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第三話 これってどういう状況?



戦闘によって亡くなってしまった魔獣たちの供養を終えた俺は、食料調達と水の確保をすべく森の中を出来る限りの早足で散策中。歩くのにもだいぶ慣れてきたかな?

天にも届きそうなほど巨大な大樹が目印となってくれているので方向性については問題ない。

森で騒ぎがあったからか野生動物たちは姿を隠してしまっており、魔獣たちも息をひそめているらしい。

こちらとしても危険な魔獣と遭遇せずに済んでいるので大変ありがたい。


色々散策していると食べられそうな木の実や果物らしいものが沢山見つかった。

ただ、どういった食べ物なのかわからないので迂闊に食べられない…と思ったけど【状態異常無効】のスキルを習得しているのでまったく問題なかった。

試食してみると不思議な触感だったりよく知ってる味だったり、なぜか見た目とは真逆な味だったりと面白かった。


いくつか採取して摘まんでいると数匹の小さな野鳥が飛んできて角に止まり羽休めをはじめたらしい。

死角になるので見れないが、きっと歩いている振動でユラユラ揺れているに違いない。

くっ、別視点から見ることが出来れば最高に癒される場面であるのに!

そんなことを考えながら歩いていれば、日が沈んで辺りが暗くなってしまった。

今夜の寝床はどうしたもんかと考えていれば先方に淡い光が見えたので、そちらに向かってみることに。


だいぶ近づいてきたのでまた木陰からこっそり覗いてみると、なにやら学生っぽい子を発見。どうやら野宿するために焚火を作っていたらしいが…なんというかお粗末な作りだな。

異世界らしい不思議な学生服を着ている子が二人、でも俺がここまで近づいてるのに全く気付いてないみたいだし…大丈夫なのか?



「すっかり、日が暮れましたね」


「そうだね。魔獣との戦闘を極力避けるために迂回してたらあいつらがいきなり大魔法をぶっぱなすわ、その後豪雨になるわで散々な目に遭ったよ」


「でも、雨のおかげで山火事にならなかったのは幸いです」


「それはそうだけど…」


「あのまま火が燃え広がってたら、僕たち今頃どうなっていたか…」



どうやら学校の試験か何かでこの森に来たらしいな。そういえばうろ覚えだけど物語でも主人公は学校に行っていたような…?

覚えていないそんなことよりも学生たちをよく観察してみればまさにビックリ仰天!


一人はバステト族の男の子。

本来であればイエネコや雌ライオンの顔に人間の女性の体を持つ様々な神と同一視された女神なのだが服装から彼は男の子だった。

まだ子供なので黒豹ながらも子猫っぽさが残り可愛い顔つきに、引き込まれるようなほど澄んだ黄金の目、そこに金のアイシャドウが施されより目の美しさを引き立たせている。

漆黒の毛並みをしているが後頭部からうっすらと金の斑模様を持っているようだ。尻尾は細長く先端付近に金色の三本ラインが入っている。

体の構造は人間っぽい、ただ服を着ているのでわかりずらいが人の体ではなく毛並みに覆われてる獣人の体といった感じか。見えてる手も毛で覆われているし。

俺もまだ育てたことがない種族でネットで話を聞く程度だったが…こ、これはめっちゃ可愛い…!

大人になればカッコよさと神々しさが目立ってくるんだろうが、これはこれでありですわぁ。

でも武器を持ってないようだが、隠し持ってるのかな?


次に焚火の火を頑張ってつけているのが、まさかの俺が楽しみにしていた復刻イベントのメインと言っても過言ではない雪豹族!

豪雪地帯にのみ生息するはずの雪豹族が何でこんなところに!?イベントだって主人公が雪国に移動し、連れてくるにしても専用の道具が必要なのに…。

雪豹族は男の子で腰にはレイピアを下げている。なんで彼が火の担当をしているんだ、あの子は彼の顔色の悪さに気付いていないのか?

