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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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家に帰るまでが迷宮探索

 俺はかなり頑張って鎖を上りきった。


 何で鎖にしたんだろう。頑丈ではあるが、非常に上りにくい。何かあった時用に鎖を垂らして、横に縄を垂らしてほしい。もっと言えば梯子をかけてほしい。


 俺が疲れて立ち止まっているとアリナが足をバタバタしだした。俺はしゃがんでアリナの足が着くようにするとアリナはすぐに俺から離れる。


「アリナの想像よりも脚が短かったのか?」


「そういうわけじゃないよ。届いたらいいなくらいだったし、ソウヤなら直ぐに気づいてくれるでしょ」


 俺はアリナの思い通りに動いたという事か。アリナが下りなくてもアリナの体重なら家まで運ぶ事は可能であろう。


「俺の魔力は後少ししかないからよろしく」


「ここまで上ってくれば魔物と遭遇する可能性は低いから大丈夫でしょ。今日で迷宮とはおさらばだね」


「ここで気を抜いて永遠に迷宮の中にいるという可能性も考えられる。最後でも変わらず注意を払った方がいいと思ったが、いつもそんなに払っていなかった」


 いつもからそんなに払っていないのだから、今気を抜くのは仕方のない事か。途中でまたリリと会えればリリが代わりに警戒してくれるのだがな。


 だが、リリはもう新しいパーティーを組んでいるかもしれない。そうなったら手伝って貰うわけにはいかないな。パーティーとのコミュニケーションの時間を奪えば連携を取りにくくなるかもしれないから邪魔は出来ない。


「今私たちが死んでもきっと迷宮の外に出られるよ。ナメクジの魔石があるんだから、その付属として私たちも持って帰るでしょ」


 超激レア魔石と一緒に置いてある魔石は凄そうに見えるだろうな。実際はナメクジよりも劣っている普通の魔石ではあるが、探索者ならきっと持ち帰る。俺たちは道に沿って歩いているからきっと見つけてもらえる。


「俺たちが魔石になったらどのくらいで売れるんだ?」


「人の魔石には価値がつきにくいよ。人身売買と一緒という事で非人道的って文句を言ってくる人が最近増えたからね」


「そんな事に文句を言うよりも先に人身売買を無くす努力をしたらどうだと言いたい所だ」


 減ってはいるらしいが、人身売買はまだ存在している。奴隷になるのは借金で首が回らなくなった家が子供を売るというのが多いみたいだが、人を拐ってきて売るというのがあるようだ。人身売買さえ無くなればこの人拐いは無くなるが、人身売買が無くなったら借金した家はどうすればいいのかという問題もある。


 問題を一つ無くせばまた一つの問題が出てくる。結局人身売買のような物事には需要がある。需要があるから存在できている。その需要には代替え品を提供するしかないが、不正なものによって満たされていた代わりを正当なもので満たすのは難しいのだろうな。


「そうなっているなら、人の魔石はどうするんだ?」


「警察に届けるのが基本だね。警察が遺族を探して、もし遺族が見つからなかったら処分らしいよ」


「処分?」


「うん。具体的な処分の方法までは知らないけど、何かに使っているんじゃないかな」


 魔石を扱える人間が警察内にいれば魔法具になるだろうが、いなければ売られるのかもしれない。国に渡すとかもあり得る。


 処分の方法よりも遺族が魔石をどうするのかの方が気になる。遺骨のように扱うのか、魔法陣を彫って魔法石にするのか。どちらの方が多いんだろう。


「度々聞いているが俺の魔石を手に入れたらどうするつもりなんだ?」


「大事に保管するよ」


「遺骨みたいにか?」


「遺骨というよりはお守りみたいにすると思う」


 お守りか。魔石なら持ち運びをしやすいからお守りにされるのもいいな。


「それなら結界とかの魔法陣を彫ったらどうだ?」


「物理的なお守りじゃなくて、霊的なお守り。ソウヤが私の事を守ってくれるの!」


 物理的な守りがあった方が安心できると思って言ったのだが、そういう事ではないようだ。死んでも俺を頼りにしてくれているのは嬉しい。


「死んでも守るよ」


「急に超絶イケメン。でも死なずに守ってね」


「ああ。できる限り。話が逸れた。魔石になった時の話をしていたんだから、元から死んでいる」


「そうだった。急なイケメンに驚いて忘れてた」


 そんなにイケメンだったか?思った事を口にしただけの考え無しだったんだがな。考え無しで言った事をイケメンと言われると、狙って言うのは難しい。考え無しのまま口に出して変なことは言いたくないし、ふと思った事の発生場所は自分でも分からない。


