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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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召喚

 無事アリナの着替えも終わった。


 俺は当然アリナの着替えを覗きなどしなかった。正直に言えば覗きたかったが、一時の欲のために俺の未来とアリナからの好感度を捨てるような真似などできない。


「帰るか」


「うん」


 二人で帰ろうとしたのだが、病院の外に異様に人だかりができている。


「何かあったのだろうか?」


「私は何も聞いていないけど」


 俺もずっとラジオを聞いていたが、何もなかったはずだ。ラジオを付けてチャンネルを変えながらニュースを聞いたが、特に何もない。


「どうしたんだろう?」


 そういった時に看護士が入ってきた。


「申し訳ございません。あなたがこの病院にいることが、外部に漏れたようでして」


 例の事件のことで集まってきたのか?


「裏口ありますか?」


 裏口から出ていく事が人生で何度あるのだろうな。


「あることにはあるんですが、そちらにも人が集まっていまして」


 裏口も塞がれているのならば、どうやって凌ごうか。どうせどっちの出口から出てもばれるのが落ちだ。


 地下室があってそこから出られるとかだったら楽なのだがどうせないだろうし、あったとしてもそこも張られているのだろう。


 明日まで待つか?


 アリナともう一泊過ごせるのは嬉しいのだが、諦めさせるには一日だけでは足りないだろう。病院に弁明させようとしても集まっている人の多さからして、信用できる人間からの情報だから信じてもらえない可能性が高い。


 道場で教えてもらった技に気配を消すのもあったが、俺は使えない。ましてや、アリナもいながらだとまず無理だ。


「どうしようか、アリナ。後三泊ぐらいするかい?」


「悪くないけど服が二着しかないから」


 乾きさえすれば二着で十分だと思うが、アリナはお洒落をしたいのだろうか?アリナが嫌だと言うなら別の方法を考えるしかない。だが、それが思いついていたら苦労しない。


 しばらく悩み、一つの方法を思い付いたのだが、それをするのは自信がない。


 こういう時はアリナに選択を任せるのみだな。


「一つ帰られる方法を思い付いた」


「そうしよう」


 俺はまだ説明してなかったはずだが?即答過ぎて不安になる。


「どんな方法かは分からないけど私はソウヤを信じるよ」


「分かった。任せておけ」


 帰ることが決定したので俺は作戦を看護士に話す。


「外にいる人たちに俺たちはいないって説明してきていただけますか?」


「どうせ信じてもらえませんよ」


 そんなのは百も承知。


「問題ありません。それと屋上を開けてください」


「ええ、分かりました」


 そして俺たちは屋上に出てきた。


「ちょっとごめんね」


 断りをいれてから、アリナをお姫様だっこをする。


「嫌な予感がするよ」


「目を瞑っていれば一瞬だ」


 看護士が人々に説明をして注意を引き付けている間に俺はアリナを抱えたまま屋上から飛び出した。一般人に群がるのはどうかしている。


 俺は足に魔力を込めているために跳躍力もそれなりに上がっているが、それでは病院の近くに着地するだけだ。なので俺は普段ではありえないくらい足に大量の魔力を込めて空中を蹴る。


 すると一気に加速してそれなりに病院から離れた場所まで逃げてこれた。そこから普通に走り、病院が見えないところまで逃げてきて、アリナを下した。


「もう大丈夫かな」


「…怖かった」


 俺としてはアトラクション感覚で楽しかったのだが、アリナには怖かったようだ。


「アリナ、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないよ、もう少し心の準備したかった」


 そこまで大変だったのか


「すまないな」


「謝らないで、許可したのは私だから」


 確かにそうだったな


「なら、帰ろうか」


「うん…」


 アリナに元気がない


「今度またあの塔上りに行こう。直ったらだがな」


「そうだね、また一緒に遊びに行こうね、約束だよ」


 自分で提案しといてどうかと思うが、アリナは高い所が苦手だったはずでは?


