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異端者の吸収  作者: 寫人故事
3-1章 迷宮の魔物
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ナメクジの触手

キャラ紹介を除いた本編だけの話数だと、この話が百話目です。完結まで、この話に付き合っていただけると嬉しいです。

 俺は上の階層に入ってからすぐに斜め後ろに体を飛ばして何とか触手から逃れる。


 天井を壊すのにかなりの魔力を使ってしまった。早く仕留めなければ魔力が尽きる。


 俺は開けた穴から伸びている触手を地面すれすれの所で斬る。出ている触手は全て斬れたのだが、触手は血を吹き出しながら微動だにぜず、穴を塞いだままでナメクジの元に向かえない。仕方なく俺は穴の上で剣を振り上げ、出来る限りの魔力と共に触手の束に突き刺した。


 風を巻き起こしながら大量の魔力が穴の触手に衝突を繰り返して、穴を埋め尽くしていた触手は消え去った。俺は穴から下に下りてナメクジに注意を向けながらゆっくりと離れていく。


 俺の魔力はすでに限界に近い。今の状態より少なくなれば剣でナメクジを斬れるほどの魔力を纏っていられない。


 触手は辺りをキョロキョロしているように先端を色々な方向に向けている。すると全ての触手は一ヶ所の方向を向いた。アリナがいるような気がする。


 俺は魔力を使って全速力でアリナの元に向かい、アリナを抱えてからすぐに移動を開始したが触手が向かってきている。俺の魔力はすでにカツカツで触手の届かない範囲まで逃げ切るのは不可能だ。


 俺は曲がり角で曲がった瞬間に持っている魔力を周囲に展開する。


 迷宮の整備されていない自然のままの地形が功をそうした。壁の凹んでいる所にアリナを押し込んで、俺はアリナが出られないように自分の体で凹んでいる部分を塞ぐようにする。


 周囲に展開した魔力で魔力切れになっている俺に気づけないはずだ。それに俺の[吸収体]で周囲の魔力が薄くなっても俺の魔力では分からないだろう。問題はアリナの魔力だが、アリナの魔力はどうしようもない。気づかれないように祈るだけだな。


 少しアリナを壁に押さえつけているままでいると背中にひんやりとした何かが当たった。それからひんやりとした何かは俺の体をなぞるように動き出す。この何かは何だか濡れている気がする。


 俺は何かをどかしたいのを我慢してじっとしていると、今度は首筋にもひんやりした物がくっついた。それはとてもヌルヌルしていて非常に気持ち悪い。触れているだけならまだ少しの嫌悪感で済んだのだが、それが俺の首筋をスーッと動いていく。その瞬間に全身に鳥肌がたったがそれでもじっと堪える。


 これはたぶん触手だ。ここで動けばアリナ諸とも串刺しになる。少しも動いてはいけない。気持ち悪い感覚に耐えて触手がいなくなるまで動いてはいけないのだ。


 ただ、その耐えるのは想像以上に辛く吐き気がしてきた。早く戻ってくれ。このままでは吐いて触手に気づかれて串刺しだ。そんな俺を見かねてかアリナが俺の体に静かにくっついた。このくっついた状態のお陰でアリナの魔力を感じられる。その優しい魔力は俺の吐き気を治めて、触手の不快感から少しだけ意識を逸らしてくれる。


 触手の感触は永遠にも続く時間感じれて、アリナの魔力は一瞬に感じられる。その両方を同時に感じている俺は普通の長さで時間を感じられたのではないだろうか。少しして触手が勢いよく戻っていくのがよく分かる。帰りぐらい俺から離れて戻ってほしかった。


