺を見て、俺の腕に飛びついてきた。


俺の腕に張り付いたまま目を開けようとしない。


「ほら、夕日だぞ」


 俺が声をかけるとゆっくりとアリナは目を開ける。


「うん。・・・綺麗」


 街並みの奥の山の間から夕日が顔を覗かせている。


 半分より上の景色は綺麗にオレンジ色に染まっている夕焼け。下半分にはオレンジ色に照らされている街並み。


 美しい


 見れて良かったと確実に思わせるだけの魅力が確かに存在する。それがアリナの目に映っているのがさらに美しかった。


 しばらく見続けていると夕日は山にすっかり覆われてしまう。


「見れて良かった。ここに立つ勇気をくれてありがとう」


「最後に勇気を出したのはアリナだよ。感謝されることじゃない」


「もしそうなのだとしても切っ掛けをくれたのは、ソウヤだよ。ソウヤが一緒にいてくれなかったらこの景色は一生見ることは無かったと思う。だから、ありがとうソウヤ」


ここまで感謝を述べられたら否定する気はもうない。


「夕食を食べよう。カフェで」


「うん、お腹すいた。何食べようかな~」


 夕日の余韻もすっかり消えて二人でカフェに行く。


 俺たちがカフェに行くころには席がそれなりに埋まっており席は選ばせてくれなかった。


「何食べる?」


 メニュー表を取り出してアリナに広げて見せる。


「私は~、カレーライス。ソウヤは?」


「俺はミートソーススパゲッティ」


「お洒落なのにしたね」


 アリナでは絶対にカレーは食いきれない読みのスパゲッティだ。アリナなら途中で辛さに負けるし、そもそもアリナが食べきれる量じゃない。


「このカレー凄く美味しいよ。ソウヤも食べてみて」


「今はいい。アリナこそ今のうちにパスタ食べておいたら?」


「うん。ありがとう」


 アリナに俺のフォークがのったスパゲッティの皿を渡す。


「美味しい~。このミートソース美味しいよ」


 俺も食べていたのだから当然知っている。そんなに嬉しそうに報告してくれるのならば、何度だって聞くがな。


 アリナは俺に皿を返してきて気づいたが間接キスになっていたな。


 普段の俺なら絶対に許さないのだが、忘れていた。アリナの前だから忘れていたのだとしたら俺はアリナに気を許し過ぎている。気を許す相手がいるのは悪いことではないはずだが、地球に住んでいた俺にはありえないことだ。


 特に中学生以降は。


 俺もだいぶ変わったものだ。もしかしたら変わったのは周囲の環境だけかもしれないけど。


 俺は返ってきたスパゲッティを食べながら考える。


「私、もう食べられない。辛いしお腹いっぱい」


 俺がスパゲッティを残り一口まできたところで予想通りの宣言をされた。


俺は残り一口のパスタと残り4分の1のカレーを交換する。


「その量なら食べられるだろ」


「うん。ありがとう、ソウヤ」


 カレーを食べてみるとそこまで辛くはないが、アリナの状態を察するに後から辛くなるタイプの辛さだろう。


 俺がカレーを食べている間にアリナはしきりに水を飲んでいる。


「ソウヤは私が食べられないと思ってスパゲッティにしたの?」


「まあ、そうだな」


「他に食べたいものがあったならごめんね」


「謝らなくていい。俺はスパゲッティもカレーも食べたかった」


 あくまでスパゲッティを食べたかったアピールをしながら、ついでにカレーも食べられて良かったのだと伝える。実際、両方美味しかったから食べられてよかった。


「そのコミュニケーション力を他の人に使えたら絶対にもてるよ」


「そうか?」


「絶対そう」


 俺はアリナ以外の人に好かれても嬉しくない。だがアリナが好かれると言ってくれるならアリナに対しても効果的だったのかもしれない。それならいいのだがな。


 俺はアリナと会話しながらカレーを食べ終え、その頃には日も沈みきり空が暗くなっていた。ここまで暗くなっていたら渡り廊下からいい景色が見えるはずだ。


「食べ終わったことだし、また渡り廊下に行くか」


「私さっきの時点でかなり勇気を使ったんだけど」


「それでいい景色が見えただろ。だからもう一回行こうぜ」


 アリナは文句を言いながらも俺と一緒に席を立って一緒に来てくれる。


「ソウヤは高いところ大丈夫なの?」


「ああ、高いところはだいたい景色がいいから好きだ」


「景色はいいけどさ・・・」


 怖いものは怖いと言いたいのだろうが、俺は二人で良い景色を見たいのだ。


 渡り廊下まで戻ってきたがやはりアリナは渡り廊下の上に立とうとしない。


「ほら、アリナ。掴まって」


 アリナに手を差し出す。アリナはその手をそっと掴んで俺の隣に立った。


 アリナの前には綺麗な夜景が広がっている。夕方とは違い奥に見えるはずの山には少しの光があるだけで山の輪郭も分からない。


 だがその手前には光魔法の光がいくつも街に浮かんでいる。


 下から見える光とは明らかに見え方が変わるその光は何とも幻想的に見え、見るものの心を掴む。


「綺麗だね」


「そうだな」


 俺たちはしばらくこの景色を堪能してから帰路についた。

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