表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
23/330

再び病院

 目覚めてこの光景を見るのは二回目だからすぐにここがどこだか分かる。


 病院だ


 前回と違うところと言えばベッドの隣の椅子でアリナが寝ていることだけだろう。


 アリナがゆらゆらしていて倒れそうで怖い。


 俺はとりあえずベッドから下りるが頭が痛む。前回の腕の怪我は腕さえ使わなければよかったのだが、今回は頭のためどう頑張っても痛い。


 ベッドから下りた俺はアリナをお姫様抱っこしてベッドに寝かせて、布団をかける。頭を打ったので念のため、アリナが起きるのを待つ間に記憶に異常が無いか気絶する前のことを思い出す。


 アリナは高いところ苦手なくせに飛び降りてきたなとか、不良捕まったのかなとか余計なことを考えているせいで中々進まない。


 一番俺に引っ掛かったのは俺がアリナを助けるために地面に向かって空中を蹴ったことだ。俺は大変困っている人がいるなら助けるだろうが、自分の命を捨ててまでは助ける気はない。


 何故なら俺が人を助ける理由が正義感というものからではなく、助けなかった時に心残りになるからだ。


 心残りがある状態で生きていくのは苦しい。だが、命を捨てる可能性が出た時には自分の代わりに死んだのだとか、俺という犠牲が減ったと言い訳できる。


 そして、俺は俺の目の届かないところで困っている人間などどうでもいい。この考え方で俺は生きてきた。だから、いつもの俺ならアリナを見殺しにして自分だけ助かっていたはずだ。


 今回はどう考えてもアリナが死んだとしても俺のせいじゃない。不良が悪いのであって、俺だけ助かっても運が良かったと言われるだけだ。


 アリナがいないと生活していけないからか?今の俺なら家事はできるし、働くことだってできる。ましてや、アリナが死んだことで生命保険が下りる。アリナが死んで俺が困ることなどないと思うが。


 友だちが居なくなるからか?アリナが死んでもアーサーがいるし、元々俺には友だちが居なかった。


 なら仁義か?今までの答えの中で一番しっくりくる。俺がこの世界でやっていけるようにしてくれたアリナ。俺と一緒に研究に尽力してくれたアリナ。


 俺のために飛び降りてきたアリナ今思い出すとアリナは滑ったようにも思えるな。滑ったのだとしてもスキルを自分ではなく俺に使ってくれたのだから変わりない。


 俺がアリナにあるのは仁義だけなのだろうか?他にも何かある気がする。


 これが友情というやつなのか?俺はアーサーにあそこまではしないだろう。アーサーを助けるために下に飛び込んだりはしたかもしれないが、アーサーに自分より強い魔力結界は張らないだろう。


