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異端者の吸収  作者: 寫人故事
2-1章 異世界での生活
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スキル検査

 受け付けにはアリナが行ってくれて、待っていると俺の番になった。


 俺が診察室に入ると診察室の中には大きな機械が置いてあった。


「それでは検査を始めますが、何か心配な点などはありませんか?」


「ないです」


 知らないものを心配する事はできない。


「では始めます」


 検査の方法は前回同様に謎の石を持つやり方で同じだが、持つ石は前回の時よりかなり大きくなっている。石が大きいお陰か石を握ってそんなに時間がたたないくらいの時間で離してよくなって、石は機械にセットされた。


 いい機械なのか結果はすぐに出て、その結果を医者がまじまじと見ているが心なしか医者の表情は曇っていっている気がする。結果を見終わった医者は石を機械から取り出して、また俺に石を渡してきた。


「もう一度お願いします。今度は体の内側から何かを出すイメージを持ちながら握ってください」


「分かりました」


 何かを出すイメージ。出すとなると何かの中に入っている状態から姿が露になるようなイメージ。こう認識して土の中から何かが色々なものを押し退けながら出てくるような感じのを体の内側にイメージして石を握り続けた。


 石は再び機械にセットされて結果が出た。イメージを持ってやった結果、無事に成功したようで、スキル検査の結果を渡された。


 結果を持って診察室を出て、真っ直ぐ出入り口に向かう。


「会計は?」


「最初に済ませておいたから大丈夫だよ」


「普通後払いじゃないか?」


「スキル検査は診察前から値段が決まっているから先払いできる仕組みになっているんだよ。結果が出なかった時は一部払い戻しになるけど」


 なるほど。払い戻しになる可能性があるなら後払いの方が楽な気がするが、そうなっていないという事は結果が出ない確率が低すぎるという事だろうな。


 だというのに学校と病院で一度ずつ失敗したのか。これは案外凄いかもしれない。確率的には凄いが、完全に失敗していたら一部を払い戻しになるだけで、全額は返ってこないから損だったな。ギリギリセーフ。


