第七話 なんだこいつら
無事?に指定魔獣を討伐し、提出素材もゲットしたのでこれから学園の野営地に向かうことになったんだが、その前に従魔である彼女達を一度帰還させることにした。
じゃないと学園側からいらん誤解を受けそうだったし。
二人に感謝の言葉を伝えてから、ご褒美は何がいいか聞いたら頭を撫でてほしいというなんとも可愛いお願いを受けたので存分に撫でまくりましたとも。
あ、頭以外の変なところは一切触っていないので誤解されなきよう。
二人ともめちゃくちゃ髪質よくてサラサラだった。香水なのか花のいい香りもしたし、二人そろって幸せそうに微笑みながらも頬を赤らめて…思わず抱きしめたくなるほど可愛かった!!
ずっと愛情込めて育ててきた従魔のこんなかわいい姿を見れるなんてもう感動ものですよ、生きててよかった!
…まぁ、一度死んでるけどね。
帰還シーンは登場シーンのような派手さはなく、カーテシーを行う彼女たちの体が色んな種類の花びらとなって散っていくという儚さを演出した感じでとても綺麗だった。
これから野営地に向かうにあたって一つ問題なのが場所はわかっているのかということ。
森の入り口付近といっても俺じゃわからないからな。二人にそれとなく聞いてみれば迷子にならないためのコンパスを持っているしなんなら鼻も利くから問題ないとのこと。
どういったものなのかと見せてもらったら懐中時計にコンパスをはめ込んだような感じだった。
ただ、普通のコンパスとは違って北の方向ではなく設定した場所への方向を指すといったものなので、設定場所を指す色がついてる方へ進めばいいらしい。
これなら確かに迷子にならずにすむな。流石に森の中に放り込むだけあって壊れたものを渡すような愚行はしなかったのは褒めるべきか。
二人の足ではここから野営地まで時間がかかると思うから、背中に乗ってもらって運ぶことにした。乗ることにめちゃくちゃ躊躇ってたけど、二日目だし時間も惜しいので襟をつかんでヒョイヒョイと背中に乗せ出発進行♪
勿論、落とさないように気を付けますとも。
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………う~ん……なんというか、野営地に近づくにつれて笑い声や話し声やらで騒がしく、なんか食べ物っぽい匂いも漂ってくる。まるで緊張感がない感じだがそれで大丈夫なのか?
もしかして、教師とかが結界かなんかを張ってるから安心地帯だし問題な~い、とか?
色々不安だがこっちには生徒が二人いるわけだし大丈夫か。
な~んてそんな気軽な感じで姿を見せたら、野営地は大パニックになりました。まる。
当たり前だよねぇ。のんびりしていたらいきなり三m近い魔獣みたいな亜人みたいな奴が出てきたわけだし。
生徒の中にに紛れていたらしい教師っぽい服装した奴が慌てて出てきたんだが、あろうことか背中にいるシュガルとレイフォンのこともお構いなしに攻撃魔法をぶっぱなしてきやがった。
角につけていた装飾装備のおかげで低レベルの攻撃魔法の無効化に成功したが、こいつ一体何考えてやがる!?生徒を巻き込むとかそれでも教師か!
