表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
19/331

無力

 剣道場に通うことが決定した次の日に剣道場に来た。


 この国の都市は王城を中心に段々になっている。


 王城が一番上で王族用居住スペースが二段目。その下の一段目に貴族、ゼロ段に平民と続く。


 この構造の理由はいざという時に王城が見張り台としても機能させるためだというのは建前で、実際の理由は身分の高い者ほど助かりやすくするためだろう。


 剣道場の場所は貴族用の一段目だ。


 ペンテシレイアさんは貴族だったのか。漫画とかだと貴族は嫌われ役なのにペンテシレイアさんはただの変な人だったな。意外な事実に気づきながら扉に手をかける。


「失礼しまーす」


 ドアを開けながら挨拶をする。


「ああ、来たか」


 入るとペンテシレイアさんに話しかけられた。道場内にはペンテシレイアさん以外に九人いる。


「みんな、新しく加入したソウヤ君だ」


「ソウヤです。これからよろしくお願いします」


 ペンテシレイアさんから紹介されたので挨拶をする。


「宜しく頼む」


 挨拶を返したのは一人だけだ。立地的にここにいるのは全員貴族のはず。俺が平民なのを知ってのこの態度なのかそれとも只不愛想なのか。


 気にせず頑張るか。


 ペンテシレイアさんがやり方を教えて生徒が練習する。それをペンテシレイアさんが見て出来ていないところと直し方を教えるみたいな感じだ。


「持ち方はこうだ」


 俺が全くできていないとペンテシレイアさんが実際に見せたり丁寧に教えてくれる。


「素振りの仕方はこうだよ」


 それに加えて唯一挨拶をしてくれた人、オーウェンさんも教えてくれた。

俺が帰る時にオーウェンが筋がいいと褒めてくれた。


 褒めてはくれたが自分でも分かる程にできていない。俺ができるのは武器を振るだけだ。


 帰ったら棍で自主練でもしなきゃ下手すぎる。持ち方に慣れておかなきゃ間違える。


 反省をしながら帰ってきて、今庭で棍を振っている。そのまま棍を振り続けていたら日が沈み、夜になった。


 さすがにもう止めるか。


 縁台にタオルが置いてある。アリナが置いてくれたんだな。アリナは気が利くから、絶対良いお嫁さんになれる。


 タオルで汗を拭き取って洗濯機に入れる。


 洗濯機は水を入れて、魔力を込めると魔石の魔法が発動して洗濯槽を回してくれる。


 地球の機械はだいたい似たようなものが魔法具で作られていてこの世界にもある。


 ある程度技術が発展してるから不自由がない。そんな世界だからこそか己のいかに無力かがよく分かる。


 迷宮試験でスキルがなければ高ランクモンスターに傷一つつけられない無力さを知った。学校では友だちがまだアーサーしか出来ていないが、それもアリナがいなければ出来ていない。


 剣術が出来ないことが今日分かった。


 アリナが居なければこの世界じゃ金を稼ぐことができなかったし、そもそも家が無い。


 俺は無力すぎるだろう。逆に笑える程だ。


 アリナがリビングで料理している。


「ありがとう、アリナ。料理手伝うよ」


「急にどうしたの?」


 もっと早くに気づくべきだった。今の内に出来ることを探していかなきゃいつか何も出来なくなる。


 今の内にこの世界に慣れなければ。


「ちょっと考えてな」

―――――――――――

 研究を始めて数ヶ月


 ようやくテレビの完成に近づいた気がする。光の色と位置を解析する魔法具を完成させた。アーサーの手助けとアリナの人脈あってこそ出来たことだ。


 アリナは学校の人に聞いてくれたりしていたので、それで色々な人が力を貸してくれた。


 さすが美少女。


 そんなことはさておき次に作るのは解析した場所に解析した色を当てる魔法具だ。アーサーはほぼ毎回、一時間ほど顔を出している。


 それなら魔法具研究に変更すればいいと言ったが、家が許してくれないのだとか。


 退院後の迷宮を余裕で攻略して勇者家の人間を驚かせたようだが、アーサーを無下に扱う勇者家にまだ腹が立っている。だからテレビを完成させて、世紀の大発明を作るのに参加させなかった自分たちは無能だったと吠えずらかかせてやる。


