お出掛け 前半
朝になり起きた俺は隣にアリナが寝ていて驚く。それから少しずつ昨日の記憶を取り戻して原因を理解した。
俺はカーペットの上とはいえ、アリナを床に寝かせたままにはしておけないのでアリナを持ち上げてソファーに寝かせる。
寝かせたところで腹がなった。
俺は昨日は夜ご飯を食べていないのでかなりお腹が空いているので、昨日の食材も使って朝ご飯を作り始めた。
今日はいつも通りのパンにシチューを合わせて作ることにする。
きっと完成するころにはアリナも起きているはずだ。そしたらアリナと一緒にご飯を食べよう。
そうやって少しずつアリナとの距離を詰めていっていつかアリナに好きになってもらおう。
アリナに好きになってもらう方法を考えているうちにシチューができたので、二人分の皿にシチューを盛り付けて完成。
焼けたパンと一緒にシチューをテーブルに持っていくとアリナが起きていた。アリナは何やら唇を触っているが気にせず挨拶をする。
「おはようアリナ」
「あっ、おはよう。あれは夢だったのかな?」
それは俺に聞かれても分からない。
「誰かとキスをする夢でも見たのか?」
「私をソファーに寝かせてくれたのはソウヤ?」
ふざけて言ったら無視された。
「二回な」
最初にベッドに寝かせた後に俺のところまで落ちていたから、一回起きている
「そうなんだね。なら夢じゃないんだ」
俺が寝た後に起きて何かあったのかもしれないな。アリナが嬉しそうにしているからいいか。
「何かいいことでも?」
「うん。とってもいいこと」
「それは良かったな」
何があったのだろうか?気になるが、どうせ教えてはくれないのだろうから気にしても仕方がない。
「朝ご飯食べようぜ」
「うん」
テーブルに向かい合わせになるように朝ご飯を置いたのだが、アリナはそれを移動させて、俺の隣に座った。
「どういう気持ちの変化が?」
「別に良いでしょ」
俺と向かい合って食べたくなかったのかな?と思っていたのだが、いざ座って食べてみると肩が触れ合う程にアリナとの距離が近いのだ。
「ち、近くないか?」
「嫌?」
「全く」
俺は即答する。
アリナは食べるとき以外基本的に俺の方を向いているのですごい近い距離アリナの顔がある。
俺の顔が赤らめている感覚がある。
「顔赤いけど大丈夫?熱でもあるの?」
「忍ぶれどだな」
「え?何それ」
忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
平兼盛が詠んだ短歌だ。
「忍ぶれど、忍ぶれど」
アリナが何度も口に出して言っている。
「図書館で調べても出てこないと思うぞ」
「何で分かったの!?」
「それは分かるだろう。アリナの考えは、手に取るように分かる。一番知りたいことは分からないけどな」
二年近く一緒にいるからアリナの考えは手に取るように分かるが、一番知りたいアリナの好きな人だけ分からない。
「アリナの好きな人って誰なんだ?」
「教えないよ」
あれ?昨日までの絶対教えるものか、みたいな雰囲気がない。それに加えて俺に聞き返してこないが、まさかバイトの人の言葉を真に受けたわけではないよな。
あっているけど。
「そういえば、そろそろあの塔の渡り廊下が直るらしい。直ったらまた行こうな」
「私、高いところ怖いの知っているのにそんなこと言うの?」
俺はアリナと一緒に見に行きたいんだよ。
「結局見れてなかっただろ。今度は夕日を見てから展望デッキの小さなカフェで夕食を取ってからもう一度渡り廊下に行って夜景を見よう」
「二回も?ちゃんと側にいてよ」
何と可愛らしいことを言うのだろうか。
「当然だろ」
今回は前回と同じ事が起こらないように家の中だけで計画を練る。前回は恐らく、学校でも計画を練っていたから、そこで不良たちに聞かれていたのだろう。
折角のアリナとのお出かけを邪魔されるわけにはいかない。だが逆にあれは思い出になった、悪い思い出にな。
今度こそ良い思い出を作るんだ。
決意を胸にアリナと一緒に計画を練る。