「貴様、教え子を殺すつもりか?」
「魔獣が喋った…?!」
「我が加護がなければこの教え子たちは死んでいたのだぞ?」
「こ、この化け物が…!?」
「申し訳ありません。こちらも非常事態にて混乱していたものですから」
なんか別の教師が前に出てきて、さっき攻撃してきたやつを下がらせた。
服装の色が違うってことはこいつの方が立場が上ってことか。話の通じる奴ならいいが…。
「この程度で混乱とは、そなたらの教えは随分と理想論のようだな」
「すみません、エレガント先生。僕たちが連れてきてもらったんです」
シュガルとレイフォンが背中から降りて前に出る。
二人とも怪我をしてないようで安心した。あの後ろで震えあがってる教師野郎、てめぇの顔しっかり覚えたからな。
後方で騒いでいた生徒たちは二人の姿を見て少しは落ち着きを取り戻したのかなにやらひそひそ話を始めている。ひそひそ話といってもこの体のおかげで何を言ってるのかはっきり聞こえてるぞ。聞きたくもない話をシャットダウンできればいいんだが、そこも今後の課題だな。
シュガルとレイフォンの説明と素材の提出が終わったのか、エレガントと呼ばれていた(すげぇ名前だな、おい)女教師が再び顔をこちらに向ける。
耳を見ると種族的にエルフっぽいな。さすが、魔法学園らしいというべきか。
「初めまして、私はエレガント・チュートリアと申します。我がゴクラク学園の生徒の看病をしてくださったようでありがとうございます」
どんな名前だよ?!!
エレガントでチュートリアルなの?!!おもわず吹き出しそうになったわ!!
「…礼は不要である。我はあの子らの成長を見たいがゆえに手を貸したまで」
「落ちこぼれといわれているあの子たちが強くなると?」
「表面しか見ぬ貴様らではわからぬであろうな。故に、あの子らの蕾が摘み取られぬよう我が教え導くゆえにその邪魔は許さん」
「魔獣がなんとも傲慢な態度ですね。彼らは我が学園の生徒です、そのようなことはけして認められません」
「その教え子にろくな知識も与えず、愚者が優越感に浸るためにかのような者がぞんざいな扱いを受けておるというのに見て見ぬふり、さらには罪なき命を平然と奪い多大な被害をもたらさんとした輩を許す存在がまともとは到底思えんが?」
「っ、我が学園を侮辱するのですか?!」
「事実である。実際、我が雨を降らさねば森に多大なる被害をもたらしたであろう。それとも、貴様らは森が焼け、幾多の命が奪われ、住処を奪われた者たちが嘆き飢えようがどうなっても構わぬと?」
「それは…ですが、我々が手を出さなくとも森は時間をかけて元に戻ります。それがありのままの自然の姿で…っ」
「笑止!貴様らは森が、命が死のうが責任を負う気がないだけである!貴様のいう学園とやらは快楽殺人者を育成する機関に他ならんっ、そのような場所に彼らを置いておけるはずもなし!」
「殺人…!?ふざけないでっ、我が学園は数々の優秀な魔法師を輩出してきたのよ!今の発言を取り消しなさい!!」
話が通じるかと思ったが面倒だなこの女教師。森を大事にしないとかそれでもエルフか、お前。
マントで見えずらくはなっているけど右手になんか小型の杖を握ってて、いつでも攻撃できるようにしてるのか先端がバチバチと光ってるし。
どの程度の攻撃魔法かは知らないが、至近距離から撃ってこられたら流石に心臓に悪いっての。
「きゃぁぁぁぁ?!先生が魔獣に襲われてる?!」
このままだと話が平行線になりそうでどうしたもんかと思っていたらなんかすげぇ場違いな感じの悲鳴?が…。
なんだなんだと声の方を見てみるとそこには…なんじゃ、あの見るからに自分たちこそ物語の主役と攻略対象ですと言わんばかりの無駄にキラキラオーラ放ってる集団は。
異様なほど派手というかまるで蛍光色みたなカラフルさというか、服装まで他と全然違っていていかにも改造しまくってますって感じ。とにかく目に悪い。シュガルとレイフォンに悪影響を及ぼさないようそっと視界を遮り、なるべく遠くに避難させておく。
その集団の中にいるどこにでもいそうな極々平凡な見た目の女子生徒とその後方にいる呆れたような諦めたような死んだ目をしている令嬢がいるが、令嬢の方はキラキラ集団の方を見ているので悲鳴を上げたのは平凡な方か。
正直に言おう、めちゃくちゃ関わりたくない。
「なんでこんなところに魔獣が!?」
「先生方の結界魔法で入れないはずなのに?!」
「すぐに先生を助けるぞっ」
「待って、皆っ。私ならあの子を森に返してあげられる!」
こいつ、何言ってんの?
