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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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見舞い

 白い天井。


 ベッドに寝ていたようで体を起こして周りを見るが、見覚えがない。


 どこだここ。見た感じだと、病院みたいだが。最後の記憶は、迷宮から出たところか。


 布団をどけて腕を動かす。


 痛っ


 腕を見ると文字が書かれている包帯が巻かれている。魔法具のようなものか。おそらく回復の術式が刻まれているのだろう。傷の回復を助けるものだが、傷痕が残るはずだ。


 皮が剥げて肉が剥き出しの状態に加えて、所々肉が裂けていた。


 スキルの過剰仕様の報いだな。自分の身の程がわかっていなかった己が悪い。


 魂にギリギリ届く範囲で調整していれば、もっと軽い怪我ですんだはずだ。


 しばらく入院するだろうが、バイトは数日いれていなかったから大丈夫だろう。


 アーサーもかなりの重症だったから、アーサーが別のベッドで寝ているかもしれないし、探しに行くか。


 腕は肘から先を動かしたり、何かに触れなければ問題ないので、腕に気を付けながらベッドから出る。


 カーテンを開けるとベッドが三つ、俺のと会わせて四つ。四人部屋のようだ。俺以外にこの部屋に人はいない。


 ならカーテンを閉める必要はないだろうに。


 部屋を出て廊下を見ると看護師や医者、患者が入り乱れており、抜け出してもばれなさそうだ。


 階段まで移動して建物の地図をみる。どうやらここは六階建てのうちの四階のようだ。


 入院用の階層は四階からなのでおそらく上の階だな。アーサー曰く一応貴族との事だからな。位の高い人は上階にいるイメージが俺にはある。この世界でもそうなのかは分からないが。


 この国の構造を考えるとこっちの世界でも偉い人は上にいるのだろう。


 最上階から探していくか、と思っていたが階段を昇り五階に来てみると六階からは許可がいるようだ。階段に人が立っていて追い返された。


 諦めて四階から探すことにして引き返す。階段を降りているときに一つの一家とすれちがった。見た目は問題ないのだが、話していた内容が問題だった。


「試験の魔物ごときに遅れをとるとは恥晒しめ」


 試験の魔物ならアーサーのことかもしれない。勇者家の人間なら、ごときと言える可能性がある。


 気づいて振り返り追ってみたのだが、すでに六階への階段を昇っていた。


 これでは追い付けない。


 病室に戻ろうと振り返ると人に激突された。


「急に居なくなったりしないでよ、ソウヤ」


 アリナがいた。


「どうしたんだ、アリナ?」


「どうした?じゃないよ。お見舞いに来たらいないんだもん、びっくりするよ」


 俺の見舞いに来てくれたのか。


「申し訳ない」


「そんなことより腕大丈夫?」


 心配もしてくれるのか。なんか泣きそう。


「全然大丈夫だ。病室に戻るとするか」


「本当に大丈夫?」


「当然」


 病室に戻ることにして、二人で戻ってきた。俺はベッドに座り、アリナは近くに立っている。


「ベッドに座ったらどうだ?」


「大丈夫だよ」


「そうか」


 断られたため、俺はベッドから下りて近くから椅子を怪我していない方の手で持ってくる。


「はい、アリナ。座って」


「ありがとう、でも腕怪我してるんだからやめときなよ」


「この程度じゃ、痛まない」


 実際に動かさなければ腕は痛くない。俺が寝転んでる時にアリナを立たせることで俺の心が痛む。


「アリナ、アーサーもこの病院にいるのかい?」


「アーサーは六階にいるよ」


 六階なら、あの一家がアーサーの家族の可能性があるな。あのむかつく一家がアーサーの家族か。


 どうやったらあの一家からアーサーが生まれるんだ?優しいアーサーが恥などあっていいわけがない。


「アリナはアーサーに会えないのか?」


「会えるわけないよ、お金持ちか貴族専用階だから」


 それはそうか。と、思っているとドアが開く音がした。カーテンで囲まれていないが看護師だろう。そしたら、カーテンの先から配膳車とともに看護師がでてきた。


「包帯替えますね」


 俺はとりあえず腕を出す。すると、看護師は手際よく包帯を替えてくれた。


 俺の包帯を替えてくれた後、アリナの方を向いて、

「またいらしてたんですね」


「はい」


 また?看護師に顔を覚えられる頻度で来てるのか。


「このまま順調に治れば二、三日で退院できますよ」


「ありがとうございました」


 看護師が退室際に言われたので聞こえるか分からないが、礼を言っておいた。ドアが閉まる音を聞いてからアリナに質問する。


「そんなに見舞いに来てくれてるのか?」


「そんなことないよ、一日一回ぐらいかな」


 それなら看護師は"今日も"と言うはずでは?