 俺たちは家に急いで帰って、結果をアリナと一緒に確認する。



 診断書


 吸収体 A



 スキルは一個だけか。この一個のせいで俺は魔法を使えないとは。


 俺が落胆しているとアリナは喜びの声をあげて、俺はその声に驚かされた。


「どうしたんだ?」


「スキルAだよ!」


 確かにAと書かれてはいるがどんな意味を持つのか俺は知らない。


「Aだとどうなんだ?」


 俺の発言にアリナは驚き呆れている。俺の知識不足は仕方ない話ではあるが、アリナは俺の事情を知らない。


「スキルというのはE~Sまであって、SはAの次だから、六段階の内の上から二番目」


 なるほど。それは凄い方だな。だが、魔法が使えないデメリットからすると全然嬉しくない。格好いい魔法名を言いながら魔法を撃ってみたかった。


「このスキルのせいで魔法が使えないんだ」


「でも中ランクの魔法よりAランクスキルって言われているよ」


「ならいいか」


 高ランクの魔法を使えるか分からないから得をした気がする。


「俺は魔法の実技は0点か」


 気づいてまた落胆する。実技で点が取れなかったら筆記で稼ぐしかない。俺は筆記は点数を取れそうではあるが、もし万が一やらかした場合は留年まっしぐら。


「大丈夫。私も魔法は使えないから」


「それを聞いても喜べない」


 同じ立ち位置に人がいても、そこが最下層だから全然喜べない。


「実技で点が取れなくても大丈夫な方法を知っているよ」


「それは喜べる。アリナは神だな」


「神なら崇めて」


 そう言って両手を広げて天を仰ぐ謎のポーズを取った。そのポーズだと神というよりは神の加護を受けたい人に見える。


 俺たちは顔を見合わせて二人で吹き出した。


「何だよ、それ」


それからはもうずっと笑い続けた。何を言っても二人して笑ってしまうような幸せな空気感に包まれながら呼吸ができなくなるまで笑い続けた。


 そんなんだったから次の日起きたら腹筋と顔が痛くて痛くて起きるのが大変だった。それでも何とか体を起こして一階に向かったが、今日は珍しくアリナがいない。


 俺は玄関に行って靴を確認したが靴はあるから外出しているわけではなさそうだ。


「アリナ、いないのか?」


 俺はリビング、キッチン、トイレの前をアリナを呼びながら歩き回ってみたがアリナの返事は無かった。まだ寝ているのかもしれないな。


 俺は取り合えず朝ご飯の用意として、パンを焼いたりとか準備を終えてアリナの部屋に向かう。


 入らない方がいいとは言われているが、起こすくらいなら問題ないだろう。


 俺はドアをノックしながら呼び掛ける。いつもアリナが起きる時間よりも遅いから起こしても問題ないよな。


「アリナ、朝だ。起きてくれ」


 数回声をかけながらドアをノックしても返事が返ってこなかったから仕方なく部屋のドアを開ける事にした。ドアを開けて声が聞こえやすいようにするだけで部屋に入るわけではない。


 俺がドアノブに手をかけようとした時に、ドアノブに届く寸前に俺の手は何かに弾かれた。


 痛っ


 弾かれた手のひらはヒリヒリして痛むから、手を見てみたら真っ赤に染まっていて、血が出ている箇所が結構ある。おまけにアリナの部屋の中から警報音が聞こえてくる。


 これはまずいやつだな。逃げるわけにはいかないから、アリナが出てきた瞬間に謝罪をするの一択だな。犯人は俺で確定の状況で逃げるのはかなり不味い。


 すぐに警報は鳴りやんで、それから数分後にアリナが出てきた。


「こんなのがあるとは知らなくて。すいません」


 手がかなり痛む。傷口を直接触るわけにはいかないから傷から近い所を抑えながら謝る。できれば手を離して謝りたいのだが、想像以上に痛くて手を離せない。


「大丈夫?」


「いや、そんな事より申し訳なかった」


 そう言って頭を下げる。


「いやいや、そんな事より早く手当てをしなきゃ」


「俺の傷は大したことないから大丈夫だ。申し訳ない」


 誠心誠意謝り続ける。


「本当に申し訳ないと思っているなら謝っていないで、私の言うことに従って手当てを受けて」


「はい」


 あんな事を言われたら手当てを受けないわけにはいかなくなってしまう。


「怪我をさせてしまって、ごめんなさい。こんな事になる何て思ってなくて」


「部屋に入らない方がいいと言われていたのにドアノブに手を伸ばした俺が悪い。ドアを開けるだけなら問題ないと思ったが、ドアを開けるのはほぼ部屋に入っているよな」


「私の伝え方が悪かった。ごめんなさい」


 何故俺は謝られているのだ?明らかに悪いのは俺なのだがな。


「アリナは悪くない。俺に全て非がある」


 謝りあいながら手当てを受けて、今は二人でパンを食べている。


 今回の事で納得できた。何故俺のような奴が独り暮らしの少女の家に預けられたのかが。


 まさかアリナを守るためのものが存在していたとは。


「あれ、どういう仕組みになっているんだ?アリナは怪我しないのか?」


「あれは私が内側から閉めたドアに結界ができる仕組みがあるから私は大丈夫だよ」


 そういう事か。だが、効果が及ぶ部屋は多くないはずだ。


 実際、リビングのドアはいつも閉められているが同じような事が起きた事は当然無い。リビングに仕掛けると俺が不便過ぎるという理由からかもしれないから、リビング以外にはしっかりと付いている可能性はある。