森にお帰りって、俺はあの有名な蟲か?
「だが、危ないぞっ。もしお前に怪我なんてことがあったら…」
「大丈夫。皆、私を信じて!」
「…わかった、君を信じるよ。でも、もし危険だと判断したらすぐに助けに入るからな」
「ありがとう。皆私の言葉を聞いてわかってくれたもの。今回だってきっとあの子もわかってくれるわ」
いやいやいやいや、何わけのわからんこと言ってお前らだけで完結してんの?
あの頭のおかしい変な女が近づいてくるけど、なんか気持ち悪いくらい不吉なオーラ放ってて嫌悪感半端ないんだけど!?
なんか差し出してきた手から真っ黒い泥みたいなの出てきて、もう鳥肌がやばいってマジで近づいてくんなよ!
「さぁ、もう大丈夫よ。私たちはあなたを傷つけない、だから安心して…」
「その穢れた手で触れるな」
触れてこようとした泥にまみれた手を、前足を浮かせて地面に思い切り叩き付けることで遮る。
その衝撃で触れてこようとした女がキラキラ集団の方に吹っ飛んだが、これは正当防衛だ。
「きゃぁあ?!」
「ディップ?!」
「大丈夫か?!」
「このっ、魔獣ごときが!お前を助けようとした心優しいディップに何をする?!」
ディップと呼ばれた女に群がるように駆けつけてきた集団連中のうち、眼鏡をかけた灰色の髪をした男子生徒がいきなり俺に向かって中二病丸出しの詠唱を使って炎魔法をぶっぱなしてきた。
どうしてこう、どいつもこいつも考えなしに攻撃魔法をぶっぱなしてくんの?!やっぱりあのクソ教師ども碌な教育してねぇだろ!
足元から俺の全身を囲むようにして火柱が上がるも、これも見た目が派手なだけでやっぱり低レベルなのかあっさりと無効化に成功。それを唖然とした顔で見てくる眼鏡男子とキラキラ集団。
こっちはいきなり火に囲まれてめちゃくちゃ怖かったんですけど?!
…ってか、火柱ってあの火事を引き起こしたのお前かよ!?そのメガネは飾か、こら?!
正気を取り戻したのか、ありえないとかなんとか騒ぎ出してこっちの話は全く聞き耳持たず。
もうこいつらの相手が面倒になってきたので装備品を取り出し全員眠り状態にして放置。それを見たエレガント教師たちが顔色を変えて駆け寄り、殿下殿下と騒ぎながらこれまた無駄にご立派なテントへと急いで運んでいった。
なるほど、あのキラキラ集団の中でも特に無駄に輝いてた金髪が王族の王太子ってやつか。あれ、そうすると俺とんでもないことした?
ま、まぁ、最悪二人を連れて逃げればいいわけだし?俺には頼もしい従魔たちがいるわけだしぃ?大丈夫、大丈夫!
後方でずっと見ていた令嬢が俺に頭を下げてテントに向かっていったが、なんか見た感じあのバカ連中の尻拭いをさせられてるようで可哀そうな子だな。
先程、安全なところに避難させておいたシュガルとレイフォンを呼べばこの後は今夜の野営の準備になるらしい。明日には帰るといっても野営地でわざわざ野宿する必要はないから、学園から支給されるテントなどを取りに行ったのだがあのクソ教師…。
「我が学園のものを使うのは嫌でしょうから、すべてご自身で用意なさったらいかがですか?」
などとニヤニヤしながらそうほざきやがった。
ふーん?いい度胸じゃねぇの。
そっちがそういう態度をとるなら、こっちはこっちで好きにやらせてもらおうじゃねぇか。
誤字を指摘してくださった方ありがとうございます。
無事に訂正いたしました。