「誰か他の人のお見舞いも兼ねているのか?」


「昔はよくこの病院に来ていたけどその人はもう亡くなってね」


 そう言うアリナの肩が震えている。


「悲しいことを思い出させて申し訳ない」


「そんなことないよ、時々思い出さなきゃいけないから、いい機会だよ」


 どうやって慰めればいいのか分からない俺はアリナが落ち着くまで、アリナの背中を擦る。


 アリナの背中を擦って数分がたった。


「もう大丈夫だよ、ソウヤ」


 そう言われたので手を放す。アリナが思い出して泣いてしまう人か、少し気になるな。

―――――――――

 俺が起きてから二日がたった。今日は様子見で入院だ。


 この二日間は一日かけて看護師の巡回時間を確認して、二日目に六階への階段の見張りの巡回時間を確認した。ついでにアリナが見舞いに来てくれる時間も覚えておいた。


 調べた時間から昼にアーサーに会いに行く。


 警備員は階段を下りてくる人の確認はしないので昼交代に合わせて侵入する。その後はアリナの見舞いまでに帰ればいい。


 昼になって俺は急いで昼食を食べて、五階に向かう。階段近くの椅子で待機して、警備員の交代を待つ。


 待っていると勇者一家と思われる人が来た。


 警備員は交代が近いのか何度か時計を確認している。その隙をついて勇者一家?の後ろに行き一家に混じって六階への侵入に成功した。


 予定では、交代の隙をついて侵入する予定だったけど結果オーライだ。


 六階に上がってすぐに、勇者家?から距離を取り後をつける。後をつけていると、一つの部屋に入っていった。俺も部屋に入ると、ここは一人部屋のようだ。


 部屋の大きさは俺がいる四人用の部屋と変わらない。さすがVIP 待遇だな。


 部屋の端のカーテンに隠れようとする時にアーサーと目があったが唇に指を当てて、静かにしてくれと合図する。


 アーサーは全身に包帯を巻かれていて、ベッドの背もたれにより掛かって座っていた。


 アーサーは意図を汲んでくれたようで、何も言わなかった。


「傷は大丈夫かい、恥さらしのア~サ~く~ん」


 明らかにアーサーを煽っている言い方。


「すいません、兄上」


 アーサーはアーサーで何故そんなに律儀に対応する。


「こんな醜態がバレてはジークフリートの名に傷がつく。これは秘密にして、傷が治り次第迷宮に行け」


 病人に何言ってんだ。


「その迷宮を攻略して、ジークフリートの名を広めろ。出来なければ、勘当だ。」


 勘当だと。父親だからって好き勝手言いやがって。AランクだぞAランクの魔物を俺たちは討伐したんだ。よく知らないがたぶん凄い事だ。


 決して勘当していいやつではない。


 アーサー何か言い返せよ。


「その攻略は友だちを連れていっても?」


「当然、パーティーでの攻略は、迷宮の基本だ」


「なら、勘当はあり得ませんね。僕の友だちは、強いですから」


 良いことを言うじゃないか。


 アーサーの期待に答えなければな、任せておけ、アーサー。だが、できればアリナは連れていきたくないんだけど、連れていかなきゃいけないんだろうな。


 アリナがいると、すごい助かるんだけど怪我をして欲しくない。


 ガラガラガラ


 ドアが開き、看護師が入ってきた。


 俺はカーテンにうずくまり看護師に見えないようにして、看護師の足音に耳を澄ます。


 看護師の足音が部屋の奥から聞こえてきたところで、急いで開いたままのドアから脱出する。

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