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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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迷宮攻略

「誰か光魔法使える人はいないのかい?」


 アーサーは聞いてきたが、不運だなアーサー。


「俺たちはそもそも魔法が使えないぞ」


「僕は魔法使いじゃないんだけど」


 アーサーにため息をつかれる。


「仕方ないだろう、詠唱しても使えないんだから」


「魔力が無い体質なのかい?」


 休みの間に砕滅棍を使って練習していたが、普通に魔力を込めて使えた。


「魔力は普通にあるぞ。スキルのせいで使えないんだ」


「アリナと同じ感じだね」


「そうなのか?アリナ」


「そうだよ」


 知らなかった。アリナに聞こうともしなかったから仕方ないか。


「私のスキルは周りの魔力を乱し続けるから魔力が使えないんだ」


「俺はたぶん周りの魔力を吸収するやつだから別なんだな」


「そうだね」


 アーサーから何故か嬉しそうな雰囲気を感じる。二日しか一緒にいないから、あまり何を考えているか分からないな。


「魔法を使えないと不便なんだから、そんな明るく話せる内容じゃないと思うんだけど。明るく話せるんだったらいいね。取り合えず《(フォス)》」


 アーサーの魔法が発動され見えなかった洞窟の先まで照らされる。


 それと同時に奥から金切声が聞こえてくる。それから何かが羽ばたいている音がどんどん近づいてくる。


「どうやら蝙蝠系の魔物が多いみたいだ、先に進もうか」


「狭いところで戦うよりここで待って広いところで待ち受けた方がいいのではないのか?」


 俺の疑問にアリナが答えてくれる。


「それはね、迷宮内じゃないと魔物が魔石にならないからなの」


「なるほど」


「ソウヤ知識が無さすぎじゃないかい」


 アーサーに苦笑されながら文句を言われてしまった。


「仕方ないでしょ。昔の記憶が無いんだから」


「そいうことなんだね。そうとは知らずに失礼なことを言ってごめん」


 俺は気にしていなかったのだが、アリナが反論してくれて、アーサーに謝罪された。


「気にするな」


 俺は記憶が無い扱いなのか、そのうち話さなければな。


「来るよ、〘蝙蝠(ナイチテリディア)〙だ、迎撃する」


 その言葉を合図に俺とアーサーが前に出て、アリナが下がる。


 事前に決めといた陣形だ。


 大量の蝙蝠がこちらにやって来たと思ったが、通常の蝙蝠より一回り体が大きく、一つの大きな目よ大きな口の二つが顔を占めている異形だった。


 なんだこいつ。


 取り敢えず棍を構え近くに来るのを待ち受けていると、十体程度の群れが来る。


 近づいてくるほどに異形さが分かり多少の恐怖が湧いてくる。


「今だ、ソウヤ」


 掛け声に合わせて棍を斜め上目掛けて横に振ると二体の蝙蝠に当たり、蝙蝠を粉砕する。粉砕した後の蝙蝠は気にせず、次に備えるがすでに蝙蝠は接近しており、腕に噛みつかれた。


 痛みに堪えるために歯を食い縛り、蝙蝠に棍を当て、粉砕する。これで三体倒したが残りは全てアーサーに集まっていた。


 そこに石が飛んできて、蝙蝠の目に突き刺さり、蝙蝠は魔石に変わる。アリナが石を飛ばしてくれたようだ。


 これで残りは三体になっている。


 俺はアーサーから一番遠い端の一体を倒し、アーサーが剣を振るって一体を斬り倒した。最後の一体はアリナが飛ばした石が貫く。


 痛っ


 焦っていて忘れていたが腕を噛まれたのだった。


「大丈夫かい?」


 痛みはあるがそこまで歯は食い込んでいなかった。


「そこまで深くは噛まれていないはずだ」


「なら《治療(セラピア)》、治療魔法を掛けておいたから時間が経てば治るはずだよ」


「ありがとう」


 即時には治らないのかと落胆するが、普通に考えて即時回復なんて不可能だよな。人の細胞分裂には時間がかかるからな。


「魔石、十一個あったよ」


 俺の治療の間に集めていてくれたようだ。


「ありがとう、アリナ」


 礼を言う。


 初めての戦いだったが、正直アーサーが声を掛けてくれなければ恐怖で動けなかったかもしれない。それに加えて魔物が魔石にならずに死体になっていたら恐怖が俺を支配していただろう。


