師
やっぱり、家は落ち着くな。家最高、俺の家じゃないけど。
ぐっすり眠れました。
――――――
久しぶりに授業を受けに学校に来た気がする。
研究、迷宮、入院だったからな。
どこで噂が広まったのか分からないがAランクの魔物を討伐をしたことでクラスで騒がれた。俺たちの次に凄いのがBランクの魔物を討伐した不良っぽいやつらだったみたいだけど、そっちを見ると睨まれる。
自分が一番ではないのが気にくわないのかもしれない。こういうのには関わらないのが一番だな。目線も合わせず、話し掛けてきた時は最小限度の会話で済ませる。
異世界での面倒事は御免だね。
空気と化して周りとも最小限度の接触で済ませたいのだが、クラスメイトからは時々話しかけられる。その話しかけられるの中でも、アリナが作ってくれた弁当を食べている至福の時間に話しかけられるのが一番嫌だ。
アリナの手料理はめちゃくちゃ美味いから、よく味わって食べているから頭の中は料理で埋め尽くされている。そこに会話をねじこまれると料理に集中しづらくなくなる。
アリナが作ってくれたもの以外を食べている時は話しかけてもいいのに何故か弁当を食べているときばかり話しかけてくる。なので俺は話しかけられたら食べるのを中断するか、時々ついてくるお菓子を食べている。
それが真剣に話を聞いてくれるとされて、話しかけてくるやつが増える。そうなると昼休みが削られる。よって時間に追われ俺は急いで弁当を食べるはめになる。
その結果、俺は弁当を教室で食べることを止めた。屋上への階段や空き教室、最近では研究用の部屋で食べている。
俺が教室で弁当を食べなくなったころには数学、国語、理科は授業を受けなくてもよくなっている。だから午前中だけや午後だけでもいいのだが、そうするとアリナが弁当を作ってくれない。
そこで俺はアリナの弁当とめんどくさい授業を天秤にかけた。その結果、アリナの弁当に傾いたので毎日学校に来ている。
研究用の部屋に来ると時々アリナがいて話す。他の人と話すと弁当に不純物が混じってる感じがするが、アリナと話すときにはそれがない。だからアリナと話す時は弁当を食べている。
アリナと話せるのは嬉しいのだが、問題も発生してきた。俺が教室を出て弁当を食べるようになってからよく物が消えるようになった。
消えてから次に席を立って戻ってくると見つかる。
犯人の目星はついている。不良グループだ。
俺が消えた物を探していると決まってこちらを見てニヤニヤしている。不良の見た目をしておきながら喧嘩に出ないのは勝てないのが分かっているからだろう。
AランクとBランクの差は大きい。Bランクに勝てるパーティでもAランクに全滅させられることは多々ある。
力の差が分かっているから陰湿な方法に出ているのだろう。だが、俺は袋叩きにされたら勝てる気がしない。
魂を抜いて殺すことは簡単だろうが、不良だろうと一般人を殺す訳にはいかない。魂を抜く以外に俺は大して技がない。
棍は持ち歩いていないから、魔力を纏って殴るしかないので、それでは一対一ならまだしも複数相手には勝てない。何もされないのが一番だが、喧嘩よりは嫌がらせの方がましだ。
めんどくさい授業<嫌がらせ<アリナの弁当
この不等式より俺は学校に通っている。
その帰り道。
一回ぐらいアリナと帰りたいなと思いながら、家の近くまで帰ってきたのだが、玄関の前に知らない人が立っている。
腰くらいまでの長い暗めの青い髪のポニーテールの長身の女性がいる。
どうしよう。
一人で玄関前に立っているということは立ち止まって話ているわけではなくアリナの家に用があるということか。取り合えず帰らないかを曲がり角から塀越しに監視する。
どれだけ待っても帰る気配がない。
情けない話だが、アリナの帰りを待つしかない。
アリナの帰りを待っている最中に家の敷地から出ていく。
ようやく痺れを切らしたか。俺は行先も気にせず油断していた。
「君がソウヤ君かい?」
さっきの女性に話しかけられた。アリナの帰宅まで時間を稼がなければ。アリナは俺の監視をしなきゃいけないのに何で近くにいないんだよ。
「何用ですか?」
「私の剣道場に通わないか?」
「えっ、違いますけど」
白を切る。急に変な話をされたから、思い出したように慌てて人違いという事にした。
名前を知られているのは怖い。知り合い以外に名前を知られているのは、二人目だ。
「なら、家の近くで隠れて監視していたことを警察に言いに行かなきゃいけないな」
こちらに一瞥もくれていなかったのにバレていたのか。重要観察処分中に犯罪をしたとなれば、より罪が重くなる。
「自分がソウヤです」
「やはりそうなのか、何故嘘を?」
そんなの決まっているだろ。
「怪しかったので」
「怪しいかな?」
何故か驚かれた。
「家の前にずっといられたら怪しいですよ」
「そうかな~」
あれで怪しくないと思えるのは逆にすごいな。
見つかっていても見つかっていなくても、アリナの力が必須だったか。アリナの帰宅まで時間を稼がなければ。
アリナは俺の監視をしなきゃいけないのに何で近くにいないんだよ。
「何用ですか?」
「私の剣道場に通わないか?」
勧誘で玄関張りするのはこの人ぐらいでは?
