自分の思い
アーサーから意外な事実を聞いた後すぐにアーサーはすぐに帰っていき、それと入れ替わってアリナが入ってきた。
「アーサーお見舞いに来たんだね」
「アリナがいない奇跡的なタイミングでな」
「そんな奇跡じゃないと思う」
「そうなのか?病院に寝泊まりしていたみたいだけど」
「そ、それ、嘘だよ」
そう言いながら顔を背けている。語尾が弱弱しいし、顔を背けているが耳が赤い。これは確実に嘘をついているな。
「そうなのか。アリナ、ありがとう」
「だから、違うっていってるじゃん」
こちらを見ずに俺を殴ろうとしているが、俺の方を見ていないから当然当たることが無い。当たるはずがないのに諦めずに腕をブンブン振っている姿が何とも可愛らしい。
そもそも当たっても痛くないように加減してくれているのがアリナの優しいところだな。
アリアが当たらないことに気づいて後ろ向きでこちらに近づいてくるが当たらない。そして、アリナはベッドに引っかかって俺の方に倒れこんできた。
前にも同じようなことがあったが、今回はアリナをしっかりと受け止めることができて、抱擁するような形になった。
その状態で俺はアリナの顔を覗き込むと、アリナと目があう。アリナの顔が少し赤らめていた顔が、真っ赤になっていく。
「顔赤いぞ」
「見ないで」
アリナが両手で顔を覆っている。
アリナはカリギュラ効果を知らないのだろうか。人は禁止をされればされるほどやりたくなるというのに。
本音を言ってしまえばこんな可愛い状態のアリナを見ない訳がない。
アリナが俺が見ていないか確認するために目に覆っている指を外してこちらを見てくるがそのたびに目が合う。
「見ないでっ」
顔を覆っている手を片手だけ外して俺の顔の向きを変えようしてくるが、アリナの腕の力よりも俺の首の力の方が強いため変えることができない。
一番簡単な方法はアリナが俺から下りればいいだけだ。それに気づかない程にアリナは恥ずかしいのだろう。
「俺から下りればいいんだよ」
「下りても顔覗いてくるでしょ?」
そう来るか。
「それは当然そうだろ」
アリナが何か思いついたように俺から下りて俺の後ろに回ったので振り向こうとしたが、振り向けない。
恐らくアリナが俺と背中合わせで座ったようだ。
「これだとアリナの顔が見えないよ」
「そうしてるんだから当然だよ」
アリナ頭いいな。
こんな感じでアリナと遊んでいたら夜になってきた。
「アリナ、帰らないのか?」
「帰った方がいい?」
そんなの答えは決まっているだろ
「全然そんなことないな」
「なら泊まる」
それは答えがかなり飛躍している。それから何やかんやあって、アリナが泊まるのは決定したのだがどこで寝るのか分からない。
「アリナはどこで寝るんだ?」
「昨日までは椅子で寝ていたけど」
やっぱり病院に泊まっていたんだな。
「椅子で寝られると俺が心苦しい、せめて隣のベッドで寝てくれ」
「勝手に使っていいのかな?」
「バレなきゃ問題無い」
問題無いはずだ。
「そういえば何で泊まろうと思ったんだ?」
「塔から落ちて私は落ちたんだなって気づいた時にソウヤが倒れていて、何もできなくて」
そう言うアリナは一筋の涙を流す。
「病院に運ばれた時にお医者さんにはソウヤが良くても目を覚まさない程度の重症だって言われて、私に出来るのは待つことだけだった。でも、ソウヤは起きておはよって言ってくれて三日待って良かったなって思えたの。私はその恩返しとして傍にいようって思ったから」
俺、そんなに重症だったのか。
それなのにアリナは俺を待とうとしてくれたのか。
「アリナが俺が起きるのを望んでくれるなら俺は何度でも起きておはようっていおう」
「なら、私はソウヤが起きるまで何日でも、何年でも待ち続けるよ」
この約束だけは何としてでも守らなければいけないな。