 自分が死んでも相手を守ることはしない。


 あっても友人の死を見ないために二人とも死ぬか二人とも生きるかのどちらかになるようにする。アーサー相手だったら後者を目指して前者になるのだろうな。


 やはり俺は何かアリナに特別な感情を抱いている。


 わからない。


 誰かに聞いて答えがでるわけがないと思うから自分で答えを出すしかない。


 考えているとアリナがゴソゴソと動き出した。俺が悩んでいるうちにアリナが起きたようだ。


「おはよう、アリナ」


「おはよう、何で私がベッドで寝ているの?」


 確かにそれは気になるかもな。


「アリナが倒れそうだったから寝かせた」


「寝なきゃいけないのはソウヤだよ」


 凄い剣幕で言ってきた。


「俺はもう大丈夫だから寝ているべきだ」


 何で自分よりアリナを優先させるんだろうか?明らかに大丈夫じゃないのは俺だ。


「ソウヤは明らかに大丈夫じゃないよ」


 それは自分でも気づいている。アリナがベッドから下りて椅子に座っている俺をどかした。


 アリナに椅子に座られたので俺は仕方なくベッドに座る。


「寝なよ」


「アリナが座っている限り俺は寝ない」


 同じことを言い続けていて、いたちごっこになっているため話が進まない。そうしているとドアが開いて看護師が入ってきた。


「お目覚めになられていたんですか。それなら呼んでくださればいいのに」


 最初は俺の方を向いていたのに後半はアリナに向けて言っているようだった。


 見舞いに来ている人にとってそれは難しいと思う。


 看護師は俺の包帯を取り替えたあとそくささと病室から出て行った。


「帰るの早かったな」


「そうだね」


「起きたら教えて欲しかったという話はアリナには無理があると思うんだけど」


「そんなこと……そうだよね、私には無理があるよね」


 誤魔化そうとしているみたいだけど、はっきり言っていたから無理がある。そんなことに続くのは、ないだけだろ。


 アリナは言いたくないみたいだし、後で看護士に聞くとするか。


「それじゃ、私帰るね」


 アリナは大きなバッグを持って帰る準備をしている。俺もそれにあわせてベッドから下りる。


「俺が持とう、そのバッグ」


 アリナが渡す前にバッグを持ってアリナから強制的に受け取る。どうせアリナのことだから怪我人にそんなことさせられない、とか言って渋るから先手をうった。


「ありがとう」


 受け取ってからも渋ると思ったのに素直だな。アリナを玄関まで見送って病室まで戻ってきた。


 次に看護士が来たときにアリナについて聞いてみるか。


 それまでの時間をアリナが持ってきてくれた本を読みながら時間をつぶす。


 アリナは本当に気が利いている。


 読書をしているとドアが開いた。俺の部屋は一人部屋なので看護士が来たのだとしたら、まず間違いなく包帯の交換だろう。


 包帯を変える頻度が多い理由は包帯の魔力が切れるからだ。体の再生の補助に使う魔力は相当多いようですぐに変えなければ只の包帯同然になってしまう。


 寝ているときは寝ているときに変えるわけにはいかないので、寝る前に包帯を変えて朝に変えるだけだ。


「包帯変えますね」


 看護士にアリナのことを聞きたいのだが、どうやって切り出せばいいのか分からない。切り出せないまま、包帯は変え終わって看護士はでていった。


 次こそは聞くぞ


 ドアが開く。


 さっきでていったばっかなのにまた来た。まだ心の準備ができていない。だが、カーテンからでてきたのはアーサーだった。


「見舞いに来たよ」


 タイミングいいな


 アーサーになら聞きやすい。


「アリナ、最近はどうだ?」


「最初からアリナについてなのか。アリナは最近学校に来てないよ」


 授業免除だから問題はないのだが、アリナが休むとは珍しい。


「僕がお見舞いに来ると必ずアリナもいたから、アリナは病院に泊まってソウヤの目が覚めるのを待っていたんだと思うよ」


 だから看護士もあんなことを言ったのか。


 アリナは俺の目が覚めたから帰ったんだな。


「俺が倒れてから何日たった?」


「三日」


 三日!?三日もアリナは俺の目覚めを待っていたのか。


 なら、アリナのバッグの中身は着替えだった可能性がある。それを代わりに持つとか気づかなかったとはいえ俺はかなりヤバいやつだな。


「あの後どうなったのか教えてくれ」


「分かった」


 アーサーの話では俺以外に怪我人は出なかった。今回の事件とエレベーターが止まったのも不良グループのせい。不良グループが少年院に行くことはほぼ間違いないだろうとのこと。


 だが、前科がなければ一年ちょっとで出てきてしまうのだとさ。


 事件が起きた例の塔は当然一時閉鎖。渡り廊下と渡り廊下下の抉れた地面が直るまでは立ち入り禁止になった。地面が抉れたのは俺のせいだから申し訳ないが、俺とアリナが助かるための必要な犠牲だったのだ。


 また、塔に登れるようになったらまたアリナと行こう。だから、不良が出所する前に直してくれ、頼む。


 あの塔は今回の事件で有名になって人が殺到しているせいで直ってもすぐには上れないかもしれないとのこと。


 人が殺到した理由は新聞の見出しが『恋人の奇跡の救出劇』で、あの塔は恋愛スポットになったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