 退院後の迷宮では魂を抜き取ってBランクの魔物を余裕で討伐した。


 俺は怪我一つ負わせることが出来なかったが、今のところ不可避の魂を抜き取ることで討伐できた。アリナの石攻撃が簡単に傷をつけていたのを見たので、俺は弱すぎると思う。


 アーサーはAランクの魔物相手にもそれなりに戦える凄いやつだから比べるまでもない。


 俺が出来るのは家事と研究とバイトだ。戦闘はほぼ無理。剣術も少しは出来るようになったが他の通っている人からまだ一撃も入れられていない。


 オーウェンが毎回教えてくれているのに。オーウェンは技術だけでなく戦闘ではこう動いた方がいいとか考え方も教えてくれている。


 これら以外に特に何もないまま一年が過ぎようとしていた。


 俺が一年間嫌がらせに動じないことに苛立ったのか不良連中に呼び出された。


 こいつらをよく一年間嫌がらせを継続できたなと褒めてやりたいぐらいに小さな嫌がらせだった。何せ無くなったものは必ず帰ってくるのだから。


 呼び出されたのを無視するという考えもあるが、アリナといるときに何かされるのが嫌だから出向くことにした。


 呼び出された住所に行ってみるとボロい倉庫だった。


 重いドアを開けて入ると電気がないがボロボロな壁の隙間から入る光で暗くはない。


「まさか本当に来るとはな」


 呼んどいてその反応か。


「来れば嫌がらせを止めると書いてあったから来た。だからもう帰る」


「今帰ると止めないぜ」


 約束と違うじゃん。


「ここでお前をボコボコにしてやるよ」


 恩着せがましい言い方をするな。俺はそんなこと望んでいない。だが、抵抗する気もない。


 重要監視処分中の暴力事件など問題すぎる。こいつらが警察沙汰にはしないと思うが念のためだ.。


 アリナのガバガバな監視のせいでこんなことになっている。だが、アリナのガバガバな監視のおかげでこんな危険な状態にアリナを巻き込まずにすんだ。


 さて、どうやって凌ぐか。


 受け流す技は道場でオーウェンにしっかりと教わったが出来ていない。全くもって才能がない。だから避けに専念して、当たらないようにするのが最善。


 相手との距離を常に一定に保ち攻撃が届かないようにする。だが、これでは不良の怒りを買うだろう。


 数発我慢する必要があるか。


 考えている間にもリーダーと思われるやつが近づいてくる。一発目は魔力で軽く威力を減衰しながら受けるべきだ。


 右ストレートが顔面に入ったが、相手も魔力を込められることを失念していた。魔力が込められていない時用に防御したから、減衰したつもりが凄く痛い。


 ザーーザーー


 頭の中で音が響く。


 ーザーザザザー


 音が聞こえている最中も相手は殴りかかってくる。今度は腕で顔を守りつつ魔力でもガードする。


 やはり痛い。


 魔力で防ぎきれていない。加えて、音がずっと聞こえてくる。


 音に気をとられて顔を殴られた。そのせいで、鼻血が出てきた。鼻水では無いはずだ。泣きそうではあるが、涙が鼻まで流れてきたわけでは無いだろう。


 避ける隙がなく全てのパンチにあたっている。その後も痛みに耐えているがキツい。


 全身が痛む。


 俺が殴られるたびに音が弱まり、半分ぐらいまで弱まった。それでも俺の中には音が響き続けている。


 このまま耐えていても状況が変わることは無いだろうし、やり返すしかない。


手に魔力を込めながら殴りかかってきた相手の腕を軽く殴って相手に隙を作り、一撃を顔面に入れる。


 顔面に入れてすぐに魔力を放出して相手を吹き飛ばす。魔力を使った戦い方だけ出来るようになっている。


 一人倒すのにすでに満身相違。もう無理だ。救急車か霊柩車で運ばれる事になるのは間違いないだろう。


 絶望に浸っているとさらに絶望の音が聞こえてくる。


 何台ものバイクの音。暴走族でも来たのか。俺は今倉庫の中央にいるから暴走族によって出口が塞がれて終わりだな。


 せめてこの世界のバイクの構造を見てから死のう。そもそも本当にバイクの音なのかは分からないから、ちゃんとバイクを見ておきたい。俺は一度も車とかバイクをこっちで見た事が無い。


 バイクを見るまでは気絶するな。


 自分に言い聞かせながら少しずつ後退しながら出口に近づく。すると、バイクの音が止まりドアが開いた。


 振り返って確認すると見た目は暴走族というよりはヤクザだ。気力が完全に無くなりドアに近づくのをやめた。


「なにやってんだ、てめぇら」


 ヤクザがどなっている。てめぇらだから俺には言ってない。


「こいつにリーダーがやられたんです、兄貴」


 俺を指さして言っている。


 ヤクザたちが本体で嫌がらせしてきた連中が小グループみたいな感じか。


「次そんな下らんことで呼びつけたら殺すぞ」


 全身に鳥肌が立つような殺気戦わなくてすみそうで良かった。戦っていたらまず間違いなく死んでいた。


「すいませ――」


「帰るぞ」


 謝罪をちゃんと聞かずに帰っていった。これはチャンスだな、俺も帰ろう。不良どもが呆気に取られている最中に倉庫から抜け出して帰ってきた。


 ボコボコの俺を見てアリナは驚きながらも手当てをしてくれた。手当てを受けながら起きたことを説明したら、アリナに怒られた。


 俺が重要監視処分中だから警察には言わないでくれるようだ。


 アリナは神だな。


 ところで俺はバイクを見なかったが、あのバイクの排気音みたいな音はなんだったのだろうな。聞こえてくる音の感じから、あのヤクザに関係がありそうなのだが、よく分からないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