「ああ約束だ、それとようやくだけど明日式神を召喚しようと思うんだ」


「ついにやるんだね、緊張するよ」


 魂に召喚術式を描いて効果時間をずっと調べ続けてようやく魂に完全に術式を描く決意を固めた。


 完全に描いてしまえば、もう消えることはない。


 何故なら墨のような上から描くやり方ではなく、魂に傷を付けるからだ。魂にも再生能力はあるようだが、再生能力があるといっても術式を発動させる程に傷を付ければ完全に治らず、傷が残る。


 それにきちんとコーティングをすれば治ることはない。


 なので、一回で描くしかない。


 描くのに失敗してしまえばスキルが不完全な術式に盗られて、スキルが使い物にならなくなるうえに、その術式も発動できない。だから長い時間をかけて練習してきたのだ。


「明日は絶対に成功させる」


「頑張って」


「ああ、任せておけ」

――――――――――――

 研究する日になり、研究室にいるのだが、何故かアーサーもいる。


「何でいるんだ?」


「歴史的瞬間を見に来た」


 そんなに凄いことなのか、俄然やる気が出てきた。まずは、墨で下書きを描く。墨は魔力を込めない限りすぐには消えないが長い時間残るわけでもない。


 墨が消えるよりも先に描き終えるスピード勝負でもある。


 墨で描き終えた後にすぐに魂に傷をつけるための魔法具に持ち替える。描くのには[魂]を魔法具に発動しながら、[並列思考]に描けるように位置を調整して、正確な位置に描かなければいけない。


 俺は時間も周りも忘れて描き続けてようやく描き終えた。


 気づいたらアリナがハンカチで俺の顔を拭っていた。俺が汗を搔いていたから拭ってくれたみたい


「描けた」


 そう声をかけて術式を発動する。


「【現れよ】《式神召喚》」


 俺の詠唱が終わるとそこには、長めの白い髪から覗かせている犬のような耳、すらりとした高い背、ぶかぶかの服、そして仮面をつけた人物が現れた。


「呼び出せたはいいが名前はどうしようか」


「う~ん・・・思い付かない」


「僕も思い付かない」


 アリナは少し考える気がありそうだが、アーサーは少しも無いだろ。この二人は一番大事な時にしか役に立たない。


「ソウヤの式神何だしソウヤが名前を付けるべきだと思うよ」


「賛成」


 俺の役に立とうという意思を感じられない。特に大事な時では無いからだろうな。だが、この二人が一番大事な時にしか役に立たないなら、俺は大事な時以外にしか役に立たないだろうな。


「少しは考えてくれ」


 この二人は頼めば少しはやろうとするが、頼まれなければ唯の自由人だ。


 名前が無いのはかなり不便だから早く決めたい。


「何か案は思い付いたか?」


「さっぱり」


「同じく」


 この式神にはアリナの守護をさせようと思っているから何か守護者の名前をとろう。


 ファフナーは確か黄金を守ってる感じだったよな。ちゃんとは覚えていないけどこれにするか。


 他に思い付かないし。


「お前の名前はファフナーに決めた」


 ファフナーはそれを聞いてぴょんぴょん跳ねている。おそらくこれは[並列思考]から得た俺の知識の中から喜びの表現を探して、これにしたのだろう。


「ファフナーは今日からアリナの護衛をしろ。それと今のうちにアーサーから魔法を教わっておけ」


 ファフナーは首を縦に振っている。声帯は一応あるはずだが、俺のイメージが盤石ではないから使いものにならないのだろう。


 ファフナーには[吸収体]がないし、俺が魔力を融通しているから魔法は使えるはずだ。


 アーサーは魔法陣をファフナーに見せながら魔法を実演している。


「あいつが今日から護衛だ、アリナ」


「ソウヤの護衛にすればよかったのに私でいいの?」


「当然だ」


 俺は即答して、ポケットからネックレスをとりだす。


「召喚の魔法陣が描いてある魔石つきのネックレスだ。ネックレスなら持っていても邪魔にならないだろ」


 俺が描いた召喚魔法陣と対応するように作った。遠距離からでも召喚できるようにする魔法陣が描いてあり、この魔石は小さいため軽い。どこまで遠距離でも使えるのかは試していないから、ただの飾りになる可能性もある。


「ありがとう」


 これはアリナが持っていなきゃ無意味だから渡したのだが、アリナは留め具を外せないみたいだ。


「ちょっと貸して」


「はい」


 アリナに外し方を見せながら外して、アリナの首にかける。


「ありがとう」


「また分からなくなったらいつでも聞いてくれ」


「うん」


 アリナにネックレスを渡していたら火球が飛んできたが、俺とアリナに届く前に消えた。今のはファフナーが撃ったようだが無詠唱魔法だったように思える。


「ファフナーはアーサーよりも才能があるんじゃないか?」


「僕も無詠唱魔法じゃ使えるけど習得まで一年かかったからファフナーは凄いと思う」

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