 今回に限っては若干分かるのだが。今回はアリナの事を好きな気持ちが発生源の可能性大。アリナの事が好きな気持ちから湧いてくる言葉をそのまま話せば普通に好きって言ってしまうから、できる限りフィルターを通さなくてはいけない。


「そういえば、気を緩めてはいけない的な話を上った所でしなかったか?」


「したけど、これがデフォルトじゃない?」


「そうだな。このままでもいいか」


 二人で話しているのは幸せだから、この状態で不意打ちを喰らって死ぬなら幸せなまま死ねるから逆にいいかもしれない。


 不意打ち以外での戦闘ならSランク武器さまさまで負ける気がしない。だが、ナメクジの少し下よりも上の実力の魔物には殺される自信あり。Sランク武器であろうと扱う者の実力不足で殺される。


「そういえば、任務を無事達成できたから、帰りにうな重を食べに行こうか」


「そんな事言ってたっけ?」


「忘れているなら思い出さなくてもいい事だ」


「思い出した。私の事を思いっきり投げ飛ばしたからうな重を奢ってもらうんだった。私は少し高い所をぷかぷかと浮くつもりで頼んだのに物凄い高さまで飛ばされて怖かったんだよ。私の伝え方が悪かったとしても、投げすぎ」


「すいませんでした」


 何も言う事はない。俺もあそこまで飛ばすつもりはなかったのに飛ばしてしまったのだから俺が悪い。他の人には伝わらないとしても俺には伝わっていたから尚更俺が悪い。


「うな重は松を頼むか」


「そんな高いのは頼めないし食べきれないよ。だから梅で十分」


「せめて竹を頼んだらどうだ?謝罪の気持ちを表すために行くのだから多少は良いものを頼んで欲しい」


「謝罪をしてほしいわけじゃないんだよ。ただ、口実が欲しかっただけだから」


 うな重を食べたいと言ってくれればできる限り連れていくのだがな。高頻度で言われたら俺の金が無くなってしまうからそれはできないが、時々くらい外出許可を貰って行けばいい。アリナがしたい事はできる限り叶えてあげたい。


「私は梅を頼む。これは絶対に曲げないよ。ソウヤは好きなの頼んで、竹でも松でも」


「俺も梅だな。アリナより高いものを頼むわけにはいかない」


「気にしなくていいのに」


 俺は気にする。今回は本当に申し訳なく思っているから気にする。アリナの気持ちを考えられずに軽率な事をしてしまった反省を示さなければいけない。アリナと良好な関係を続けていく上で俺が終わった事としてアリナに気を使わなくて済むように。


「入り口が見えてきたよ。かけっこでもする?先に迷宮から出て、草地を踏んだ方が勝ち」


「いいぞ。スタートの合図はアリナが出してくれ」


 俺が有利な勝負だから、合図を出す有利を上げなくてはいけない。


「ソウヤ!後ろ気を付けて!」


 アリナの慌てた声に急いで振り返り刀を抜く。


「どん!」


 後ろには何もなく前を向いたらすでにアリナが走り始めていた。俺も慌てて走り始めて何とか追い付こうとするが、最初のリードがかなり大きく中々追い付けない。その差は少しずつ縮まりはしたが結局追い付く事なく先にアリナが迷宮から出て草地を踏んでいた。俺もそう時間差なく草地を踏みはしたが負けてしまった。


「ずるいな」


「権利を最大限行使しただけだよ。勝ったご褒美はどうしようかな。考えておくよ」


「ご褒美まで付いた勝負だったのかよ。でも、俺も任務達成をしたからアリナからご褒美を貰えるな」


「そうだったね。でも相殺はしないから。それぞれが相手にご褒美を貰えるという事で」

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