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第二話 行動は慎重に



歩道橋の階段から落ちて死んだ俺がまさかの異世界転生!?


なんてネットで腐るほどありそうな展開で死んだ俺だが、マジ物の話だから笑えないよな。

森の中で目が覚めて魔獣になってんだからなおさらな話。いつまでもここにいるわけにもいかんからへその緒みたいに繋がってる蔦を引きちぎって、生まれたての小鹿みたいに足プルップルさせながら歩き出してみましたよ。

時々木にもたれたり座って休んだりしながらだから遅い遅い…でも仕方ないよな?いきなり二足歩行から四足歩行しろっていうんだもんよ。感覚わからんわ!

時間をかけつつなんとか進んでいたら、いきなり耳に爆発音が聞こえてきた。

何事かともたつきながらも急いで森を抜けるとそこは断崖絶壁。随分と見晴らしがいいようだが、さっきの爆発音は…?


景色を見渡していたら、遠くの方に爆発音と同時に火柱があがった。

おー、あんなに遠い音も聞こえるのかぁ…なんておいおい、森の中で火柱とかシャレにならんぞ?!山火事になったらどうするんだ?!

いや、確かにゲームなら森の中でも普通に火の魔法ぶっぱなすけどもさ。なんなら連射しまくったこともあったけどさっ。

こうしてる間にも火柱があっちこっちにあがって…え、どうしよう。少し様子見するか?


暫く様子見していたら火柱は納まったようだが、代わりに黒い煙が大量に…おいおいおいっ、野鳥とか動物たちが逃げてないか?

やっぱり火事に発展!?ほんとにどうすんの?!逃げるか?でも今の俺の足じゃ無理だろ。

何処の馬鹿だっ、火の魔法ぶっぱなすなら水の魔法できちんと鎮火させろよ!


どんどん広がっていく黒い煙に火が…不味い不味い、どうする、どうしたらいい?!

軽くパニックになっていたらいきなり地面から四尺が現れた。ちょっと待て、今どっから出てきた?

いや、そんなこと言ってる場合じゃない。

俺は咄嗟に四尺を掴んで装飾の輪と鈴を鳴らす。この四尺型の杖は《フラシア》といってただフィールドに雨を降らせるだけの杖なのだが、その効果範囲が広く音色の響きによって雨の強さが変わるのだ。

ここからなら距離も十分に届くだろうし、音色を最大にすると頭上から雨雲が広がっていき豪雨となって森に降り注いでいく。

やっべ、豪雨とかちょっとやりすぎたかも?でもこれで火事は納まっただろうし、やんだら様子を見に行ってみようかな。




********************





しばらくしたら《フラシア》の効果が切れたのか雨雲が消えて晴れに戻った。

まさに濡れ鼠…びしょ濡れで気持ち悪い、着替えたいが代わりの洋服なんてあったか?

仕方ないから懐に入っていた巾着の中にあった誰にでも簡単に使える風の魔石を使って全身を乾かしながら火柱が上がってた場所に向かう。

この世界には普通に魔法が存在するのに自分は使わないのかって?

勿論せっかくのファンタジー要素があるんだから使いたいけど、そもそもどうやって使うのかわからないから魔法については今後に期待ということで。


あんな魔法をぶっぱなす危険な奴がいるかもって思うが、もしこの世界の人間だったら会ってみたいしなにより接触できるチャンスかもだし…怖いけど。

だいぶ歩くのにも慣れてきたが、もうそろそろ目的地に到着してもいい頃なんだけどな…。

お、火事の痕跡部分が出てきた。そうなるともう少し先かな?


ぽっかりとあいた広場が見えてきて、まずは木陰からこっそりと覗いてみる。

そこはどう見ても火事の焼け跡といった具合で、中心から広範囲に争ったような痕跡がありなにかが黒焦げの炭になっている。

残念ながら人の姿は見当たらないので移動したんだろうが、あの中心にある山みたいな焦げ炭…やっぱり魔獣…だよな?

周りにもいくつか似たようなものが転がってるけど…それがなんなのか想像したくない。

正直、今もにおいがきつくて吐きそうなのにそれらを認識してしまったらと思うと冗談抜きで耐えられそうにない。恐る恐る近づいてみると匂いがさらにきつく、袖で口元を覆いながら山みたいなそれを確認する。


…やっぱり、ここは異世界なんだなと再確認した。前世の知識もルールも常識もなにもかもが全く異なる場所で生きていかなければならない。

今の自分は人間ではない、だから気を付けなければ自分もこのように討伐される可能性もあるのだと教えられた気分になる。


せめて彼らに安らぎをと願うと、頭の中にスキル【植物作成】が浮かんだ。

【植物作成】の一覧表から使いたい植物を選ぶとスキルが発動し焼け跡一面を花畑へと造り替えていく。

炭になってしまった彼を魔樹へと造り替えれば体内に残っていた魔力が養分となり急成長し、周りに転がっていた死骸も根が取り込んでいき幻想的な花を咲かせ始める。

この魔樹は魔物の死骸を苗床にし魔力を養分として成長する。成樹となると大気中にある魔素を取り込んで花を咲かせ、実は芳醇な香りを放つ魔力の塊となり魔獣たちの程よい餌になる。

花畑の方は《ユピア》という花で、ユリのような形をしており月の光を浴びて成長し夜になると月の光に反応してこちらもまた幻想的な光景を生み出してくれる。

花びら一つ一つだけでなく蜜にも魔力が宿るので回復素材にもなる万能な植物だ。ついあたり一面に作成してしまったが、根こそぎ奪われないといいな。

他にも火柱が上がっていた場所があるからそっちの方にも作っておいた安全かもな。


別の場所に移動し、そこも同じように【植物作成】で植物を作り出していく。

なかには魔獣ではなく巻き込まれた野生動物たちもいたので、彼らはきちんと土に還して合掌しておく。

これで全部終わったかな、と思ったらもう夕方だ。この世界で目覚めてから何も食べてないから流石にお腹がすいてきたし、夜の森は怖いから寝床も考えないと。

とりあえずは暗くなる前になんとか食料を探さすべく駆け足で移動する。もし食料が手に入らなければせめて水の確保だけでも。


急がなければ!






余談だが、俺が【植物作成】にて作った魔樹の実と花が主食になった魔獣だけでなく野生動物までもがおやつ感覚で食すようになったことで彼らの強さが格段に上昇、森のレベルが初心者から第一級危険区域になってしまい自国だけでなく他国も迂闊に入ってこれなくなってしまったのだが、この時の俺は知る由もなかった。




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