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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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退院まで

「あれ?今誰かいませんでしたか?」


 バレかけてる。部屋をでる時に少し見られたようだ。


「気になるなら見てくればいいだろう」


「そうですね」


 ヤバイ。足音を立てないようにしながら走って、廊下の角に隠れた。角に隠れたが、足音が近づいてくる。


 どうしよう。


 周りを見渡すと次の角は遠く隠れる場所がない。どこか空いている病室はないか。


 後ろの部屋には名札がついてない。


 ここだ。


 急いでドアを開けて部屋に入る。


 ドアに耳を当てて待っていると足音が遠退いていく音が聞こえてきた。立ち去った音を聞いた俺は念のため部屋の中を確認する。


 誰も部屋にはいないと思っていながら確認していると、中学生ぐらいの少年が座って窓から外を見ていた。


 病衣を着ていないので、患者ではないだろう。風でなびいている長めの髪を後ろで結んでいる白髪(はくはつ)、銀色の目、整った顔の少年だ。


 この世界は美男美女が多いな。


 バレないうちに部屋をでようと思ったが、目があってしまった。


「アリナさんとは仲良くやってますか」


「誰それ?」


 初対面の人間に聞かれることにしては変なので、取り合えず知らない振りをする。


「誰って、一緒に住んでいる人の名前も知らないんですか。アリナさんが可哀そう」


 そこまで知られていたら知らない振りは無理そうだな。


「何故それを知っている?」


「それはまだ言えないですね、ソウヤさん」


 謎なやつだ。


「見るからに病人ではないようだが、何故ここに?」


「ちょっと三人の顔を見に来ただけですよ」


 三人は俺、アリナ、アーサーか、そんな気がする。ただ、感覚的にそう思っただけで、それが正しいとするものは何一つない。


「名前は?」


「タナトス、名字はないただのタナトスですよ」


 後でアリナに聞いてみるか。


「ここで失礼させてもらいます」


 そう言ってすぐにタナトスは窓から飛び降りた。


 ここは六階だぞ。急いで窓から身を乗り出して下を見てみても、誰もいなかった。


 どこに行った?もう一度周囲を確認してみたがやはり誰もいなかった。


 諦めて部屋を出ようとした時に時計が目に入った。アリナが見舞いにくる時間だ。


 急いで部屋から出て早歩きで階段に向かう。階段から下りると向かいの椅子にアリナが座っていた。


 もう来てるのか。怒ってるかも?