アリナの思いを聞いて尚更アリナを帰すわけにはいかなくなって、アリナは隣のベッドで寝ることになった。カーテンを閉めずに向かい合って寝る。
アリナが先に寝たので、月明かりに照らされてアリナの寝顔を見ている。
こうしてアリナの寝顔を見ていると俺のアリナへの気持ちが分かった気がする。
俺がアリナのために行動できてアリナのためなら命を懸けられるのもアリナのことが好きだからなのか。俺はアリナに恋をしているのだろう。
俺の気持ちの整理ができて良かった。その漢字一文字を導き出すのに随分と時間がかかってしまったな。
だが、これで俺は心置きなくアリナのために行動できる。自分の気持ちを理解しているのと理解してないのではモチベーションが違う。
アリナの幸せのために行動するモチベーションだ。
アリナが苦しんでいるなら命を懸けてでも必ず駆けつける。辛いかも知れないが、アリナが恋をすれば絶対に応援して、恋が実るように協力する。
それがアリナの幸せに繋がっているはずだから、俺が辛くなっても気にすることはない。きっと、アリナが幸せな姿を見れれば俺の辛さも消えて無くなってくれるはずだ。
俺の幸せには必ずアリナの幸せと繋がっている。
だから、それが俺のすべき事だ。
自分の気持ちを理解した後、アリナの寝顔を少し見てから寝た。
そして今起きたのだが、アリナはまだ寝ている。俺はとりあえず窓を開けて風に吹かれる。
秋の心地よい風が肌を撫でる。
外に見える木は紅葉していた。
中々いい景色だと、感傷に浸っていたら突風が吹いてきて、急いで風のせいで閉じにくい窓をなんとか閉める。
タイミングが悪い。
もう少しすれば窓を閉めようと思っていたのに予定より早く閉めるはめになるとは。アリナの起床を待つために風に当たるが封じられた。
仕方なく俺はラジオを付ける。
スピーカーに耳を当てなければ聞こえない音量にしているのでアリナが起きる心配はない。
ニュースを少し聞いていると例の事件のニュースになった。不良たちの名前や出身校が公開されている。これは完全に俺たちの学校の汚点だな。
ニュースを少し聞いてから飽きたので、音楽が流れているチャンネルに合わせる。
昔はよく歌を歌っていたものだ。父親が音楽好きでギターを弾けたのでよく弾き語りをしていた。
俺も少し父親からギターを習ったので弾けるのだが、弾き語りとなると一曲しかできない。弾き語りという器用なことは俺には難しかったのですぐに挫折して他の曲の練習はしなかった。
今思えば続けていたら弾き語りのレパートリーを増やせていたと思う。
この世界にもギターがあるなら買って弾くか。
俺のアルバイト代はアリナに渡している分以外は全て貯金してるから、余程いいギターでもなければ買えるだろう。
こっちに来てからは触ってすらいないから今も弾けるとは限らないが、体が覚えてくれているはずだ。
この世界の音楽も俺は結構好きなのでいつか弾けるようになりたい。等と考えながら音楽を聞いているとアリナが起きたようだ。
「おはよう、アリナ」
「おはよう、ソウヤ。ソウヤが死ぬ夢を見たよ」
中々びっくりすることを言ったな。
「どんな感じだった?」
「塔から落ちたソウヤが寝たきりになっちゃって、どれだけ待っても起きなくてそのまま死んじゃったの。そうはならないでね」
約束は守る。
「当然だ。アリナが待ってくれているなら必ず起きる」
昨日と同じようなことを言っておいた。
「お願いだよ」
任せておけ、必ずと言える根拠など何処にもないけど、起きてみせる。
「はい、これ」
話が一段落ついたからか、アリナが服を渡してきた。それを受け取ってカーテンを閉める。
早着替えをして病衣から着替えて病衣を畳む。
「着替え終わったよ」
「私はまだだよ」
アリナも着替えているのか。当然カーテンを開ける気はないぞ。




