護衛
今日からアリナの彼氏役、つまり護衛をスタートさせることになっている。俺は朝のSHRが終わったらすぐにアリナの教室の近くにさりげなく待機。
次の授業まで5分しかないからか、はたまたアリナに彼氏がいることが分かったからかあいつは来なかった。
俺は授業が始まり次第すぐに魔法練習用の場所まで移動してアーサーに会う。
「アリナの護衛に協力してくれないか?」
「どういうこと?詳しく教えて」
とアーサーに聞かれたのでアリナがストーカーにあっていることを説明した。
「彼氏役はソウヤだから僕いらなくない?」
「それは当然俺が授業中暇だから話し相手になって欲しいから誘ったに決まってんだろ」
「魔法の練習に集中したいんだ」
そう来ると思って考えてきたんだよ。
「戦っていたる最中にコミュニケーションは必須だし、魔法発動中に会話もできないなら戦闘では当然使えないだろ」
これ以外の答えは用意してきていないからこれで駄目ならもう無理だ。
「確かに、それなら話し相手になって意識を散らしてくれ」
ちょろい。
アリナのクラスの前にある空き教室に移動してきた。
アーサーは念のためにと結界魔法を張りながら別の魔法を使うという複数魔法同時発動の練習も兼ねて練習している。
最近どんな感じ?という質問から始まって時々会話しない時間を挟みながら過ごしていると結構すぐに一時間目が終わった。
ドアを開けといて開けた部分からアリナを見張っておく。
するとアリナの近くにどんどん人が集まってアリナが見えなくなった。
アリナは友だち多いんだな。
「アリナが見えなくなったよ」
「あそこまで友だちに囲まれていたら大丈夫だろう。気を付けなければいけないのはアリナを見失うことだな」
何事もなく休み時間が終わった。
「俺、ちょっと道具取りにいってくるよ」
「いってらっしゃい」
道具というのはアリナが囲まれているとアリナに危機が訪れても俺達から見えないのでその対策をするためだ。
俺とアリナの研究部屋から魔石を持ってきて即席で新しい魔法具を完成させる。
2つで1つの魔法具を作った。
アリナに持たせる方の魔法具に魔力を込めると俺達が持つ方の魔法具に信号が送られる。
それを俺達の方の魔法具が受け取ると音で教えてくれるというものだ。
音の出る魔石は取り外せて振動する魔石に取り替えることができる。
言ってしまえばマナーモードだ。
授業中なのでマナーモードで動くか試したところちゃんと動いた。
動作確認は基本だからね。
「ところでソウヤはアリナが好きなのかい?」
「へ?」
急な質問にびっくりして変な感じで聞き返してしまった。
「だから、ソウヤはアリナのこと好きなのかい?」
聞こえなかったから聞き返した訳じゃないんだけど。
「友だちがそもそも少ないからそういうのはよく分からないけど、たぶんあるのは友情だと思うぞ」
「そうなのか」
「こっちに来てアリナには色々助けて貰ってアーサーを紹介して貰ってやっと友だち合計三人目だからな」
自分で言ってて悲しくなってくるな。
「三人!?」
「子供の頃の知り合い全部友だちみたいな雰囲気のも入れればもっと多いが十歳越えてからの友だちは三人だな」
小学校低学年とかクラスの人間全員友だち感あるよな。
「僕はソウヤで十人目ぐらい」
「大して変わらないじゃねーか」
三人でめっちゃびっくりしておきながら十人かよ。
「先生近づいてきたから隠れようぜ」
そういって二人でばれないように隠れた。
「お前らー…誰もいねー」
道場では剣術以外にも戦闘時での魔力の使い方も習う。
こちらはペンテシレイアさんとオーウェンに習って割りとすぐに出来るようになった。
そのうちの一つの魔力感知だ。
魔力を自分の周囲に展開してエコーロケーションのように跳ね返ってきた魔力で周囲を知ることが出来る。
《吸収体》は自分の魔力までは吸収しないみたいだ。