 これから気を付けよう。


「ところで、魔法の実技はアリナはどうしているんだ?」


「急に話題が変わったね。それは、魔法発動を取っていないから問題ないんだよ」


 そういう手もあるのか。


「なら、魔法発動の代わりは何を取っているんだ?」


「魔法発動の代わりに取るのは魔法陣研究か魔法具研究だよ。私は魔法具研究だね」


 これは俺も魔法具研究を取れば一緒に研究をできるかもしれない。


「なら俺も魔法具の方に行きたいな」


「まだ、正式に決まらないなら、週の最後の日が一日中研究だから来てよ。それで決めたら?」


「そうしよう」


 何を作ろうか。ここ最近でこの辺りは結構見て回って思ったのは、この世界には娯楽が少ない気がする。魔法具で作る娯楽の物でパッと思い付くのはテレビだな。


「今はアリナは何を作っているんだ?」


「今は色んな所を手伝っているよ」


「それは大丈夫なのか?単位とか」


「手伝った所の論文に名前を載せてもらっているから」


 アリナのはかなりの裏ルートでは?そういうのは教授とかが論文の数を稼ぐのに使う手段ではなかろうか。アリナの傳が無ければできないから俺には無理だ。


 アリナの裏ルートよりも大事なのは論文を書かなければいけない事。俺は書いた事が無いのだが、書かなければ単位を落としそうだから困る。


 論文を書くのと論文掲載で何か得られるものが変わるならやる気が出てくるが一緒ならそこそこの力で書けば簡単に単位が取れそうだ。


 もっと大事な事を思い付いた。研究をするなら同志が必要だ。俺にはアリナしか友だちがいない。二人だけでの研究は厳しそうだがやるしかない。


「俺も魔法具の方に行くつもりだから一緒に研究をして欲しい」


「いいよ。楽しみに待っているね。それよりも来週のダンジョン試験大丈夫?」


「ダンジョン試験!?」


「知らないの!?」


 それからアリナはダンジョン試験について教えてくれた。どうやら来週、低ランクの迷宮に学生だけで行くらしい。低ランクの迷宮だと迷宮初心者だろうと割りと楽に探索できるレベルとの事だ。


「そういえば武器が無かったね」


「武器がいるのか?そこまでの事を学生だけで?」


「低ランクの迷宮にいる魔物は簡単に討伐できるから大丈夫だよ。ダンジョン試験は迷宮から魔物が溢れ出てこないために必要な事だからしっかりやらなきゃ」


 なるほど。人含め意識して生物を殺した事は無いが、大丈夫だろうか。蚊は数えないとする。


「武器を探そうよ。家にあるから」


 武器が家に置いてあるとは驚きだな。日本に住んでいた俺にとって殺傷能力のある武器は家に無かったからな。流石異世界。


 それからアリナに二階の奥の部屋に通された。中には剣や弓、薙刀とか多くの武器があって、アリナに説明をしてもらったが、俺の目に留まったのは棍だった。


 部屋の一番奥。入り口から正面の位置に他の武器とは明らかに違う風に置かれている。


「この棍も借りてもいいやつか?」


「お目が高い。それは家の武器の中で最高ランクのAランク武器〔砕滅棍〕。家宝だよ」


 あんな他と区別されているような飾り方がされていれば誰であろうとこの棍を選ぶだろうに。


「家宝を借りてもいいのか?」


「どうせ今回行く場所の魔物に傷を付けられるような棍じゃないから、失しさえしなければいいよ」


「これを無くせたら、もはや才能だ」


 この棍は長さが百七十センチメートルくらいはあるから失せるわけがない。これをどうやったら失せるというのだ。


 アリナは棍を取って俺に渡してくれる。


「庭で練習してきたら?」


「ありがとう、アリナ。今度何か恩返しでもする」


「それなら、料理を振る舞ってね」


「あっ…ああ、任せてくれ」


 前に約束したのに忘れていた。バイトの給料日が近いから給料日の後にしよう。今回の給料は働き始めが遅かったから余り期待はできないが。

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