当たり前だが雪豹族は火に弱く天候の温度も天敵になる繊細な種族なのだ。繊細というか極寒生活からいきなり南国生活なんてどう考えても無理。


ハラハラしながら見てるとなんとか火をつけ終わったようだが、木が足りてないから今にも消えそうなほど弱い…頼むから気付け~っ。

彼らが焚火を囲んで座るとカバンから携帯食料を取り出したんだが、なぜか誰も手を付けようとしない。



「今日は野宿かぁ…雨のせいで気持ち悪いのにこのまま寝なきゃいけないなんて……お風呂入りたい」


「…仕方ないですよ。指定魔獣も逃げてしまったようですし…明日、奥の方を探すしかないかと…」


「レイフォン、また眩暈か?もう横になるか?」


「いえ、大丈夫です…」



うん、どう見ても大丈夫じゃないうえに落ちこぼれ組といったところか。あの様子だともし指定魔獣というのに遭遇しても勝てるのか心配になるんだが…。


ここまで聞いた話を俺的にまとめると、学生たちが授業の一環として学校から指定された魔獣の討伐に来たらしい。

俺があの時に見た火柱もほかの学生が放った魔法だったっぽいが、学校側は魔法による二次被害とかの危険性を教えていないのか?ちょっと教育について物申したいところだな。

話は戻すがこの二人も討伐に来たはいいものの見事なまでに落ちこぼれ組だから一部のクラスメイトからの嫌がらせを受けており、目的の魔獣を見つけることも出来ず野宿する羽目になったと。持ち物は学校から支給されたものなんだろうが、干し肉に固そうなパンだけ。あれは確かに食う気がわかないのもわかる。

これも授業の一環なんだろうけど明らかに野営の基本すらできていない。学校からきちんと教えてもらってないのか?

焚火は魔獣だけでなく野生動物からも身を守るために常に火をつけていないといけない、それなのに木の枝の予備も集めていないしあの様子じゃ確実に二人とも寝るだろう。

そうなったら夜目が利くとは言っても夜の森は危ないから移動なんて出来るはずもない、魔獣にとっては格好の餌。


確実に死ぬぞ。


かといって俺が出て行ってもいいものか…。

でも、あれだけ楽しみにしていた復刻イベント限定の超激レアな雪豹族とめっちゃ可愛いバステト族を前にみすみす見殺しになんて出来るはずもない!!

俺は意を決して木陰から出る。



「な、なんだ!?」


「あ、火がっ?!気を付けてください!」



やばい、俺が出てきたせいで火が消えてしまったらしい。彼らを刺激しないようにゆっくりと月の光が当たる場所まで進む。

全身が見えるであろう場所までなんとか進んだら、二人とも武器を構えたまま驚愕した表情で俺の事を見上げている。

まぁ、そうなるよな。今の俺は下半身の影響で身長が3m近くはありそうなものだから。

それでも二人とも武器から手は離さないのは偉い、その代わり俺はめっちゃビビってるけどな?!

頼むから切りかかってこないでくれよ?!こういう時はそう、慎重に…!



「…武器を下げよ。我はそなたらの死は望まぬ」





なにをいっとんじゃああぁぁぁぁぁああ???!!!!




このキャラの性格は穏やかだったはずなんだけど、なんでそんな偉そうな命令口調!?

もしかして俺の言葉が勝手におかしく変換されてる!?見てよ、殺害予告を受けたかのように二人ともビビッて顔が真っ青になっちゃってるよ!?

慎重にって言った傍からこの何とも言えない雰囲気勘弁してくれよ!!

こういう時はどうしたら、どうしたらいい……あ、そうだ!



「それより良いのか?灯がなければ人の子らは恐怖を覚えると聞くが」



こういう時は話をすり替えるに限る!

やっとこさ正気に戻ったらしいバステト族の子が武器を構えたまま、雪豹族の子を後ろに庇うように前に出てくる。

やっぱり暗器のナイフか、小さいから殺傷能力はあまりなさそうだけど俺からしたら刃物ってだけで十分怖い。頼むから、頼むから攻撃はしてくるなよぉ…。



「あ、あんた誰なんだっ」


「我が名はクローウィア。緑の加護を授かり大地とともに生きる者である」


「クローウィア…?」


「このような暗闇ではそなたらも落ち着かぬであろう?暫し待つがよい」



ここでも地味に役立つ【植物作成】で《ガイトル》という植物を複数作り出す。

カキツバタのような見た目をしているが茎の部分がとても長く、巨大な葉が折れないよう茎に巻き付き支える形状をしている。

内花被の先端に網目状の細く透明な蔦が球体となってくっついておりその中に蜜蜂の姿を持つ発火虫の巣を作らせ発光させるという街灯の役割を持つ植物だ。

発火虫とは体内に分泌されている特殊な液体を発光させ刺激を与えると発火したのちに爆発するという取扱注意な虫なのだが、個体ごとに発光する色が違うのでイルミネーションのように美しいだけでなく巣を守るために外殻に魔獣の嫌う匂いを付け近づけさせないという、それを利用した植物なのである。

今回は初めから巣が取り付けられてるのでこれで焚火の代わりになるし、魔獣対策もバッチリ。睡眠は大事、これ本当。


さて、これで落ち着いて会話も出来るだろうと二人を見ると、武器を下げて目と口をこれでもかと開けてポカーンとしている。



「どうした?楽にせよ」


「あ…あんた、本当に何者なんだ…?」


「先程名乗ったであろう」



だから怖くないんだよ~。

そのおっかない武器は閉まっても問題ないんだよ~。




なんとか二人を説得しようと頑張る俺であった。





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