 俺は急いで警備員の後ろに入りアリナから俺が見えないようにする。隠れながらアリナの位置を確認しようと思って少し見てみると、アリナと目が合った。


 終わったこれは急いで弁解しなければならない。


 俺は急いで階段を駆け下りて、アリナのもとに向かった。


「アリナ、ちょっとアーサーに会いに行ってきたよ」


「一旦病室に戻ろうね」


 ちょっと怒りを感じる。生き残るために俺はどうすればいいのだろうか。


 良い案が思い付かないまま病室についた。


「初日のことを忘れたの?」


「覚えていたからアリナが見舞いに来てくれるより先に戻ろうとしたんだ」


 実際間に合ってないんだけどな。タナトスに会わなければ多分間に合っていたのだが、不運だったな。


「間に合ってないじゃん」


 反論の余地なし。話題をすり替えよう。


「本来ならもっと早く戻れたんだけど人と話していて」


「それで?」


 このまま話題をすり替えるぞ。


「その人の名前はタナトスって言って俺たちの顔を見に来たみたいなんだ」


「タナトス?どっかで聞いたことあるようなないような。思い出せないや」


「アリナの知り合いじゃ無いの?」


 アリナのことについて詳しかったから、アリナの知り合いかと。


「会ったことないと思うんだけど。でも、変だよね。顔を見に来たのに私は会ってないよ」


 確かにそうだな。


「十三から十五歳ぐらいの不思議な感じ少年だったが、俺とアリナが一緒に住んでいることを知っていたぞ」


「私は周りの人に言ったことないから近所の人かストーカーだよ」


「俺も言ったことないが、俺の名前も知っていたからどちらでも無いと思う」


 近所の人なら俺の名前は知らないだろうし、ストーカーなら会話が聞こえるほど俺たちの近くに居たらどちらかは気づくだろ。


 余計に謎が深まった。


「考えても仕方無いね。アーサーはどうだったの?」


 確かに考えても仕方がない。


「アーサーは俺より重症でまだ治っていなかったけど、ベッドに座れるようにはなっていた」


「それは良かった。話せたの?」


「家族と話しているのを盗み聞きした」


 出来ればアーサーと話したかったんだけど。


「アーサーの家族か…」


 何か思うところがあるのかもしれない。アリナとアーサーは俺の知らない頃から知り合いだから、俺が会う前に何かがあったのかもしれない。


「どうした?」


「大丈夫、何でもないよ」


大丈夫、何でもないは何かある時に使うと思うんだけど、話してくれないか。話して貰えるほどに信用を得なくてはいけないな。


 アリナに頼ってばかりだから、少しはアリナの力になりたい。


「何かあったらいつでも頼ってくれていいからな」


「ありがとう。そういえば、もういつでも退院して良いみたいだよ」


 そういえばの内容ではないと思う。


「帰ろうよ、私達の家に」


 そういってアリナはベッドに腰かけている俺に手をさしだした。


 手を取って立つということかな。そう思い立ち上がろうとする。丁度その時に「すいませ〜ん」と言って看護師が入ってきた。


 アリナは俺の手を引いたままドアがある後ろを振り返る。


 そんなことをすればアリナが俺を引く力は弱まるが、俺の引く力は変わらない。すると、アリナは俺の引く力に負け俺の方に倒れこんできた。


 俺はアリナを受け止めるが、密着状態になってしまう。


 そこに看護師が来て、

「青春ですね」


 何て言うものだから俺の顔が赤くなるのを感じるが、アリナも耳が赤い。


「失礼しました」


 看護師が帰った。あなたは何のために来たんですか。用事を済ませてから帰ってはどうだろうか。


「大丈夫か?アリナ」


「だっ大丈夫だよ」


 アリナはすぐに俺から離れてカーテンに隠れてしまった。


 アリナを追いかけてカーテンを開けたいところだが、今顔を合わせるのは恥ずかしい。


「アリナ、大丈夫?」


「大丈夫じゃない」


 俺も大丈夫じゃない。あの看護師は本当になんだったんだ。


「あの看護師は何をしにきたんだ」


「もう退院していいことを言いに来たんだと思う」


 この会話で完全に俺の顔の熱はもう引いていた。


 ベッドから下りてカーテンに手を掛ける。一呼吸置いてからカーテンを開く。


 アリナはカーテンで顔を隠していたようで目が合う。


「きゃっ」


 短く悲鳴を上げられた。アリナの少し赤かった顔が真っ赤になる。アリナは顔を手で隠しながら後ろに振り向く。


「見ないでっ」


 そう言われると見たくなるのが人の性。いや、そういう話じゃなくて単純にアリナが可愛いから顔がみたい。


 犯罪者感が少しあるような気がする。


「アリナこっち向いて」


「無理!」


 語気が強めに返された。


「もう帰ろう」


「うん……今は無理」


 無理だったか。帰るときには絶対に顔を隠しきることは不可能だから帰るように仕向けようと思ったのに。


「耳赤いけど大丈夫?」


「うるさいっ」


 ちょっと意地悪をして聞いたら怒られた。アリナと遊ぶのもこれで終わりにするか。


「俺は着替える」


「…うん」


 俺はまだ病衣のままだから帰るには着替えなきゃいけない。自分で開けたカーテンを閉めてアリナが持ってきてくれた服に着替える。


 俺が着替え終わる頃にはアリナの顔も元に戻っているだろう。俺はすぐに着替えて病衣を畳む。


「着替え終わったぞ、アリナ」


 そう声を掛けてカーテンを開ける。


「じゃあ帰ろっか」


 そう言うころにはアリナの顔は元に戻っている。赤いのを期待して早着替えしたのに残念だ。


「そうだね。それで、アリナの顔はもう赤くないんだな」


 そういったら背中を叩かれた。


「痛っ」


「別にそんなに強く叩いていないよ」


 言うほど痛いわけではないが反射的に言ってしまっただけだ。


「帰るか」


「うん」


 仕切り直して帰ることにした。アリナと帰っている最中に俺に入院している最中のことを聞いた。


 迷宮攻略についてはアリナが報告してくれたようだ。動けるのはアリナしかいなかったからな。


 怪我人は出たが蝙蝠の討伐数が多いことや、Aランクの魔物を討伐したことが評価されたため、評価は一番高い評価を貰ったそうだ。

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