 結構危ない状況だったことを振り返り気を引き締め直す。


 気を引き締め直したおかげか何度か蝙蝠の群れに襲われたが、最初の戦闘以降は特に怪我もなく順調に迷宮を攻略していった。


「ソウヤ、アリナ一つ謝っておきたいことがあるんだ」


 俺とアリナが同時に聞き返す。


「なに?」


「なんだ?」


「実はここ、学生が攻略するようなレベルの迷宮じゃないんだ」


 それはさっきアリナから聞いた。だからこそ、無事に攻略した時の成果が大きいというものだ。


「そんなの俺たちが最後だからなんだろう」


「それだけじゃ、こんな高レベルなダンジョンが割り振られるわけないんだよ」


 そんな攻略が難しいとは思わなかった。


「このダンジョンが難しい理由は深層にAランク越えの魔物がいるからなんだ。そしてそんなダンジョンが割り当てられた理由は僕がいるからだろう」


 生徒だけではなく先生にも嫌われているのか。


「僕はね、勇者家の人間だから貴族なんだ。それでこの国は身分の差が大きいから僕みたいな身近な貴族に平民は仕返しをしたいんだろうね。平民とか貴族とか王族とかっていうのを気にしない世の中が一番いいんだけど」


 なんだそりゃ。先生が生徒にまでやるのは違うだろう。


 そもそも、貴族からやられたことを全て勇者家に仕返しするのは間違っている。


「今回は先生たちが僕が怪我を負うか、できれば死んでくれればいいと思ってやったんだろうね」


「「アーサーは悪くない」」


 今度は言ったことまでもが被ってしまった。


「これから何が起きようとも気にしなくていい。悪いのは全てこれを仕組んだやつだ」


 今回のような何もしていない人間が悪いことなんてない。


「俺たちだけでここを攻略して俺たちの名前を広めようぜ。そうしたら他の連中も簡単には手を出せないだろう。それでいいよな、アリナ」


「当然だよ。 我らに正義ありって示してやればいいんだよ」


「そうだね、僕は勇者としてこれから生きていくんだからこの程度やって見せなきゃ」


 どうやら、アーサーもやる気が出てきたようだ。


 大きな怪我ゼロで帰ってやって俺たちの力を見せつけてやればいい。そうすれば、どうせ直接的にはどうにも出来ないやつらでは簡単には手を出してこれまい。


 進むたびに蝙蝠の群れが出てきてそれを処理する。


 これは魔力溜まりが増えてきたことを意味するが、簡単な作業ではあったのでだんだん動いている敵に棍を当てるのにも慣れてきた。


 アーサーの話で俄然やる気がでてきている三人は足取り軽く、最下層まで到達する。


「ここからが本番と言っても過言ではないから、しっかりと準備していこう」


 最下層に降りる道で三人で軽食を取りながら話し合いをする。


 まずは、《(フォス)》で周囲を確認して魔物を把握、その後俺とアーサーが前に出て攻撃


 そして、隙を見てアリナが石で攻撃


 これだけで、道中と変わらない。


「では、始めようか《(フォス)》」


 三人で壁に隠れながら、魔物を探す。


 すると、直径五十メートルぐらいの円形に近い空間の奥の壁に寝ているであろう魔物を見つけた。


 赤い肌に豚のような顔、座り込んで寝ている状態で二メートルはありそうだ。


「寝ている内に一気に決めよう」


 小声でアーサーが言い、俺とアリナが頷く。


 ゆっくりと近づいていきアーサーが右、俺が左から武器を降り下ろし、アリナが正面から大きめの石をぶつける。


 三人が全力を尽くして攻撃をしたが、俺の魔力がこもった棍は皮膚に弾かれ、アリナの石は顔に命中するも石が砕けて傷一つ付かない。アーサーが降り下ろした剣のみが皮膚を少し切った。だが、それだけだ。


 深い傷は付かなくても衝撃はあったようで魔物が起き上がる。


 立ち上がると二メートル半ぐらいの身長で足が短いわりに腕が長い元の世界で伝わるオークのような見た目なのがよくわかる。


 目が血走っていて確かな殺意が感じられる。

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