「助かったぁ」


「守ろうとしてくれてありがとう」


「気にするなと言いたい所だが、助けた代わりに帰ったらすぐにシャワーを浴びれるようにしてくれとも言いたい」


 ナメクジの粘膜は触っていいものではないらしいし、触手が戻っていった時に俺の首が思いっきり擦られてヒリヒリするから早く処置を施したい。


「任せて!急ぎめで帰ろう」


「俺は魔力が尽きているから魔物が出たら何とかしてくれ。一応刀で戦えるけど頼む」


「私も魔力が少ないから浮かせたらすぐに止めを刺して」


 俺は頷いてすぐに帰り始める。アリナが道案内のために先導してくれているから死角から来ない限り対処出来る。対処するのはアリナなんだが。


 俺の[吸収体]で自分の魔力を回復出来ればいいのだが[吸収体]に吸収された魔力は消える。もしかしたら魔力を溜めているかもしれないし、どこかに捨てているだけなのかもしれない。捨てるぐらいなら魔力を吸収して欲しくない。相手の魔法を消せるメリットよりも魔法を使えるメリットの方が絶対に大きい。


 次はスキルが手に入る事と魔法が使える事を比べるか。スキルの入手はかなり難しいらしい。俺も自力で手にいれたというか何故か持っていた[吸収体]だけで、それ以外のスキルは[吸収体]で手にいれたものだ。


 魔法は詠唱で簡単に発動できるが種類が多い。使い勝手的には魔法の方が良さそうだ。スキルは入手困難だとしても扱いが難しいから魔法の方がいいな。魔法が使えれば俺の多めの魔力がかなり活きてくる。


 結論としては[吸収体]は持っていない方がよかった。ネガティブに考えていても仕方ないから[吸収体]の良いところを考えよう。スキルを手に入れられるお陰でファフナーを召喚出来るようになった。これはかなりでかい。短時間だけでも《式神降霊術》で身体の強化を出来るのは結構いい。


 [魂]は俺の戦力をかなり上げた。タイミングを図らなければいけないが、たぶん不可避の技だと思う。手の届く距離は短いし魂を見るために視界を奪わなければいけないという弱点もあるが、それでもプラスだろう。


 考え事をしていると自分の想像以上に回りが見えなくなる。そして気づいたら道の少し先に虫系の魔物がいる。結構近くに行くまで全然気づかなかったのはかなりの不覚。


「どうする?」


「どっちでもいいよ」


「それなら戦うか。一瞬だけ浮かしてもらえればいい」


「了解」


 俺はアリナよりも前に出て虫に向かってゆっくりと歩きながら刀を抜く。刀が強いと魔力を纏わなくても刃零れの心配をしなくていい。勿論強い魔物の皮膚は固いから魔力を纏わせるのだが。


 俺としては刀が重い事が大きな問題だ。いつもは体に魔力を纏って力を底上げしているのだが、刀はやはり大部分が金属だ。そうなると重い。筋肉は[吸収体]で吸収しているから俺の体についている筋肉は多くない。むしろ少ない。


 刀は非力な俺が簡単に扱える重さじゃない。それでも頑張れば振り回せる。俺は虫の少し手前から振り始める。すると虫が俺の剣の軌道上に浮いてきて真っ二つになって魔石となった。


 刀が強すぎて振る速度が遅すぎても簡単に斬れた。


「場所とタイミング完璧だな」


「当然だよ」


 俺は魔石を拾いながらアリナに声をかけたが、アリナからすると当然だったようだ。ここまで息が合うと逆に恐ろしささえ感じてしまうものだが、アリナとなら当然かなと思う自分もいる。


「俺の読みが凄いな。本気で戦ったら俺ではアリナには勝てそうにない」


「そうかな。でも、私も何となく勝てる気がするよ」


 軽い試合なら俺が勝てるだろうが、本気で戦えばアリナの読みが全て当たると思う。本気になればなるほど俺は視野狭窄になるのが今までの事で分かった。そうなればアリナの読みを避けることが出来なくなるし、アリナの思い通りに行く。そして負ける。


 それにアリナを傷つける事はしたくないから、よほどの事がない限り俺は避けに徹するだろうな。そういうのもあって俺はアリナには勝てないだろうな。


 アリナに勝つ可能性について思案しながら歩いているとすぐに迷宮の入り口にたどり着いた。


「それでいい方法は思い付いた?」


「何も」


 ここまでアリナが俺を読めるなら、聞くまでもなく俺の答えは分かっていただろうに。俺としてはアリナと言葉を交わせるのは嬉しい事だからいいのだがな。

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