「何で隠れたんだい?許可は取っているんだろ」
「許可は取っている。俺達が騒がしかったから注意をしに来たんだと思ったからな」
さっきの友だちの人数の話で盛り上がったのが授業中の先生に聞こえたのだろう。
「先生の注意しに来たけど誰もいなかったのは面白かったな」
「確かにあの沈黙は面白かったよ」
今回のことを切っ掛けにアーサーは防音結界を張っていた。
次の休み時間にアリナに魔法具を渡しに行って騒がれた。
「彼氏!?」みたいな感じで盛り上がっていたが俺は何も言わずに対応はアリナに任せた。
俺はアリナの彼氏だと言われても問題ないが、アリナは実は好きな人がいるとかだと彼氏がいるという噂はまずいからな。
この休み時間中にアーサーを呼んでおいた理由が来た。
アーサーを呼んでおいた理由は暇つぶし以外にもう一つある。
その理由は不良グループとの戦い以降あいつらに絡まれることだ。
嫌がらせを止めて直接攻撃に出たのだ。
来ても毎回鳩尾を魔力を纏いながら殴って一撃で沈めていたのだが最近数が増えることがある。
そうなるとアリナを見張っておくことが出来なくなるからそのためのアーサーだ。
「加勢するかい?」
「いや、アーサーは見張り優先で」
来た不良どもを廊下から見えない位置まで誘導してから戦う。
戦うと2回に1回ぐらい相手の攻撃を避けきれずに当たるが、それでも魔力を纏ったパンチを鳩尾にいれて終わりだ。
メインの戦闘員以外に来ているやつに気絶したやつを運んでもらっている。
戦うたびに例の音が頭の中で響くが、無視して殴る。
殴ってくるやつ全員を気絶させている間に授業が始まっていた。
不良共ちゃんと授業受けてんのかな?
昼休みになるともう見張りの必要性がなくなる。
なぜならアリナが俺達と一緒に昼ご飯を食べに来たからだ。
「アリナは俺のこと何て紹介したの?」
「彼氏」
「好きな人がいると問題だけど大丈夫?」
「大丈夫」
アリナの返事がすごく短い。
最初の彼氏と短かったのは照れだが大丈夫はただ短かった。
どうしたんだろう。
アーサーと食事して分かったのだが友だちでもない人間に食事中に話しかけられるのが俺は凄く嫌いみたいだ。
アーサーは不純物だとは思わない。
「ここ居心地いいね。授業受けずにここに居ようかな」
「アリナも授業免除なの?」
「うん」
ここの三人とも頭がいいみたいだな。
それよりもアリナちゃんと授業受けていて偉いな。
俺は魔法具の研究で受けていなくて、アーサーは魔法の練習で受けていない。
本当に頭がいいのはアリナだけなのが後に判明した。
アーサーには家庭教師がいて授業前に習い、授業後にも習っていて2回の授業を受けているから学校の授業は必要ないようだ。
俺は三教科はすでに地球で履修済みのため地理と魔法だけでいいのだが、魔法具の研究である程度イメージを掴んでいる魔法は問題ない。
残る一教科、地理は暗記科目のため他の教科の勉強時間を地理に充てるだけで簡単に高得点を出せる。
アリナだけが授業は一回しか受けていなく、自分の力だけで全教科の復習をして授業免除程の点数を取っている。
アリナは天才だね。
アリナの称号がどんどん増えていく。
食事をした後は名残惜しそうに教室に戻っていった。
俺なら絶対ここに残るのにアリナは偉いな。
アリナは俺達の授業を受けない空気に流されずに授業を受けていて偉いなという話をアーサーとしながら今日の授業は終わった。
結局あいつはこなかった。
帰りはアリナと帰ることになっているので教室まで迎えにいく。
迎えにいくと言っても教室は目の前なのだがな。
帰りにもやつは話しかけにくるだけではなく周囲にもいなかった。
失恋を自覚できたのだろうな。
今日不良グループと戦って勝ったことが後の不幸または幸せの始まりに繋がることになるとは夢にも思わなかった。