「道場に通う金も時間もないんで」
バイトをしなきゃいけないし、そのバイト代はほとんどアリナに渡している。
「それならお金は貰わないし、週一で来てくれるぐらいでも構わないから、ね」
かなりの好条件。
「自分は剣士じゃなくて、棍使いなんですよ」
「棍を使うのにも剣術は必要だよ」
断る理由はもうない。助けてくれアリナ。
「なにしてるの?ソウヤ」
救世主が現れた。
「この人が剣道場に誘ってきてて」
「通いたいならいいよ。この人悪い人じゃなさそうだし」
それは俺も感じている。だからこそ断り方を考えていたのに許可を出されてしまった。悩ましい。
「本当にいいのか?」
「お金がかからないなら全然いいよ」
金がかからない話はアリナにはまだしていないだろ。さっきまでの話を聞いていたのか?ならもっと早く来てくれてもいいだろ。
俺にとって悪くない条件で、アリナに許可を出されたら答えは決まってしまう。
「剣道場入ります。ですが辞めたくなったらすぐに辞めます」
「これからよろしく頼む。それと辞められないように頑張るよ」
アリナと女性が目配せして頷きあっている。この雰囲気から察するにアリナと組んでいたのか。だからアリナは金がかからないことを知っているし、女性の方も好条件を用意していたのか。
「申し遅れたが私はブレイダだ。ブレイダ・ペンテシレイアだ」
「宜しくお願いします、ペンテシレイアさん」
「こちらこそ」
握手をする。握手をした後、ペンテシレイアさんは何かを取り出した。
「道場の場所が記してある地図だ」
俺が方向音痴なのもアリナから聞いていたのか。
「ありがとうございます」
地図を受け取る。
「それではこれで、お暇させてもらうよ。来たくなったらいつでも来てくれ、アリナもね」
そう言って帰っていった。
「ところでアリナは何で俺を道場に行かせたかったんだ?前回の迷宮で俺が弱いのに失望でもしたか?」
「そんなことないよ。前回は凄かったけど大怪我したから…あまり怪我して欲しくないと思ってね」
同じ思いを持っていても対処の方法は違うんだな。危険に晒さないか強くして危険にならないようにするか。
「それよりも私がソウヤに道場に行って欲しいって気づいたんだね」
「ん?ああ。途中でな」
アーサーはもうすぐ退院だからそれまでに少しでも力を付けなくてはいけない。怪我をしてアリナを心配させないために。そしてアリナに怪我をさせないためにも。
アリナに怪我をして欲しくないなら自分が守ればいいだけだ。命に換えてもアリナを守る覚悟を持ち戦いに臨む。
これをすればいい。
決意が出来たことでアリナにアーサーが退院後に迷宮に行かなければいけない話をした。
それを言うとアリナに迷宮攻略はパーティでの攻略が基本なのだからそういうことはいち早く教えて欲しい、そもそも友人の危機なのだから手伝えることはしたいのだと。
報告しなかったことをすごく怒られた。