朝は軽くスポーツをしに行き、昼は一緒に公園でお弁当を食べて、その後は買い物に行く。買ったものはコインロッカーに預けて夕方になったら塔に行く。
後は俺の計画通りに景色を見て、コインロッカーの荷物を回収して帰るという、計画となった。
―――――――――
ということで待ちに待ったアリナとの出掛ける日になった。
まずはスポーツ。
スポーツできるところまできたのだが、俺たちがする競技といえば1つしかない。
スポーツクライミング。
時々競いあってほぼ俺が勝つ。
スポーツ用の服をアリナが着るとアリナの体のラインがよく分かる。
胸はさほど大きくないが、痩せているためバランスのよい体、その上にあの美人な顔があるから最強だま。
「もう疲れたの?」
そう言いながらアリナはドリンクを持ってきてくれる。
「ありがとう。まだまだ動けるが、アリナの動きに見惚れていただけだ」
「だけどソウヤには勝てない」
ちょっとしょんぼりした感じで言うのが可愛らしい。
「俺は力で登っているが、アリナは全身を使って動けているからもう少し力を付ければ俺になんて余裕で勝てるようになるさ」
俺が見惚れていたのは決して体のラインだけではない。アリナは見事に全身を連動させている動きにも見惚れていたのだ。
――――――――
楽しく運動しているとあっという間に時間が過ぎて昼になった。
安全のための監視の人が名残惜しそうにアリナを目で追っていたが、今日のアリナは俺の貸しきりなので回りに左右されずに過ごす。
スポーツを十分に楽しんだ後は公園まで移動してきてベンチに座っている。
「はい、ソウヤのお弁当」
「ありがとう、これがアリナの弁当だ」
「ありがとう」
俺とアリナは互いに作ってきた弁当を交換した。
互いに自分の作る料理よりも相手の料理の方が好きだという理由により交換することになった。
「う~ん、おいしい~」
「大袈裟だな。アリナの料理の方が美味しいぞ」
「ソウヤの料理の方が断然美味しいよ」
ここで否定しようものなら言い争いになってしまうので何も言い返さない。
変な話だ。
互いに自分で自分のよりも相手の方がいいと言って言い争いになるなど、とは思うが実際になってしまった実績がある。夜ご飯を一日交代で作っているのだが、前に晩ご飯の時に言い返したときに相手の料理の方が美味しいという謎の理由で口論になった。
結局言っているのは相手を誉める言葉だけなのに口論をした俺たちは逆に凄いと思う。
「私食べ終わったよ」
早っ
俺はまだ半分も食べていない。
「量少なかったか?」
「丁度いい量だったよ。ソウヤのお弁当の量は増やしたから早く感じるだけかな」
確かに少し多いとは思っていたが、差がつくほどに多いのか。
「私、ちょっと寝るよ」
そう言ったアリナは俺の太ももに頭を乗せる。
「アリナ、まさかこのまま寝るつもりなのか?」
返事が返ってこない。まさかもう寝たのか?他の人が座る時の邪魔にならないように気遣って寝ているのがアリナらしい。
俺はアリナを起こさないように脚を動かさずに、弁当を食べるしかない。
十分程で食べ終わったのだが、食べ終わるとすぐにアリナは起きた。
「おはよう、アリナ」
「お弁当食べ終わったみたいだし、買い物に行こう」
何故俺が食べ終わったのをそんなすぐに分かった?アリナはまさかずっと起きていたわけではないよな。
「アリナ、ゆっくり眠れたか?」
「疲れが吹きとんだよ」
「ならよかった」
アリナは些細なことで嘘をつくような性格ではないから、寝て疲れを無くしたのか、風に当たれたおかげで疲れを無くしたのか。
「何考えているの?」
俺が何かを考えているのは分かるのか。
「ちょっとアリナについてな」
「え?何々?」
俺が疑問に思ったことをアリナに言っても、またはぐらかされるだけだ。
「教えない」
「教えてくれてもいいのに」
「それはさておき買い物に行くか」
アリナに駄々をこねられると俺は話してしまうので、話を切り上げる。
「ソウヤと買い物は久しぶりだね」
「そうだな。デパートでの買い物なら俺が家に住み始めた時に行って以来じゃないか?」
「そうだったね。スーパーには結構行くけどね」




